米中の対立は安全保障の文脈でも経済の文脈でも深まっているが、気候変動の文脈では必ずしも対立していない。米中の動きがどう影響してくるのか、この部分も要注目だ。
欧州委は、脱炭素につながる「グリーン」な経済活動を定めたルール「EUタクソノミー(分類)」を設けている。この決定により、企業が債券の発行などを通じて資金調達する際に、投資家を引きつけたり、好条件を得られたりしやすくなる。こうした欧州の脱炭素方針の発表が今年も続くとみられるため、この辺りも見ていきたい。ただ、これはいつどのように起きるか、というところは予見できない。一方で、2022年は世界情勢の観点からカレンダーを見てみると、脱炭素が進みそうなポイントがいくつかある。
通常、気候変動の話題が盛り上がるのは年の後半だ。昨年はCOP26に合わせてサウジアラビア、オーストラリアなど化石燃料に関係する国々やインドなどが将来のカーボンニュートラル(CN)を宣言。これによって、期限付きCNを表明する国地域は154、世界GDPの約90%を占める格好となり、ここに脱炭素の世界的な流れが不可逆的に決定する。
今年もCOPとG20が下半期に予定されているが、昨年が気候変動・脱炭素に執心の欧州が舞台だったこれらの会議は、今年は途上国が役を担う。G20はインドネシア(10月)、COPはエジプト(11月)となっている。こうしたことから、現在生じている気候変動の緩和(排出削減)への対応だけではなく、気候変動への適応に対する資金供与といった面がいつもより重点が置かれるだろう。
そういった中で、注目のスケジュールはG7。G7は今年6月に予定されているが、議長国はドイツ。元々、脱炭素にめちゃくちゃ熱心なドイツであるが、メルケル政権からショルツ政権に変わり、脱炭素方針の強化に拍車がかかっている。
筆者もG20でドイツが議長国を務めたときに、外交官として調整に参画したが、ドイツは脱炭素において極めて高い球を投げてくる。そこは欧州各国も理解しているだろうから、歩調を合わせるであろう。アメリカも2022年上半期の脱炭素化の山場はG7に合わせて持ってくるとみている。ここが一つ注目のポイントになる。
それでは、最後に、日本国内における注目点を解説したい。
岸田政権の「新しい資本主義」における脱炭素の注目点は?・・・次ページ
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