私たちの住む地球が、多くの環境問題を抱えていることはご存知でしょうか?地球温暖化やオゾン層の破壊、酸性雨や森林破壊など、深刻な問題が現在進行形で地球を蝕んでいるのです。
ここでは地球が抱える環境問題、そのなかでも特に地球温暖化にフォーカスし、原因や対策についてご説明します。
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地球が抱える環境問題には、いくつかあります。いずれの問題も、完全に独立しているわけではなく相関関係にあります。地球温暖化を理解するにあたり、いま地球がどういった問題に直面しているのか確認していきましょう。
地球温暖化は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス濃度が高まり、地表の熱が宇宙に逃げることを遮ることで起こる問題。地表の気温を高めることで異常気象や生態系の変化をもたらし、私たちの健康や経済といった社会活動全般を脅かします。現在は、世界規模で温室効果ガスの削減を目指す「パリ協定」のもと、各国が地球温暖化の解決に向けて二酸化炭素の抑制に力を入れています。
オゾン層は、人体に有害となる種類の紫外線を吸収し、皮膚ガンや白内障などの疾患から私たちを保護する役割を持っています。しかし、かつてエアコンや冷蔵庫に広く使用されていたフロンが、オゾン層を破壊していることが分かったのです。
オゾン層が10%破壊されれば、皮膚ガンは20〜30%増加すると考えられています。また、プランクトンの減少により魚が減少したり、米を始めとする農作物が育たなくなったり、人間の健康被害だけでなくあらゆる問題を引き起こします。これらの問題を招く消費・貿易を規制するため、1980年代にはモントリオール議定書(正式名称:オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書)が採択・発効されました。同議定書はたび重なる改正を経て強化されており、オゾン層破壊を抑制するための規制として機能しています。
酸性雨は、硫酸・硝酸が溶け込んだ雨。酸性雨を生み出す要因となるSOxやNOxは、工場や火力発電、自動車から排出されます。酸性雨は建物を溶かすほか、樹木を枯れさせたり、水中の魚類を死滅させたりといった形で自然界へ悪影響をもたらします。
森林破壊は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収の減少と、分解による二酸化炭素の増加招き、森林に生息する動物を絶滅に追いやる問題。森林破壊が進む背景には、材木の調達や耕作地拡大などを目的とした商業伐採が大いに関係しています。
また、森林には汚染ガスを無害化する浄化機能があるため、森林破壊によって大気浄化能力が損なわれて大気汚染が進むことも懸念されています。後述する砂漠化の誘発にも繋がる環境問題であり、今後世界的に対策を講じるべき環境問題の1つです。
砂漠化は、もともと植物が生えていた土地が劣化し、不毛地帯になってしまう現象を指します。行き過ぎた耕作や森林破壊、ヤギやヒツジの過放牧が原因となって起こる問題です。砂漠化が起こった土地は、食物栽培ができないレベルにまで土壌が劣化するため、食糧生産性が低下して食糧問題が発生します。結果として貧困を加速させ、難民増加を招きます。
産業革命後、世界的に人口は増加の一途をたどっており、人口増加は資源枯渇や環境汚染を引き起こすものとして問題視されています。人口増加にともないエネルギー、食糧や水資源の消費量は急増し、産業の拡大により環境汚染が進むことは明らかです。
また、人口増加は二酸化炭素の増加に直結するため、後述する地球温暖化の進行に大きく影響しています。
工場や家庭から流れ出る汚染物、廃棄物の投棄や船舶の運航にともない流出する油などにより、海が汚染されることを海洋汚染といいます。波によりゴミが押し流されて、海岸をペットボトルやビニール袋が埋め尽くす「海洋プラスチック」の問題も、近年取り上げられる機会が増えました。
これらの問題は、海の生態系に深刻な悪影響を及ぼしており、海洋汚染によって多くの魚類や海鳥、海洋哺乳動物が傷ついているのです。また、海洋汚染は観光業・漁業・養殖業に対して、甚大な経済的損失をもたらします。
ここまでに挙げたいくつもの環境問題は、生物多様性を損ねる原因として知られています。そのほか、動植物の乱獲や外来種の持ち込みも、生態多様性の喪失を招く要因です。
私たちに身近な話題でいえば、うなぎの一種である「ニホンウナギ」が絶滅危惧種に指定されたことが挙げられます。ニホンウナギは人工的に繁殖させることが難しく、生育に適した場所の多くは環境変化によってすでに失われていたのです。あらゆる環境問題が改善されないまま放置されれば、私たちの見知っている多くの動植物はニホンウナギのようにどんどん絶滅に追い込まれてしまいます。
地球温暖化の進行は、二酸化炭素やメタンなどの「温室効果ガス」によって起こっています。温室効果ガスのうち、特に地球温暖化を進める要因となっているのは二酸化炭素です。本来、温室効果ガスは、地球の温度を適正に保つために機能します。実は、温室効果ガスがなければ地表の熱が宇宙に逃げてしまい、地球の気温は氷点下まで下がってしまうと予測されているのです。つまり、温室効果ガスそのものは、一概に悪いものとはいえません。しかし、温室効果ガスが過剰に発生し、地表の熱を宇宙に逃せない状態に陥ると、徐々に地球全体の気温が上昇して温度調整が難しくなってしまいます。
二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの発生は、それぞれ以下を原因としています。
温室効果ガスの種類 | どんなときにガスが発生する? |
二酸化炭素 | 火力発電やゴミ焼却、自動車・バイクを動かすとき発生 |
メタン | 石油や天然ガスから漏出。家畜のげっぷ・排泄物から発生 |
このほか、一酸化二窒素や代替フロンも温室効果ガスに分類されますが、地球温暖化進行の主な原因となっているガスは二酸化炭素とメタンガスの2つです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書によれば、2010年度における温室効果ガスの割合は、二酸化炭素が7割以上、メタンが1~2割程度となっています。
温室効果ガスが増え続けて地球温暖化が深刻化するにともない、数々の悪影響が懸念されています。
地球温暖化によって、これらを始めとする多くの影響の発生が懸念されています。なお、各問題は大きく「生物にまつわる問題」や「経済にまつわる問題」、「私たちの健康にまつわる問題」に分けられます。
地球温暖化により気温が上昇し、気候変動が発生することで生態系のバランスが崩壊すると予想されています。たとえば、北極に生息しているホッキョクグマは、地球温暖化により個体数の減少が見込まれている代表的な生物です。ホッキョクグマは、海が凍っている時期にアザラシを捕食して栄養を蓄えます。そして、海の氷が溶けてしまう夏季はほぼ何も食べることなく過ごすのです。しかし、地球温暖化により氷海となる期間が短くなれば、アザラシの捕食が困難となり繁殖が難しくなります。
このほか、海中に生息するサンゴも、地球温暖化による海水温の上昇・台風の巨大化によって破壊・絶滅が懸念されています。下記画像は、サンゴの死滅の前触れともいえる「白化現象」を撮影したもの。
*水産庁「サンゴ礁の危機」
2019年には、世界で初めて地球温暖化による絶滅が確認された哺乳類として、オーストラリアのげっ歯類の一種が取り上げられました。もうすでに、地球温暖化による生物への影響はあらわれ始めており、今後ますます生態系への悪影響は強くなることが予想されています。
地球温暖化の進行にともなって、私たちの身近で起こる経済の問題はつぎのようなものです。
経済にまつわる問題は、いずれも地球温暖化によって何か問題が起こり、そこから連鎖的に招かれるものが大半です。たとえば、感染症のリスク上昇によって外出意欲が低下し、街中の商業施設が利益減少に追い込まれる問題は、元を辿れば気温上昇による感染症のエリア拡大によるもの。インフラ設備の必要性も、気温上昇による異常気象の発生が原因となっており、地球温暖化そのものが経済に影響するわけではありません。それだけに、国内外経済にどれほどのインパクトをもたらすのか、正確に予想することは困難です。
ただし、2019年に公開された毎日新聞の記事「温暖化に伴う暑さの労働損失、2030年に260兆円に ILO試算」によれば、国際労働機関が暑さによる労働時間の減少で、2019年から2030年のあいだに世界で約260兆円の経済損失が発生するとのこと。これが経済にまつわる問題の一部だと考えれば、全体規模での経済損失はとてつもなく大きな被害になると予想されます。
地球温暖化は、私たちの健康にも深刻な悪影響をもたらします。
過剰な気温上昇が続けば、コレラ・サルモネラ・ジアルジアを始めとする水媒介性感染症、デング熱・マラリアを始めとする動物媒介性感染症が、世界各地で横行する懸念があります。
以下の画像は、環境省が公表した「地球温暖化と感染症」の資料内にある、各地域で懸念される「地球温暖化に起因する健康被害」の一例です。
*環境省「地球温暖化と感染症」
上記資料からも分かるように、この図表で紹介されている健康被害だけでも、多数の感染症が挙げられています。地球温暖化がもたらす健康被害は恐ろしいほど多く、私たちが地球温暖化に危機感を持つべき理由として十分なものだと読み取れます。
地球温暖化の一番の原因である二酸化炭素は、工業化の進んだ先進国による影響だけでなく、発展途上国による排出も目立ってきました。
以下の図表は、全国地球温暖化防止活動推進センターのサイト内で使用されている、「エネルギー・経済統計要覧2019年版」のデータをもとに作成したものです。
*EDMC/エネルギー・経済統計要覧2019年版
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
大国である中国、世界経済を牽引するアメリカが二酸化炭素排出量の多くを占めており、インドやロシアに次いで日本は5番目に位置しています。
ここまでの数値だけ見れば、日本は特別多くの二酸化炭素を排出しているわけではないと思えます。しかし、二酸化炭素の排出量を1人あたりに換算すれば、日本が人口に対して大量の二酸化炭素を排出していることが明確に分かるのです。
*EDMC/エネルギー・経済統計要覧2019年版
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
日本は、1人あたりの二酸化炭素排出量が年間9トン。各国の平均値と比較して、決して低い水準ではありません。そのため、地球温暖化の進行に対する責任意識を強く持ち、各人が二酸化炭素量の削減に努めるべきだといえます。
ここまでの解説で、地球温暖化は世界レベルで解消を目指すべき深刻な問題であり、先進国が率先して問題解決に取り組むべき課題だと判断できます。しかし、先進国の二酸化炭素排出量こそ減少に転じているものの、世界全体での二酸化炭素排出量は増加の一途をたどっています。
*IPCC第5次評価報告書
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
上記画像の通り、二酸化炭素の排出量は加速度的に上昇しており、追加的に緩和策を講じない場合には「2100年時点で産業革命前の気温より3.7〜4.8℃上昇する」と考えられています。これを抑制し、産業革命前と比較して2100年時点の気温上昇を2℃未満に抑える「2℃シナリオ」が、1つの目標として掲げられてきました。その後、2018年に公表されたIPCC特別報告書によれば、2017年時点における世界全体の気温上昇は約1.0℃。このまま地球温暖化が進めば、2030~2052年のあいだに1.5℃に到達する可能性が予見されており、同報告書では気温を1.5℃にとどめた場合、2.0℃まで上昇した場合の違いについて触れています。簡潔にいえば、1.5℃と2.0℃のあいだには、豪雨や干ばつの発生確率、海面水位の上昇率を始めとするあらゆる影響度の違いがあるのだと予想されており、現在は気温上昇を「1.5℃未満にとどめる取り組み」に注目が集まっています。
下記は、気温上昇を1.5℃にとどめた場合、2.0℃まで昇温した場合に発生する問題の一例です。
気温上昇が1.5℃だった場合 | 気温上昇が2.0℃だった場合 | |
洪水の影響 | 1976~2005年比で、被害を受ける人口は100%増加 | 1976~2005年比で、被害を受ける人口は170%増加 |
干ばつ・降水不足 | 1986〜2005年比で、被害を受ける人口は約35万人(±約16万人) | 1986〜2005年比で、被害を受ける人口は約41万人(±約21万人) |
海氷の消失 | 昇温の安定後、約100年に1度の可能性で、北極海の海氷が消滅する | 昇温の安定後、約10年に1度の可能性で、北極海の海氷が消滅する |
サンゴ礁の消失 | さらに70〜90%が減少する | 99%以上が消失する |
*環境省「IPCC「1.5℃特別報告書」の概要」を抜粋・改編
地球温暖化による昇温を1.5℃に抑える経路としては、世界全体の二酸化炭素の排出量を2030年までに約45%減少(2010年度比)させ、2050年度前後に排出量をプラスマイナスゼロにするシナリオが有力です。
地球温暖化を解決するための取り組みは、先進国を筆頭に世界規模で行われており、私たちの住む日本でも各分野が総力を挙げて温室効果ガスの削減を目指しています。
また、地球温暖化の解決に向けた取り組みのうち、一個人が家庭・職場で実施できる行動も数多くあるのです。つぎの世代に快適に過ごせる環境を繋げるためにも、どのような取り組みが進められているのか理解していきましょう。
2020年以降の、地球温暖化対策の国際的枠組みとなっているのは、パリ協定です。パリ協定は、2015年にパリで行われた「COP21(国連気候変動枠組条約締約国第21回締約国会議」で合意され、2016年に発効した取り組みです。つぎの目標を掲げて、世界規模で地球温暖化に対処することを取り決めたものです。
温室効果ガスの削減・抑制は義務ではなく、あくまで努力目標です。しかし、取り組みにまつわる情報は高い透明性が重視されており、一定期間ごとに進捗状況を提出して専門家の評価を受ける必要があります。パリ協定で設定された目標の達成には、再生可能エネルギーの普及が不可欠だとされており、太陽光発電や水力発電といった低炭素社会のキーとなる電力供給の拡大に注目が集まっています。
なお、主要国における温室効果ガスの削減目標、および実際の状況は以下の通り。
上記のリストは、主要国のGHG(温室効果ガス)の削減目標と実績を示しており、下記のリストは非化石電源(再生可能エネルギー・原子力)の導入状況を示しています。
*経済産業省「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み① 各国の進捗は、今どうなっているの?
地球温暖化を解決するための取り組みとして、日本では地球温暖化対策計画を中心に各分野で対策が講じられています。「地球温暖化対策計画」の資料内では、地球温暖化の対策として以下の施策を講じることが言及されています。
目下の目標としては、「日本の約束草案」で掲げた温室効果ガスの削減に向けて施策が進められています。具体的には、2030年度に2013年度比で26%の温室効果ガス削減を目指しており、約10億4,200万トンの二酸化炭素を減らすために排出削減・吸収量の確保が急がれています。
日本では、徐々に再生可能エネルギーの拡大と省エネの定着が進んでいるものの、まだまだ低炭素社会には届かないのが実情。私たち国民も意識的に省エネルギー化へ取り組み、日本国内から排出される温室効果ガスの削減を一層推し進める姿勢が求められます。
日本国内における二酸化炭素排出量の割合は、以下のようになっています。
*温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
日本全体における二酸化炭素排出量は、年間約11億9,000万トン。このうち、家庭レベルで課題解決に取り組むべき領域は、全体の15.6%にあたる「家庭部門」から排出される二酸化炭素です。家庭から排出される二酸化炭素のうち、最も割合が多いものは照明や家電製品、次点で自動車や暖房が挙げられます。
*温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
自動車は生活に不可欠な面もあり、すぐに二酸化炭素の排出量を抑えることは難しいものの、自宅で利用する電気・ガスの消費量は意識次第で今日からでも改善できます。
上記の意識・工夫は、多くの家庭ですぐにでも実践できるはずです。また、自動車に関しても、自動車の利用を控える以前に始められる対策はいくつもあります。
わずかではありますが、これらの意識を持てば燃費は向上し、走行距離あたりの燃料消費は減ります。走行距離あたりの二酸化炭素排出量は燃費に依存することから、燃料代を減らしつつ地球温暖化の抑制にも貢献可能です。
ここまでご説明したように、私たち個人にできる取り組みも数多くあり、いずれも今日から始められるものばかりです。
国内外を問わず、地球温暖化を「嘘」だと指摘する意見があります。たとえば、アメリカの大統領を務めるドナルド・トランプ氏は、地球温暖化に対処しなければアメリカ経済が混乱に陥るといった指摘に対して、信じないと返答しました。加えて、前述した世界規模での取り組みであるパリ協定から離脱し、NASAの地球温暖化ガス調査活動予算を削減しています。このほか、一時期に地球温暖化の懐疑説が取り上げられたことから、地球温暖化の真偽について困惑しがちです。
しかし、地球温暖化は現代科学で「限りなく正しいこと」が証明されており、ここまでにご説明した諸問題が引き起こされる可能性は極めて高いと考えられています。
地球温暖化は異常気象と生態系の変化、それに伴う多大な経済的損失を招きます。そして、地球温暖化が深刻なダメージをもたらすことは決して嘘ではなく、たとえば近年連続している大型台風の発生も、地球温暖化が影響している可能性は高いのです。
まだ環境に対するリテラシーが高いとはいえない状況であるため、各自が当事者意識を持って環境問題について考える必要があります。自身、そして自身のつぎの世代のためにより良い地球を残すため、いま取り組める対策から始めましょう。
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