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カーボン・オフセットとは?

削減が困難な温室効果ガスを、森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)などの削減活動により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせるようとするカーボン・オフセットをご存知でしょうか?昨今、環境意識の高まりから、多くの組織がカーボン・オフセットに力をいれています。
日本国内で行われている取り組み事例、今後どのような課題を解消しなければならないのかご説明します。

カーボン・オフセットとは?

カーボン・オフセットとは、人間の経済活動や生活などを通して排出された二酸化炭素などの温室効果ガスの量を把握し、削減に努めるとともに、削減が困難な部分について森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)などの削減活動により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせるようとする考え方や活動の総称です。環境省ではカーボン・オフセットを以下のように定義しています。

市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(以下「クレジット」という。)を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせること、すなわち『知って、減らして、オフセット』の取組をいう。

*環境省「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)

カーボン・オフセットが推進されている背景には、以前から問題視されている異常気象や生態系の破壊、海面上昇や砂漠化などを回避する目的があります。利便性の向上とともに失いつつある「地球の健全性」を保つため、カーボン・オフセットに力を入れる組織が増えているのです。

オフセットしなければならない温室効果ガス

2019年に環境省が公開した「2018 年度(平成 30 年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について」によると、2018年度における温室効果ガスの排出量は12億4,400万トンでした。これは前年度に比べて3.6%減少してはいるものの、下記グラフを見ればやや横ばい状態にあることが分かります。

温室効果ガス排出量

*環境省「2018 年度(平成 30 年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について

排出される温室効果ガス12億4,400万トンのうち、主に私たちの活動から発生する二酸化炭素は約11億トンです。内訳の80%は企業や公共部門から排出される二酸化炭素となっており、20%が家計関連から排出される二酸化炭素となっています。
家庭から排出される二酸化炭素は冷暖房や家電によるものが多く、企業や公共部門から排出される二酸化炭素は4割弱が産業(製造業・建設業・農林水産業など)によるものとなっており、特にこれらの領域における排出量削減が急務です。
日本全体としては、2030年度に2013年度比で温室効果ガス排出量の26%削減を目指しており、「地球温暖化対策計画」にもとづいて以下の対策を推し進めています。

  • 温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの導入拡大
  • 事業所・住宅に対する、省エネルギー性能の高い設備の導入促進
  • 運輸部門における輸送の効率化、公共交通機関の利用促進
  • 温室効果ガスの吸収源確保のための、森林の保全管理・都市緑化の推進

なお、私たち個人が始められる取り組みとしては、次章から解決するカーボン・オフセット参画のほか、以下のような日常生活で利用している電気・ガスの利用量抑制も該当します。

  • 照明やテレビは必要なときのみ電源を付ける
  • 照明を電気効率の良いLEDに交換する
  • 自宅に太陽光発電設備を取り付け、自家発電を行う
  • 冷蔵庫・冷凍庫に食材を詰め込み過ぎない

温室効果ガス排出量の削減に努めなかった場合の未来、私たちにできる取り組みについては、以下記事で詳しくご説明しています。あわせてご参照ください。

日本における取り組み事例

すでに、日本でも多くの組織がカーボン・オフセットに注力しており、広告や商品購入を通じて見知っている有名企業も積極的に排出量削減に参加しています。ここでは、カーボン・オフセットのカテゴリーと、企業や行政がどのような取り組みを行っているのか事例をご紹介します。

自己活動オフセット

自己活動オフセットは、自らの活動にともない排出される温室効果ガスの排出量をオフセットする取り組みです。

たとえば、ヤフー株式会社は「保護(まもる)くん」と名付けられたリサイクルボックスを設置し、使用済み文書を回収することで森林伐採の抑制に貢献しています。このリサイクル活動単体でも、年間430本に相当する森林資源を保護する効果があるようです。

リサイクルボックスまもるくん

* Yahoo! JAPAN「使用済みの文書をカーボンオフセット

自社の活動にともない使用した紙資源をリサイクルし、温室効果ガスの排出量削減に寄与している自己活動オフセットの好例といえるでしょう。

会議・イベント開催オフセット

会議・イベント開催オフセットは、会議やイベント(コンサートやスポーツ大会など)の開催にともない排出される温室効果ガスの排出量をオフセットする取り組みです。

2019年、経済産業省が主催した「TCFDサミット」では、参加者の移動や会場の利用といったサミットの開催にともなう温室効果ガスの排出を、J-クレジットの購入によりオフセットしています。これにより、当該サミットは二酸化炭素ゼロのイベントとなりました。同年、岡山県で開催された「G20岡山保健大臣会合及び関連イベント」も、関係者の移動交通や会場使用にかかる温室効果ガスの排出を相殺するため、岡山市のJ-クレジットを購入しています。なお、購入された岡山市のJ-クレジット分の資金は、廃食用油由来のバイオディーゼル燃料をもちいた二酸化炭素削減のための事業にもちいられています。

会議やイベント開催にともなう温室効果ガスの排出削減は、一見すると難しいように思えますが、クレジットを購入することで参加者のエコ意識を高めつつクリーンな事業へ積極的に関与できます。

寄付型オフセット

寄付型オフセットは、消費者が製品やサービスを購入することで、商品やサービスの提供者が購入数に応じた分のクレジットを購入するなど、消費者と提供者がコミュニケーションを取りつつカーボン・オフセットに参加する取り組みです。

株式会社八葉水産は、特定の商品が購入された場合、1商品つき1円を森林支援に役立てることを公表。寄付型オフセットの形式により、消費者のカーボン・オフセット参画を促進する体制を構築しました。同プログラムの商品は、二酸化炭素削減に貢献する商品だとPRすることも可能となり、環境問題に向き合うとともに自社商品の付加価値アップに効果を発揮しています。

商品使用・サービス利用オフセット

商品使用・サービス利用オフセットは、商品の生産・使用やサービスを提供・利用するときなど、一連の取引や消費の際に排出される温室効果ガスの排出量をオフセットする取り組みです。

国内の二大航空会社であるANAグループとJALグループは、いずれも商品使用・サービス利用オフセットに力を入れており、搭乗者に選択肢の1つとしてカーボン・オフセットのプログラムを用意しています。以下画像は、ANAグループが公開するカーボン・オフセットプログラムの仕組みです。

ANA カーボンオフセットプログラム

*ANAホールディングス株式会社「運航における取り組み

ANAグループの取り組みでは日本(山梨県)・カンボジア・中国のクリーンなプロジェクトが、JALグループの取り組みでは日本(熊本県)・インドネシアのクリーンなプロジェクトが選択肢に組み入れられ、それぞれどのような取り組みに貢献したいのか考慮したうえでカーボン・オフセットに参画することが可能です。

自己活動オフセット支援

自己活動オフセット支援は、商品やサービスを購入・利用する消費者における、日常生活の排出量オフセットを支援する取り組みです。つまり、消費者がカーボン・オフセットの主体となれるよう、消費者の特定の行動に応じて企業がオフセットをサポートするものです。

昨今、飲料メーカーが販売している「100%リサイクルペットボトル」の飲料も、石油から新しく製造されるプラスチック使用量を減少させられるため、自己活動オフセット支援の一種だといえるでしょう。たとえば、日本コカ・コーラ株式会社はリサイクルペットボトルを利用することで、1本につき通常のペットボトルに比べ49%の二酸化炭素削減を実現しています。

環境にやさしいボトル

*い・ろ・は・す(I LOHAS) 公式サイト「環境にやさしいボトル

また、自治体が広報誌やホームページを通じてカーボン・オフセットの重要性を啓蒙し、排出削減へ関心が強まるよう促す取り組みも自己活動オフセット支援に該当します。

今後の課題

温室効果ガス排出量を削減するカーボン・オフセットは、大変意義のある取り組みです。しかし、企業が積極的にカーボン・オフセットへ取り組む姿勢を見て、一部では難色を示す意見も挙がっています。
なぜなら、カーボン・オフセットのために購入されたクレジットそのものは、別の地域で展開されるクリーンなプロジェクトにもちいられるものの、クレジットを購入した企業自身が既存の事業をクリーンに改善することは求められないからです。
つまり、企業がカーボン・オフセットを通じて表面的にはエコ活動へ参画する一方、その構造に甘んじて既存事業の排出量削減を怠ることが懸念されているのです。そのため、企業の取り組みはマーケティング効果を狙ったもので、根本的な問題解決にはつながっていないとの声も挙がっています。
カーボン・オフセットを行うまでの自社における削減努力の向上、単なるマーケティング施策としての一手法に終わらないような工夫が、今後のカーボン・オフセットには求められるでしょう。

おわりに

カーボン・オフセットは、基本的に「世界の温室効果ガスの総量を減らす」という素晴らしい取り組みです。しかし、カーボン・オフセットを通じて手軽に排出量削減に貢献できるからといって、個人や組織が自身の活動から出る温室効果ガスの削減に目を向けなければ本末転倒です。
まずは、身の回りのあらゆる温室効果ガス排出につながる行動を見直し、可能な限りの排出量削減に努めたのちカーボン・オフセットに注力することを推奨します。