米調査会社ロジウム・グループは1月10日、米国の2021年の温暖化ガス排出量が前年比6.2%増えたとの試算を発表した。2020年の新型コロナウイルス下で排出量は10%減ったものの、2021年には一転して増加し、2030年の温室効果ガス削減の目標達成からさらに遠ざかることとなった(図1)。
これは石炭火力発電の急増と、輸送(主に貨物)の急回復が主因であるという。
図1:米国の温暖化ガス排出量の推移と削減目標への道筋
出所:Rhodium Group
ロジウム・グループの発表によると、2021年の運輸部門と電力部門の温暖化ガス排出量がそれぞれ2020年比10%と6.6%と最も急上昇した。産業部門は、2020年比3.6%増加。建物からの排出量が最も少なく、2020年比1.9%増となった(図2)。
図2:米国の温暖化ガス排出量(部門別)
出所:Rhodium Group
米国の温暖化ガス排出量の31%を占める運輸部門が最も増加した要因は、大型の財政出動やワクチンの普及で個人消費が拡大し、トラックによる貨物輸送が活発になったことが背景にあるという。
また、2021年の電力需要全体の伸びは緩やかであるものの(2020年比3%増)、電力部門の排出量が堅調に伸びたのは、2021年に石炭火力発電が17%急増したためである。これは、電力需要の回復に加え、天然ガスの価格が高騰したためとみられる。米国エネルギー情報局によると、石炭火力の年間発電量は2014年以来7年ぶりの増加となった(図3:青色の折れ線グラフ)。
図3:エネルギー発電量の推移
出所:Rhodium Group
バイデン政権は2021年4月、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に基づき、2030年の温暖化ガスの実質的な排出量を2005年に比べて50~52%減らす目標を決めた。
再生可能エネルギーは拡大傾向にあり、米国の発電量全体の20%に初めて到達した。だが、主力の電源になるためには大幅な追加投資が必要だ。目標達成のためには政府の迅速な対応が急務となっている。
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