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バーチャルウォーターとは?日本の水自給率

目に見えない水「バーチャルウォーター」をご存知ですか?「バーチャルウォーター」とは国と国とのあいだで取引されている目に見えない存在の水のこと。バーチャルウォーターの意味や主要な国のバーチャルウォーター輸入量、日本の食料自給率、食品別のバーチャルウォーター量の計算方法などを解説します。

バーチャルウォーターとは

バーチャルウォーター(virtual water)とは、農産物などを輸入する国が、自国でその輸入品を生産すると想定した場合にどの程度の水が必要になるのか推定し算出される水の量のことです。日本語では「仮想水」と呼ばれることもあります。このバーチャルウォーターの概念は1993年にロンドン大学のジョン・アンソニー・アラン教授によって提唱され、2009年には革新的な概念としてストックホルム・ウォーター賞を受賞しました。

元々バーチャルウォーターの概念は、中近東地域の水資源量が少ない国々でなぜ水をめぐるトラブルが深刻化しないのかという問いに対する理由を説明するために利用されていました。それらの国々では大量の食料輸入を通じて、自国で食料生産した場合に必要となる水資源を節約できているため、バーチャルウォーターを輸入しているようなものだと論じられました。 

水を使う場面というと料理や掃除洗濯、入浴などの生活用水を使うシーンがイメージされやすいですが、そのような用途は全体の水使用量のごく一部。世界の年間水使用量の約7割は農業用水として使用されています。つまり、他国に農業を頼って食料を輸入することは、自国の水資源を節約する手段になり得るのです。

水の使用について語られる場面でバーチャルウォーターとともによく登場する用語に「ウォーターフットプリント」があります。バーチャルウォーターが間接的に輸出入される水の量に焦点を当てているのに対して、ウォーターフットプリントはある生産物の原材料生産、製造・加工、輸送・流通、消費、廃棄・リサイクルまでライフサイクル全体で必要な水の量と、水使用による環境への影響を算出し評価することを目的とするものです。

まずは日本の水自給率を知ろう

国際社会で取引される「目に見えない水」 

先述のとおり、世界の水使用量の7割を占める農業では、耕作や飼育などのプロセスで大量の水を必要とします。先進国は生活に必要な食料の多くを輸入しているため、目に見えないバーチャルウォーターも大量に輸入していることになります。生産国側は食料品や製造品の輸出によって経済的な利益を得られる一方で、生産活動に要する水をその地域の水資源から賄うことになります。世界の水使用量のうち、22%が輸出品の生産に充てられていると推定され、グローバルな取引はバーチャルウォーターで支えられていると言えます。

G7諸国が国内で賄う水の割合、輸入の割合

世界の主要な国はどのくらいバーチャルウォーターを輸入しているのでしょうか。下の表を見ると、G7諸国のうち特に日本とイギリスは水を国内で賄うよりも輸入の割合が高い、つまりバーチャルウォーターに支えられていることがわかります。次いでドイツ、イタリアと続き、農業国と言われているフランスでも国内と輸入の割合が半々程度です。一方、アメリカやカナダは国内で賄われている水の割合が高くなっています。

*世界水の日報告書2019

バーチャルウォーターを輸入している国

もう一つ表を見てみましょう。こちらの表はバーチャルウォーター最大輸入国の順位を示しています。アメリカは先ほどの表を見た限りでは自国で賄われている水の割合が高いものの、人口が多いため輸入されているバーチャルウォーターの量は多くなっています。

*世界水の日報告書2019

世界的に見ると、現在は100年前と比べ6倍もの水が使用され、毎年1%ずつ増え続けています。人口増加と食生活の変化により、2025年までに農業の水需要が約60%増加するという予測もあります。バーチャルウォーターの取引は、水資源に恵まれた国々と、そうではない国々のあいだで、リソースバランスが取れている状態が理想的です。しかし実際には水ストレスを抱えているアメリカ、パキスタン、インド、オーストラリア、ウズベキスタン、中国、トルコだけで、世界のバーチャルウォーター輸出量の約半分となる49%を占めています。

日本が直面する問題

平成30年度(2018年度)の日本の食料自給率はカロリーベースで37%、生産額ベースで66%となっています。食生活の変化によって食料自給率が高い米の消費が減少している一方で、原料や飼料を海外に依存する畜産物や油脂類の消費は増えていることが、長期的な低下傾向の要因の一つです。

*農林水産省 日本の食料自給率

諸外国の食料自給率と比較しても、日本の食料自給率が低いことがわかります。

*農林水産省 世界の食料自給率

食料自給率が低下は、年々海外から輸入する食料の割合が増えていることを示します。つまり、その分だけバーチャルウォーターの輸入も増えていると言えます。もし日本が水不足に陥りやすい国に食料生産を頼り続けた場合、間接的にその国の水問題を深刻化させてしまう可能性があります。

また世界的な課題となっている気候変動は、地球上のあらゆる場所での活動に影響を及ぼします。もしどこかの地域で干ばつや洪水などが発生し農業に被害が生じた場合、ある日突然、日本の輸入食料が大幅に減ってしまったり、価格が高騰してしまったりという恐れもあるのです。そのような事態に備え国内で食料を確保できるよう、日本は令和12年度までに、カロリーベース総合食料自給率を45%、生産額ベース総合食料自給率を75%に高めることを目標としています。

食品別のバーチャルウォーター量

具体的に食品別のバーチャルウォーター量がどれくらいなのか見てみましょう。
牛肉、豚肉などの畜産製品は、動物を飼育する期間に水を要するだけでなく、動物に与える餌となる穀物の育成にも大量の水を使用します。例えば牛肉1㎏あたりでは20,600リットル、豚肉1㎏あたりで5,900リットルものバーチャルウォーターを輸入していることになります。
主食のうち、ご飯1杯あたりのバーチャルウォーター量は555リットル、パン1枚は96リットル、スパゲッティ1食分では200リットルです。
野菜の中では大豆(1カップあたり375リットル)、かぼちゃ(1個あたり371リットル)、はくさい(1株あたり119リットル)などがバーチャルウォーター量の多い食品です。
瑞々しくて美味しいくだものはバーチャルウォーター量が多いものが目立ち、パインアップル(1個当たり752リットル)、すいか(1個当たり501リットル)、メロン(1個当たり417リットル)などです。
菓子や揚げ物などに姿を変え食卓を豊かにしてくれる小麦粉は、1カップあたり210リットル。健康に良いとされるオリーブオイルは大さじ1杯あたりで274リットルのバーチャルウォーター量となっています。
朝に飲む1杯のコーヒーを淹れる時に使う水は125ml程度ですが、コーヒーのバーチャルウォーターは210リットル。コーヒーや砂糖などを生産する国や地域の中には、水資源が豊かではなく慢性的な水不足に直面しているケースが存在します。貴重な水を使って生産物を栽培し、製品として売ることが経済的な拠りどころになっている側面と、生活に必要な水さえ足りていないのに栽培のために水を優先的に使わざるを得ない面があります。

この表に掲載しているのは仮想水計算機で算出できる製品の一部ですが、日本人が日常的に口にする食材を作る過程で、目には見えないたくさんの国外の水が使われていることがわかると思います。

バーチャルウォーター量は計算できる

食材ごとのバーチャルウォーター量は、環境省のホームページに掲載されている「仮想水計算機」を利用して計算することができます 。「仮想水計算機」のページを開き、食材の重量を入力するだけで、自動的にバーチャルウォーター量が算出されます。

例えば1回の食事で牛肉ステーキ200g、ご飯1杯、トマト1個を食べる場合、その食材がすべて輸入品だとすると、バーチャルウォーター量の合計はおよそ「4,414リットル」であると推定されます。

各自が節水を意識しましょう

地球上で利用できる水は限られている

水の惑星と呼ばれる地球ですが、存在する水の97.5%は塩分を多く含む海水で、淡水は2.5%ほどにすぎません。さらに淡水の多くは極地圏の氷や氷河や地下水として存在するため、人が使用するのに適した状態の河川・湖などの淡水は地球上の水のわずか0.008%です。
限られた資源である水ですが、理論上は世界中すべての人を満たすことができる水量があります。しかし実際は住んでいる国や地域によって清潔で安全な水にアクセスできるかどうかは異なります。

その理由は二つあり、一つは物理的に水が不足している地域であるということ。もう一つはその地域の社会・経済的な理由で水があってもその水を使うことができないからという理由です。

節水を意識しよう

バーチャルウォーターの視点から人々が消費している水の量を考えてみることも大切です。しかしバーチャルウォーターは間接的な水の存在なので、それを節水することは個人レベルでは難しく、長期的かつ輸入という大きな枠組から考えて取り組む必要があります。毎日の生活で使用する水なら個人で今すぐに節水を始めることができます。家庭やオフィスでできる具体的な節水方法を紹介します。

  • 水の使用量を減らす

例えば、シャワー中に30秒間水を流しっぱなしにした場合、2リットルのペットボトル18本分もの水を無駄にすることになってしまいます。こまめに蛇口を閉めることを意識して行動すれば、積み重ねで大きな節水になります。

  • 水を再利用する

風呂の残り湯の量は、一般家庭で約180リットル。半分を洗濯や掃除、散水、洗車などに利用することで90リットルの節水になります。

おわりに

あらゆるモノが世界中で取引されているグローバル化した社会では、生産国の水資源を使用してられた製品の多くが、輸入国によって消費される構造になっています。日本は年間降水量が多く、安全で清潔な水道水を使うことができる数少ない恵まれた国ですが、食料自給率が低いため食生活はバーチャルウォーターに支えられています。今後世界人口が増加を続けた場合、さらなる水不足や食料危機が訪れる可能性も否定できません。

毎日の食卓に並ぶ食材が、水不足の国の貴重な水を使用して生産されているケースがあること、目に見えにない間接的に消費されている水「=バーチャルウォーター」があることを理解し、毎日の生活の中で節水を心がけましょう。