オーステッド、マイクロソフトと覚書を締結 ~バイオマス発電でカーボンマイナスへ~ | EnergyShift

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オーステッド、マイクロソフトと覚書を締結 ~バイオマス発電でカーボンマイナスへ~

オーステッド、マイクロソフトと覚書を締結 ~バイオマス発電でカーボンマイナスへ~

EnergyShift編集部
2021年04月16日

オーステッド、マイクロソフト、および Aker Carbon Capture(ACC)は、デンマークのバイオマス火力発電所での炭素回収および貯留プロジェクトの開発支援を模索することに合意する覚書(MoU)に署名した。バイオマス発電そのものがカーボンニュートラルである上、排出したCO2を回収貯留することで、カーボンネガティブ(カーボンマイナス)となる。

脱炭素社会へ向けCO2排出をマイナスにする技術を模索

CCS(CO2回収貯留)は、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、1.5℃以内に制限するというパリ協定の⾧期目標を達成するための重要な手段として期待されている。

また、バイオマスは動植物から生まれた、化石燃料以外の再利用可能な有機性の資源だ。太陽エネルギーを使って水とCO2から生物が生成する有機物であるため、再生可能な資源ということになる。

バイオマスの燃焼時に発生するCO2は、もとは植物等が大気中から吸収したものなので、新たにCO2を増加させないというカーボンニュートラルな性質を持つ。さらに、バイオマスの燃焼による熱利用と発電を通じて排出されるCO2を回収し、地下に貯蔵することで、CO2を大気から除去することもできる。

オーステッドはマイクロソフトやCCSのリーディングカンパニーであるAker Carbon Capture(ACC)と協力し、バイオマス火力発電所から排出されるCO2を回収・貯蔵することにおける、科学技術、法規制、商業の各方面における課題に取り組み、商業的・社会的にも大きな影響を与える役割を努めるという。

今回の覚書の締結において、オーステッドはこれら2社とともに、以下に合意している。

  • デンマークにあるオーステッドのバイオマス発電所の1つで、マイクロソフトがパートナー企業やノルウェー政府と展開するNorthern Lightsプロジェクトを活用し、CO2排出をマイナスにするプロジェクトの開発を共同で探索する。
  • ACCの健康・安全・環境(HSE)に配慮した回収技術と、マイクロソフトのデジタル専門知識を生物起源のCO2回収プロジェクトに統合するための技術協力について考察する。
  • オーステッド、マイクロソフト、ACCが共同で生物起源のCO2回収プロジェクトの開発を加速させる方法を探る。
  • 欧州諸国において、カーボンネガティブの枠組みを加速させるための政策の推奨方法を研究・確立する。

本研究におけるオーステッドとほか2社の究極のビジョンは、これら4つの分野での活動を成功させることにより、CO2排出マイナスへの流れを促進し、実質的に炭素排出をマイナスにするために商業的および技術的な仕組みを実際の運用までに到達させることだ。

現在、オーステッドには6つのバイオマス燃焼ユニットがあり、デンマークの地域暖房の約4分の1に熱を供給している。オーステッドの火力発電所で燃料として使用されるバイオマスは、持続可能な方法で管理された生産林から作りだされたもので、製材所から出るおがくずや刈り込みで生じた剪定かす、曲がった木などの余剰木材だ。そして、オーステッドが調達する余剰木材はすべて成⾧林から得られるため、余剰木材がエネルギーに変換された場合、排出されるCO2は、数年以内に森林によって再度吸収されることになる。

オーステッドは、2040年頃までには再生可能エネルギーに基づく技術が、地域暖房で利用されているバイオマスを利用したエネルギーの大部分に取って代わると予測している。その一方で、多くのバイオマス燃焼ユニットでのCO2回収もエネルギー転換において引き続き重要な役割を果たすと予想している。

「CO2回収は環境や生態系に優しい社会への移行のために重要な役割を担うことになります。オーステッドのバイオマス火力発電所の一部でCO2を回収したら、排出量マイナスを達成するために地下に貯蔵するか、Power-to-X(電気から別のエネルギーに変える技術)施設でのグリーン燃料の生産のためにCO2を使用することもできると考えます。そのため現在は、施設における炭素回収の法規制、技術、および経済的可能性を探究しています」と、オーステッドの上級副社⾧であるオレ・トムセン氏は述べている。

デンマークと同様に、日本政府も2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指す一方、CCSの技術開発にも取り組んでおり、国内で実証実験が展開されている。

オーステッド・ジャパン社⾧の笠松純氏は「カーボンニュートラルは、どれか一つの再生エネルギーの利用に依存するのでなく、多様な再生エネルギーやCCS、CO2を有効活用するCCUSなど、様々な手法を活用することで早く実現できる。オーステッドは洋上風力だけでなく、CCSなど多様な分野で日本社会に貢献して行きたいと考えています」と述べている。

一方、マイクロソフトは、炭素排出量の削減を推進するための複数のイニシアチブに世界規模で参加している。マイクロソフトは、2012年から世界各国でカーボンニュートラルを達成しており、2030年までにカーボンネガティブになることを約束している。また、持続的なビジネス慣行とクラウドを活用したテクノロジーを通じて、世界中において、持続可能な発展とCO2排出の少ないビジネスを実践することを目指している。

マイクロソフトのデンマーク・アイスランドのゼネラルマネージャーであるナナ・ビューレ氏は、「業界を超えたパートナーシップとデジタルイノベーションは、気候変動との闘いにおいて重要です。2030 年までにCO2排出量を70%削減するというデンマークの目標を達成する計画は、大規模なCO2の回収と貯留の手法も活用して実現しようとしており、これをオーステッドやACCとともにサポートできることを嬉しく思います」と話している。

また、ACCの最高経営責任者(CEO)であるバルボーグ・ルンデガード氏は、「ACCは、10年以上にわたってCO2回収技術を開発し、プロジェクトを展開してきました。今、オーステッドやマイクロソフトとのリレーションによって、これまでにない、強い推進力をもつバイオマスCCSプロジェクトへの可能性が開けました」と述べている。

オーステッドはバイオマス以外にも、様々な経緯で発生したCO2を削減するため、今後も多様な取り組みを展開して行くとしている。

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