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太陽光発電システムから発生する電磁波と健康被害

「住宅用の太陽光発電システムから発生する電磁波は身体に悪影響なのでは?」といった、電磁波に関する健康面の疑問は多方から聞こえます。結論からいえば、太陽光発電システムから発生する電磁波は家電製品と大差なく、発電設備の設置を理由として健康を損ねる可能性はほとんどありません。太陽光発電システムから発生する電磁波は、日本国内で規定されている電磁波の基準を下回っており、発電設備から少し距離を取るだけでも強度は大幅に減衰するのです。

ここでは、電磁波が身体に及ぼす影響、および不安を解消するための方法についてご説明します。

太陽光発電システムから発生する電磁波は健康に悪影響?

電磁波とは、電気が流れる際に発生するエネルギーの波です。より専門的な言葉であらわすなら、電界と磁界が相互に影響しながら空間を伝わっていく波です。太陽光に含まれる紫外線や赤外線、テレビやラジオ放送に使われる電波も波長が異なっているだけで、すべて電磁波の一種です。
電界と磁界は、それぞれ以下を指して呼びます。

  • 電界:電気の力が働いている場所
  • 磁界:磁力の力が働いている場所

一例を挙げると 、プラスチックの下敷きをニットセーターにこすり、頭に近付ければ髪の毛が下敷きに引き寄せられる現象は、下敷きの周りに電界が発生していることで起こります。また、平らに敷いた紙面へ砂鉄を乗せて、磁石を置いたとき磁石を中心に模様ができる現象は、磁石の周りに磁界が発生することで起こっているのです。

電界と磁界が相互に影響をし合うというのは、どういうことでしょうか。
たとえば、電力会社の送電線は、50ヘルツないし60ヘルツの交流の電気が流れています。これは1秒間に50回ないし60回、プラスとマイナスが入れ替わっているということです。このとき、電界と磁界が相互に影響しあい、50ヘルツないし60ヘルツの周波数の電磁波が発生しています。なお、プラスとマイナスが一定している直流の電気からは、電磁波は発生しません。
これらの電界・磁界から生まれる電磁波は、日本であれば200マイクロテスラ(μT)を基準にして規制がかけられています。しかし、太陽光発電システムから発生する電磁波は明らかに弱く、過去の調査から健康に悪影響を及ぼすものではないのだと分かっています。

電磁界情報センターが公表する資料のうち、複数の太陽光発電システムを対象にした「太陽光発電システムから発生する静磁界及び商用周波数磁界」によれば、実測値は規制に抵触する20分の1~100分の1程度でした。
さらに、太陽光発電システムから0.20m(20cm)でも離れれば電磁波は著しく弱まり、健康に悪影響を及ぼすレベルにはないことが明らかとなっています。

電磁波の短期的影響

1,000マイクロテスラ以上の非常に強い電磁波を浴びることで、一時的に神経や筋肉に刺激を受けることは判明しています。ただし、日常生活の範囲内で、これほど強力な電磁波を浴びる機会は基本的にありません。

もちろん、太陽光発電システムから発生する電磁波も、人体に影響を及ぼす可能性はゼロに近いと考えられており、電磁波の短期的影響と呼ばれる「神経・筋肉に対する刺激」の心配はないと判断できます。

電磁波の長期的影響

弱い電磁波であっても、日常的に浴び続けることで悪影響が生じる可能性を危惧し、世界各地で30年以上ものあいだ研究が進められてきました。 しかし、継続して電磁波を浴びることで懸念される「電磁波の長期的影響」は科学的に立証されておらず、太陽光発電システムから発生する電磁波も心配は不要だと考えられます。 

WHO(世界保健機関)が公表する「超低周波電磁界へのばく露」でも、電磁波の長期的影響により最も懸念される小児白血病の発症について、「電磁波との因果関係と見なせるほど強い影響はない」と評価されました。また、それ以外のがん・うつ病・心臓血管系疾患等のあらゆる疾患に関しては、小児白血病よりも因果関係の証拠は弱いと結論付けられています。

太陽光発電システムのどの部分から発生するのか

太陽光発電システムのうち、電気を生み出す太陽光パネルから発生する電気は直流なので、電磁波は発生しません。電磁波を発生させる機器は、太陽光発電システムのうち「パワーコンディショナー」と呼ばれる設備です。パワーコンディショナーは太陽光パネルが生み出した直流の電気を、売電や自家消費に適した交流の電気に変換する役割を持っており、電気を変換する際に電磁波を発生させます。

以下資料は、前述した「太陽光発電システムから発生する静磁界及び商用周波数磁界」の調査によるものです。

*電磁界情報センター「太陽光発電システムから発生する静磁界及び商用周波数磁界

上記のうち、最も数値の大きいタイプCが、事業用太陽光発電システムのパワーコンディショナーに相当します。パワーコンディショナーを自宅に設置することから、「日常的に電磁波を近くで浴びる」として敬遠されがちな住宅用太陽光発電システムは、タイプAとタイプBのパワーコンディショナーです。
最大値の大きいタイプCのパワーコンディショナーであっても、最大値は11.92マイクロテスラ。この数値ですら、何度もご説明する通り「健康には全く影響しない数値」だといえます。

ほかの家電製品は電磁波を発生しているのか

太陽光発電システムから発生する電磁波が、いかに小さい数値であろうと、日常的に利用している家電製品の電磁波より強力であれば心配になるものです。

そこで、普段から使う身近な家電製品の電磁波を例に挙げつつ、太陽光発電システムから発生する電磁波がどの程度の強度なのかご説明します。

家電製品の種類 測定距離 電磁波の強度
IH調理器 5~10cm 27マイクロテスラ
ヘアドライヤー 3cm 2~50マイクロテスラ
掃除機 30cm 2~20マイクロテスラ
電気カーペット 2.5cm 10~20マイクロテスラ
電気毛布 2.5cm 5マイクロテスラ
洗濯機 30cm 0.2~3マイクロテスラ
冷蔵庫 30cm 0.1~0.3マイクロテスラ

*電磁界情報センター「IH調理器から発生する電磁界」,関西電力「電磁界について

表から読み取れるように、太陽光発電システムのパワーコンディショナーから発生する電磁波より、強力な電磁波を発生する家電製品は複数あります。いずれの家電製品も多くの人に利用されていますが、電磁波を理由として健康を損ねる事例を聞かないということが、パワーコンディショナーから発生する電磁波が悪影響を及ぼさない証明になるはずです。

それでも不安な方は対策を検討しよう

ここまでご説明した通り、太陽光発電システムから発生する電磁波は微々たるものです。しかし、住宅用の太陽光発電システムを導入する場合は、常にパワーコンディショナーが近くにあることから、不安が完全に解消されないケースも懸念されます。

こうして、理論上は安全だと分かっていても不安が消えない場合は、屋外に設置するタイプのパワーコンディショナーの導入を検討してみてください。電磁波は、発生源から距離が離れるにしたがって、強度が低くなる傾向にあるからです。
屋内に設置するパワーコンディショナーであっても、リビングや寝室に機器を設置するわけではないため、悪影響はゼロに近いといえます。ただし、どうしても不安であればパワーコンディショナーから距離を取ることをおすすめします。

おまけ:騒音被害もあるの?

太陽光発電システムから大きな音が出るわけではないのですが、パワーコンディショナーの駆動音が高い周波数であるため、いわゆる「モスキート音」を発生させるとして騒音問題に発展することがあります。

パワーコンディショナーから音が発生する時間帯

パワーコンディショナーがモスキート音を発生させるのは、太陽光発電システムが発電を行っている時間帯のみ。つまり、太陽光パネルに太陽光が照射されている日中に限ります。
そのため、夜間に大きな音を発生させて、近隣住民の就寝を妨げる可能性は低いといえます。

パワーコンディショナーから発生する音の大きさ

太陽光発電システムのうち、騒音による近隣トラブルを招く可能性が高いのは、近隣住宅との距離が近くなる住宅用の太陽光発電システムです。
住宅用太陽光発電システムの場合、パワーコンディショナーから発生する音の大きさは30~50デシベル程度。30デシベルは深夜の郊外、40デシベルなら図書館内や閑静な住宅街の昼、50デシベルは静かな事務所内と同等であることから、人によっては全く気にならないケースもあるほどです。

ただし、音に対する敏感さは各々で異なるため、不快感を覚える可能性がゼロだと断定することはできません。図書館内ほどの小さな音であったとしても、日中常に聞こえていれば騒音に感じる場合も十分に考えられます。 そのため、どうしてもパワーコンディショナーの音に悩まされたくないと考えるのであれば、設備導入のまえから対策を検討しましょう。

パワーコンディショナーから聞こえる音を小さくするための対策

パワーコンディショナーから発生する音は、電磁波と同じように距離を取るほど小さくなります。そのため、日常生活で過ごす時間の長い場所から、少しでも遠い位置にパワーコンディショナーを設置することをおすすめします。また、導入するパワーコンディショナーは静穏性を基準に比較検討し、より静穏性に優れたモデルを選択することで騒音問題を回避できる可能性は高まります。

  • 設備導入前に優れた静穏性を持つパワーコンディショナーを探す
  • 普段過ごす場所から距離を離して、パワーコンディショナーを設置する

上記2点を意識することで、パワーコンディショナーの騒音問題を軽減できます。

事業用太陽光発電システムの場合は防音壁を活用する

住宅用太陽光発電システムのパワーコンディショナーが、30~50デシベル程度の音の大きさであることに対し、事業用太陽光発電システムのパワーコンディショナーは音量が70デシベル程度です。70デシベルは一般的に「うるさい」と感じるレベルの音量で、身近な例としては高速走行している自動車の車内やセミの鳴き声が該当します。そのため、近隣に住宅が多いのであれば、騒音トラブルを回避するための対策が必要です。

具体的には、パワーコンディショナーを防音壁で囲い、発生する音を吸収する手段が挙げられます。防音壁で囲うことにより、10~20デシベル程度の消音効果が期待できるため、騒音がトラブルに発展する可能性を大きく減らすことが可能です。

おわりに

太陽光発電システムから発生する電磁波は、日本で定められている規定に触れるものではなく、むしろ家電製品よりも電磁波の強度が弱いケースは多々あります。すでに複数回にわたって行われた研究の結果が、電磁波による身体への悪影響がないことを証明しているのです。
ただし、それでも不安が解消されず、データの参照が電磁波による問題の解決に繋がらないこともあります。こうした場合は、電磁波の発生源であるパワーコンディショナーを遠ざけて、少しでも電磁波が届かないよう工夫することを推奨します。