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エシカルファッションとは

ファッションは大きく発展した産業のひとつで、世界のアパレル市場は2015年時点で1兆3,060億米ドルの市場規模を持ちますが、サプライチェーン上では労働慣行や安全性、環境などにまつわる多くの問題を抱えています。
不条理に向き合い、ファッションを通じてそれらの課題を解決しようとする「エシカルファッション」。ここではどのようなものがエシカルファッションなのか、エシカルファッションが注目されるようになった背景などを紹介します。

エシカルファッションとは

エシカルファッション(Ethical Fashion)とは、直訳すると「倫理的・道徳的なファッション」という意味で、人や地球環境に配慮したプロセスで作られた衣類・小物を選ぶことや、それらのアイテムでコーディネートし自己表現することを指します。エシカルファッションを掲げるブランドは、ファッション業界が抱える労働問題や環境問題などを解決しより良い方向に導くために、素材の選定から、生産工場での労働慣行、流通、販売、リサイクルに至るまで、倫理的な基準のもとに活動を行います。

エシカルファッションの具体的な取り組みについては、日本のエシカルファッション推進団体「ETHICAL FASHION JAPAN」が以下の9つに分類しています。

  • フェアトレード:対等なパートナーシップに基づいた取引で、不当な労動と搾取をなくす。①認証を受けたフェアトレード、②十分な生活賃金や適切で働きやすい労働環境を確保する などが含まれる。
  • オーがニック:有機栽培で生産された素材のこと。原則、製造全工程を通じて認証機関や国家が設けた厳格な基準と実地検査をクリアしたものを指す。
  • アップサイクル&リクレイム:捨てられるはずだったものを活用する。「Upcycle」とは質の向上を伴う再生利用のこと。「Reclaim」は、デッドストックの素材や在庫商品などを回収して利用すること。
  • サステナブル・マテリアル:環境負荷がより低い素材を活用すること。生地では特に、①天然素材、②エコな化学繊維、③リサイクル繊維、④エコ加工を取り入れることを指す。
  • クラフトマンシップ:国内のものも海外のものも、伝統的な技術を取り入れ、文化を含めて未来へ伝える取り組みのこと。①伝統的な技術を取り入れる、②ヴィンテージ品の活用、③熟練の職人による製作を指す。
  • ローカル・メイド:「MADE IN ◯◯」のこと。地域に根ざしたものづくりで地域産業/産地を活性化させ、雇用の創出、技術の伝承と向上を目指す
  • アニマル・フレンドリー:ヴィーガン、またはなんらかのかたちで「Animal Rights(動物の権利)」「Animal Welfare(動物の福祉)」に配慮した製造を指す。
  • ウェイストレス:ライフサイクル各段階の無駄を削減する。①カーボンフットプリントの削減、②3Dプリンティング技術、③ゼロ・ウェイスト・デザイン、④着用時のCO2を削減する取り組みなど。
  • ソーシャル・プロジェクト:①NPO/NGOへの寄付(物資・金銭)、②ビジネスモデルを生かしての支援・雇用創出 など、自社のリソースを生かした取り組みのこと。

エシカルファッションが注目されるようになった背景

エシカルファッションが広まるようになった背景には、ファッション業界の「エシカルではない事実」の発覚がありました。最新トレンドを早いサイクルで展開し、大量生産かつ低コストで商品を流通させるファストファッションは、手頃な価格でファッションを楽しめることから世界中に広まりましたが、その裏側には東南アジアなどの発展途上国に生産工場を置き、低賃金で過酷な労働の上に成り立つ不均衡が存在しています。

その不均衡を象徴する出来事が「ラナ・プラザ崩壊事故」です。2013年4月に発生したこの事故は、バングラディッシュの首都ダッカ近郊で縫製工場が入居していた9階建てビルが崩壊し、労働者1,138名が犠牲となったもの。ラナ・プラザには欧米アパレルブランドのMangoやBenetton、Primarkなど5つの衣料品メーカーの工場が入っており、事故当時は女性を中心に3,000人以上が働いていました。ビル崩壊はずさんな安全管理が原因とされ、建築基準を無視した増築が発覚。この惨劇がきっかけで、ファッション生産現場における低賃金かつ過酷な労働環境の実態が世界中に広まり、倫理的なプロセスで作られたファッションを求める世の中の声が大きくなりました。その結果ブランド側も倫理的な対応が不可欠な時代を迎えました。

古くは1990年代、世界的スポーツブランドのナイキ社が、スニーカーを生産するインドネシアやベトナムなど発展途上国の工場で、学校に通えない児童を働かせたり、劣悪な環境で長時間労働させたりしていたことが欧米のジャーナリストにより告発、主要メディアに取り上げられました。米国ではこのメーカーの商品を購入しないという大規模な不買運動が巻き起こりました。
また近年では2018年に英国の高級ブランド・バーバリーが、自社の売れ残り商品が安く流通してブランド価値が低下することを恐れ、42億円相当の余剰在庫品を焼却処分していたことが発覚。環境保護団体などから「値段の高さに反して、自社商品とそこにかけられた労働力や天然資源に一切の敬意を払っていない」と指摘され、ニュースになりました。

エシカルファッションブランド

地球環境や人に配慮されたプロセスで作られた衣服を身に纏いたいと考える人が増えるとともに、エシカルファッションの精神を掲げるブランドも少しずつ増えてきています。実際にエシカルファッションを実践しているブランドには、どのようなものがあるのでしょうか。それぞれのブランドの特徴や取扱いアイテムとともに、海外・日本のブランドをいくつか紹介します。

Stella McCartney

ブランド名:Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)
取扱いアイテム:レディース、メンズ、キッズ、アクセサリー、ランジェリー、アイウェア、フレグランス
設立場所:イギリス
特徴:ポール・マッカートニーの娘、ステラ・マッカートニーによるファッションブランド。Chloe(クロエ)のクリエイティブディレクターを務めたあと、自身のファッションブランドを立ち上げ、2001年に最初のコレクションをパリで発表。皮革・毛皮を一切使わなくともラグジュアリーになれるというポリシーで、「ファー・フリー・ファッション」を貫いています。毛皮の代替素材となるアクリル、ポリエステル、ウール、モヘアなどは自然に還らない非生分解性であることから、顧客に対しても商品の取扱いへの配慮を求め、衣服に対して責任を持ってもらうようお願いし、「ラグジュアリーとは廃棄することではなく永遠を意味する」姿勢を取り続けています。さらにシルクも蚕が生き物であることを考慮し、「ピース・シルク」という蚕に害を及ぼさない方法で作られた素材を組み合わせたり、バイオテクノロジー企業と提携し環境に優しい新たなシルク素材の商品を生み出したりなど、ラグジュアリーファッション界のエシカルを牽引しています。20012年のロンドン五輪で英国代表選手の全競技用ウェアをデザインしたことでも話題になりました。

People Tree

ブランド名:People Tree(ピープルツリー)
取扱いアイテム:衣料品、雑貨、アクセサリー、食品
設立場所:日本
特徴:ピープルツリーは創業時からフェアトレード界の先頭に立ち、エシカルファッションの未来を切り開いているブランド。約30年にわたりエシカルなファッションアイテムを世に送り続けています。ブランドロゴが付いている商品は100%フェアトレード製品。作り手による手仕事を大切にするとともに、生産される地域の伝統手法や素材を尊重し、大量生産では味わうことのできない深みのある製品が特長です。経済的・社会的に不利な立場の人たちが能力を活かした仕事に就く機会を作り、収入源と安定した生活の基盤をもたらし自立に導いています。使用する素材は生産地で豊富に採れる自然素材を使用して、環境への影響を低減。また民族衣装をアップサイクルするなどして、資源の有効活用にも取り組んでいます。コットン製品のほとんどがオーガニックコットン含有率100%で、ストレッチ素材や強度を要する縫製糸を使用する場合でも含有率は95%以上です。

ECOALF

ブランド名:ECOALF(エコアルフ)
取扱いアイテム:レディース、メンズ、シューズ、バッグ、スイムウェア
設立場所:スペイン
特徴:エコアルフで販売されているアイテムはすべてリサイクル素材や環境負荷の低い素材・副資材だけで作られています。2009年にスペインで生まれたサステナブルなファッションブランドで、日本では2020年春に三陽商会が展開をスタートしたばかりです。他のファッションブランドが地球の限られた天然資源を大量に使い続ける中、エコアルフはペットボトル、漁網、タイヤなどの廃棄物を独自技術でリサイクルして生地を開発。素材づくりの発想の真新しさだけにフォーカルするのでなく、スタイリッシュで機能的なコレクションを生み出しています。エコアルフ自らが海のゴミを収集して衣服を作る、つまりは 「地球環境を守るために服を売る」という、今までにないポリシーを持ったブランドです。

YANGAN ジャケット / YANGAN TERMOSEALED JACKET

エシカルファッションが抱える課題

今後さらにエシカルファッションが世の中に普及・浸透していくためにはいくつかの課題があります。

消費者庁が15~65歳までの2,500人を対象に実施した意識調査によると、「エシカル」という言葉の認知度は4.4%で、エコ(50.9%)やロハス(32.5%)と比べていまだ低いことが分かりました。多くの人がエシカルの意味や必要性を理解できるように、丁寧に説明、発信していくことが重要だと考えられます。

エシカルな製品を生み出すためには、生産者が自立した生活を営めるだけの賃金を支払うことや、環境に考慮した活動、安全性を担保できるだけの設備投資などが必須であるため、一般的に流通している商品よりも費用がかかるケースが多く、商品の価格へも反映されます。
同調査でエシカルな商品・サービスの購入意志があると答えた層に対して、エシカルな衣料品が通常商品よりどの程度なら割高でも購入するか質問したところ、4割弱の人が一般的に流通している商品と同額なら購入すると回答。割高でも購入する人は6割以上で、「5%まで」は3割強、「10%まで」と答えた人は2割弱という結果が出ています。

一方、エシカルな衣料品を購入しない理由として最も多いのは「理由は特にない」で3割以上、 それに続いて「価格が高い」、「本当にエシカルなのかどうか分からない」が3割程となっています。

「本当にエシカルかどうか分からない」、「どれがエシカルな商品か分からない」という理由が挙がる要因の事例として、エシカルという響きの良い言葉が販売促進目的で使用されているケースや、素材のごく一部だけにオーガニック素材を使用し大部分はそうでないといったケースなどがあります。「エシカル」の定義が曖昧である現状をカバーするために消費者の立場からできることは、製品の認証ラベルマークやブランドの公式サイトをチェックして、「本当に正当な賃金を支払っているのか」や「環境に配慮した製造プロセスになっているか」などを見極めることです。

ブランド側にできることは、自社製品やその原材料の信頼性を担保する第三者機関の認証を取得することや、企業サイトやパンフレットなどで製造プロセスや把握している環境負荷と対策などを公表し透明性を示すことなどが挙げられます。フェアトレードやオーガニックコットンであることを判断する基準となるラベルには以下のようなものがあります。

今後の展望

今後はより消費者がエシカルな商品を選びやすい環境が整うことが予想されます。消費者庁の「倫理的消費」調査研究会では、どのように消費者に分かりやすく情報を伝えてくべきか議論されました。その中でウェブサイトや商品表示を通じた情報開示に加えて、認証制度の活用、先進な取り組みの表彰、販売員の技能向上のための検定創設など様々なアイディアが出されています。

各国にブランドを展開するZARAの運営元INDITEX社は、2025年までに自社ブランドで使用する綿・麻・ポリエステルの素材すべてを、今よりも持続可能な材料、オーガニックの材料、リサイクル材料のいずれか置き換えることをコミットメントしました。さらに本社、物流拠点、店舗などすべての施設で使用するエネルギーの80%を再生可能エネルギーでまかなうことも宣言しています。

大手ファッションブランドが倫理的であろうとする企業姿勢を発表する一方で、生産工場が置かれている発展途上国ではいまだ多くの問題と向き合っています。ラナ・プラザ崩壊事故が起きたバングラディッシュでは、労働法が数年前に改正され、労働者や労働組合の権利が確保されることになったものの、現実には政府の力が現場まで及ばず、法制度の実用化が進んでいないと言われています。また不利な条件で働く人の多くは権利についての認識が浅かったり、十分な教育を受けておらず突然の解雇などに自ら対抗できなかったりと、根深い問題を抱えています。海外にサプライチェーンを持つアパレル企業は、現地政府やNPO・NGO団体など関与しながら問題を解決し続ける必要があります。

おわりに

自分が着ている服がだれの手によって作られたのか、どのような場所で生まれたのか、まずは興味を持つことがエシカルファッションへ踏み出す第一歩です。今まで服を買うときに重視されていたのは価格やデザイン、手に入りやすいかどうかでしたが、これからはブランドが大切にしているポリシーや、製品が生まれるまでのストーリーに共感できるかどうかという視点でおしゃれをすることが、今後のファッショントレンドになるかもしれません。
身に纏う衣服を選ぶときにエシカルファッションを視野に入れること、ブランドが描く未来を応援する気持ちで服を購入し、大切に着続けることは、持続可能な社会の実現に向けた有効な手段です。