企業M&A戦略などを支援するPwCアドバイザリーとレコフデータは4月28日、再生可能エネルギー電源ごとのM&A動向などを調査し、2020年のM&Aトップは太陽光発電所の44件だったと発表した。気候変動対策を対象とした買い手別件数では三井物産の14件がトップだった。
今回、発表した調査レポートは「サステナビリティ経営へのシフトとM&Aの関係」である。
豊富なM&Aデータを持つレコフのデータベースに収録されている2015年12月1日から2020年11月30日までの5年間にかけて公表された、日本企業(外国企業の日本法人を含む)が当事者であるM&A案件約1.8万件を対象とし、PwCアドバイザリーが分析したもの。
日本でも脱炭素社会の実現が本格化する中、社会・環境課題への対応強化に向けて、再生可能エネルギー電源のM&Aなどが増加しているという。
2012年に再エネで発電した電気を固定価格で買い取るFIT制度が導入されて以降、再エネはM&Aにおいても活発なテーマのひとつになっている。
PwCアドバイザリーとレコフデータは、過去5年間のM&Aについて調査した。
新型コロナウイルスで大きな経済減速を強いられた2020年であっても、再エネディールは拡大しており、特に太陽光発電所のM&Aは44件にのぼり、風力・バイオマスを上回る結果となった。
その要因について、太陽光発電プロジェクトは他の再エネに比べ、比較的開発が容易であり、プロジェクト数が飛び抜けて多い点をあげる。
過去5年間の再生可能エネルギー各電源のM&A案件件数の動き
またレポートでは触れられていないが、コロナ禍であっても、FIT制度のもと、一度決まった固定価格は引き下げられず、毎月、安定した売電収入が手に入るという、実体経済の減速影響を受けない発電事業の魅力が、M&Aの増加につながったと見られる。
風力分野については、国内M&Aは18件となったが、現状では欧州での洋上風力市場の拡大を受け、日本企業による海外風力発電への資本参加が多い。ただし、今後は日本はじめ、中国・台湾・韓国を中心とするアジア市場における洋上風力の急成長が予想されている。
レポートでは、日本企業による、開発・建設・O&M(オペレーション&メンテナンス)で先行する欧州企業の知見や経験、技術の取り込みを目論んだM&A、そして欧州企業による日本、アジア市場への投資や参入の動きが増加すると予測している。
気候変動対策を対象とした買い手別M&A件数では、三井物産の14件がトップとなり、ついで住友商事の10件、伊藤忠商事の9件が続いた。
総合商社や金融機関、エネルギーセクターがランキング上位に名を連ねるが、PwCアドバイザリーとレコフデータは「パナソニック、三菱重工業、前田建設工業」の3社に注目する。
買い手別M&A件数 気候変動対策
パナソニックは住宅・空調領域での省エネ需要対応や自動車の電化対応に関連して複数のM&Aや資本参加を実施している。
三菱重工業は、2020年10月にノルウェーの水電解装置会社であるハイドロジェンプロに出資。さらに11月にはグリーン水素・アンモニア事業開発を行うオーストラリアのH2Uインベストメンツに出資するなど、脱炭素やグリーン水素に関連する資本参加に積極的だ。
前田建設工業に関しては、蓄電池を活用した発電システムに資本参加するなど、注目を集めているという。
レポートでは、「世界的に脱炭素の実現が要求される中、企業は長期的な価値を創造し、持続的な成長を遂げるその実現手段として、今後もM&Aを活用していくだろう」と分析したうえで、「M&Aを通じた価値創造のあり方とは何か。経済価値のみならず社会的な価値創造にも資するM&Aとなるのか、といった問いが日本企業に問われてくる」と指摘している。
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