米国ニューヨーク州は、2050年の温室効果ガス削減目標を1990年比で85%削減、経済全体でカーボンニュートラルにするとしている。そのため、再エネ開発や省エネ、交通の脱炭素化に多額の投資を計画している。
そうした中、2021年7月9日、集合住宅の所有者ないしは管理者向けの支援として780万ドルの補助金を支援することを発表した。資金の規模こそ小さいが、プログラムには建物の改修のポイントとなる部分が示されており、カーボンゼロを目指す日本の自治体にも参考となりそうだ。
2021年7月9日、米国ニューヨーク州のAndrew M. Cuomo知事は、脱炭素政策の一環として、集合住宅の脱炭素プログラムを通じて、780万ドル(約8億6,000万円)の支援を行うことを発表した。このプログラムは、ニューヨーク州エネルギー研究開発局(NYSERDA)を通じて利用できるという。ニューヨーク州にはプログラムの対象となるおよそ170万棟の集合住宅があるという。
支援は、「建物の外壁の断熱化」「換気システムの改善」「ヒートポンプシステムによる冷暖房の電化」「ヒートポンプによる給湯の電化」の4つの低炭素対策のうちの1つ以上を実施することが対象となる。補助金は1世帯あたりで、700ドルから5,000ドルの間。
支援にあたっては、NYSERDAが、エネルギーの節約コスト、実装のしやすさ、効率やメンテナンスの必要性などに基づいて、住宅の改修プロジェクトを評価する。また、収集されたデータは公表される予定。
建物はニューヨーク州において最大の温室効果ガス排出源の1つとなっている。そのため、建物のエネルギー効率改善と電化の促進は、脱炭素の重要な手段となっている。NYSERDAは州全体の建物の脱炭素化に向けて、68億ドル以上の投資を進めている。
その中には、今回のような建物のエネルギー効率改善をはじめ、蓄電システムの設置や再生可能エネルギーの導入、電気自動車用充電設備の設置などが含まれており、これによって2025年までに180万世帯の使用電力量に相当するエネルギーを節約するとしている。
また、ニューヨーク州全体でも、コロナの感染拡大から雇用を回復させるにしたがって、グリーン経済を促進することを推進している。2030年までには再生可能エネルギーを70%まで拡大し、2040年までには電力をゼロエミッション化する。
また、再生可能エネルギープロジェクトに210億ドル以上の投資をはじめ、グリーンな輸送などにも多額の投資を進めており、2035年には900万kWの洋上風力発電を開発することにもコミットしている。さらに、エネルギー投資から得られる利益の40%を貧困など困難な状況にある地域の支援に使用するという。
日本では建物の省エネ化はなかなか進んでいない。特に賃貸住宅をはじめとする集合住宅については、所有者や管理者に対する脱炭素化のインセンティブが与えられていないのが現状だ。また、自治体として見たとき、多くの自治体がカーボンニュートラル宣言をしていても、具体的な方策はなかなか見つからないのが現状だろう。
こうした状況にあっては、ニューヨーク州の取組みは参考になるのではないだろうか。
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