脱炭素社会のための取り組みである「RE100」をご存知でしょうか?すでに多くの有名企業が続々とRE100に加盟しており、意欲的に再生可能エネルギーの利用へ注力しています。ここでは、RE100の概要や設立の背景、加盟条件や国内企業における事例をご紹介します。
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RE100(Renewable Energy 100%)は、事業活動にもちいるすべてのエネルギーを再生可能エネルギーにより調達し、温室効果ガスの削減を目指す国際的な取り組み。2020年5月時点では235社の企業がRE100に加盟しており、GoogleやApple、P&Gなど世界的に有名な企業が多く参画しています。
RE100加盟企業の中には、⾃社の再エネ⽐率100%を達成したのち、サプライヤーに再エネ利⽤を求める企業も出てきています。
化石燃料による火力発電が持続可能性に欠ける点は、長らく問題視されてきました。これを解消するため、先進国を中心に脱炭素社会へ移行することを目標として、RE100は国際NGO「クライメイト・グループ」のもと2014にスタート。少なくとも2050年までには加盟企業のエネルギー調達率100%を実現し、パリ協定の達成を現実のものとするために推し進められています。
RE100の加盟条件は、以下の項目のいずれかを満たした企業です。
このうち、電力消費量が参加要件として特に重視される傾向にあります。なお、RE100加盟にあたり費用が発生し、ベーシック会員は3,500ドル、イベント登壇などの特典が用意されたゴールド会員の加盟費用は15,000ドルに設定されています。これらの加盟条件が設けられているRE100は、そもそも影響力のある企業でなければ加盟できないため、中小企業の加盟はほぼ不可能です。そのため、中小企業でも参加できる、RE100に類似した枠組み「RE Action」が発足されました。
RE Actionは2019年10月に発足した、日本の中小企業を対象とする新たな枠組みです。RE100と同様、再生可能エネルギーによるエネルギー調達率100%を目標としており、イメージとしては「日本の中小企業版RE100」といったところ。RE Actionに参加できる対象企業、参加の要件は以下のように規定されています。
参加対象から外れる団体は、RE100の対象となる企業や再エネ設備事業による売上高が全体の50%以上となる団体、主な収入源が発電・発電関連事業である団体が該当します。
なお、RE Actionにも参加費が設定されており、団体のカテゴリーや規模に応じて年間2万5,000~10万円の費用が発生します。
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RE100に類似した取り組みとして、EP100やEV100が挙げられます。EP100とEV100は、それぞれ下記のような目的を持つ枠組みです。
EP100は参加条件として、エネルギー効率の倍増の実現を約束すること、エネルギーマネジメントシステムの導入・利用を約束すること、エネルギー消費量の収支ゼロを可能とするビルの所有を約束することのなかから、少なくとも1つに対してコミットメントすることが求められます。
一方のEV100では、自社が保有・リースする車両の電化や、施設内に対する電気自動車用充電設備の導入。従業員に対する電気自動車の利用推進、顧客に対しての電気自動車の採用推奨といった活動のうち、いずれか1つ以上に注力することが参加資格となっています。
RE100で掲げられている、再生可能エネルギーによるエネルギー調達率100%を達成するためのポイントは、大きく2つに分けられます。
前者は、太陽光発電設備を自社工場の屋根部分や、別途保有している土地に導入・設置し、自ら再生可能エネルギーを生産して自家消費する方法です。後者は、発電事業者により生み出された再生可能エネルギーを購入し、自社の事業活動に充てる方法。従来利用していた化石燃料から作られる電力から、再生可能エネルギーにより作られる電力を供給している電力事業者に切り替えるということです。資金調達や導入条件により前者の選択が難しければ、後者の方法を取り入れて大きな初期コストをかけることなくRE100の達成を目指すことも可能です。
RE100に加盟した企業は、以下4つのメリットがあります。
それぞれ、具体的にどういった利益につながるものかご説明します。
RE100加盟企業は、サステナビリティや省エネルギーへの配慮を尊重する企業から、好意的な反応を得られるでしょう。たとえば、RE100に加盟しているApple社は、Apple製品を製造する複数社から「Apple製品の生産にクリーンエネルギーを利用する」という約束を取り付けています。ここから、Apple社はRE100に加盟している、あるいはRE100に賛同する企業との取引を強く希望していることがうかがえます。
また、昨今では一般消費者のサステナビリティに対する関心が高まっており、企業はRE100に加盟することで消費者から大きな支持を得られることも期待できます。
2019年11月に博報堂が公表した「生活者のサステナブル購買行動調査」によれば、調査対象者の38.5%が「環境・社会貢献活動に積極的な企業の商品を買う」と回答。「生産・製造時に環境に負荷をかけない商品を買う」といった回答も、全体の38.6%にのぼりました。
この調査結果から、消費者の環境保全に対する意識は高く、RE100加盟によるブランドイメージの向上は事業活動に寄与するものと判断できます。
昨今、投資対象にサステナビリティ(持続可能性)を求める風潮が強くなっており、環境保全や社会貢献などの分野に注力する企業へ投資を行う「ESG投資」が主流になりつつあります。ESG投資にあたり、評価基準として以下のような3つの観点が重視されます。
具体的には、環境汚染や省エネルギーに向き合い環境問題の解決に取り組む姿勢や、人権問題や社内の労働環境の改善を目指す社会に対する姿勢。および、コンプライアンスや事業の透明性など、ガバナンスの改善に注力する姿勢を加味し、投資判断の材料とする投資手法がESG投資なのです。
RE100はESG投資の考え方に合致する部分が多いため、RE100加盟企業はESG投資を行う投資家から投資対象として高い評価を得られることが期待できます。これにより、企業側はRE100へ加盟することによって、非加盟時よりも資金調達がしやすくなります。
以下記事でESG投資を詳しく解説しているため、あわせてご参照ください。
関連記事:ESG投資とは?なぜ重要視されている?
化石燃料は有限である以上、いずれ高騰する可能性が高く、それにともなって化石燃料から生み出されている電力の調達価格も高騰する懸念があります。電力の調達価格が高騰すれば、事業活動における電力消費量が多いほど企業の経済的な負担は大きくなるでしょう。
一方、RE100が目標とするように、事業活動のもちいる電力のすべてを再生可能エネルギーによってまかなえば、化石燃料の価格変動の影響を受けることなく電気を調達できます。事業活動における持続可能性の観点でも好ましく、電力供給の点ではコスト負担の安定化を図ることが可能です。
RE100に加盟し、再生可能エネルギーの利用率を引き上げる行為は、地球温暖化対策へ貢献することにほかなりません。
有名な企業がRE100に加盟すること自体、環境保全にまつわる啓蒙となり、多くの企業に事業活動のあり方を考える機会を与えるはずです。
RE100の加盟企業は、再生可能エネルギーによるエネルギー調達率100%の達成、あるいは再生可能エネルギー100%の達成に向けた明確な指針がなければなりません。具体的には、下記に該当する必要があります。
RE100に加盟する企業は、2050年までに再生可能エネルギーによるエネルギー調達率100%を達成することが求められているため、タイムテーブルやロードマップはそれに準ずるものでなければなりません。
また、総電力消費量と再生可能エネルギーの総電力使用量に関するデータを、目標達成に向けた進捗状況として毎年報告することが義務付けられています。
RE100加盟企業は世界全体では235社にのぼり、うち33社の日本企業がRE100に参画しています。(2020年5月時点、2021年2月には日本企業は50社になりました)
以下の日本企業が、すでにRE100へ加盟済みです。
このうち、初めてRE100に加盟した日本企業である株式会社リコー、デジタル機器の開発や金融など手広く事業を手掛けるソニー株式会社にフォーカスし 、どのような取り組みを行っているのかご紹介します。
株式会社リコーは、2017年4月にニュースリリース「リコー、経営戦略に基づき重要社会課題と新たな環境目標を設定」にて、日本企業として初めてRE100に参加したことを公表。同ニュースリリース内で「リコーグループ環境目標」を公開し、温暖化防止分野と省資源分野の2つの観点から環境問題に取り組むことを宣言しています。
2019年には、岐阜支社で75%の省エネルギーを達成し、省エネルギーな建築物であることを示す「Nearly ZEB」の認証を取得。続けて、同年にはA3複合機の組み立て生産に使用する全電力を再生可能エネルギーにより調達できるよう整備し、中国・英国拠点の電力供給を見直すことで年間の二酸化炭素排出量を年間5,000トン削減できるまでに至っています。
今後、新たに建築する支社・営業拠点も、省エネルギーな建築物であるNearly ZEB化を目指すと発表しており、積極的に脱炭素化を進めています。
ソニー株式会社は、2018年9月にニュースリリース「ソニー、100%再生可能エネルギー利用を目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟」にて、RE100に加盟したことを公表しました。欧州の事務所では再生可能エネルギーの利用比率が高い反面、半導体事業によって電力消費量が多い日本国内では再生可能エネルギーの利用が十分とはいえず、ソニーグループ全体の温室効果ガス排出量のうち83%を日本が占めていたようです。
この状況を改善するため、同社は以下の3つのアプローチを実施しています。
2019年には熊本テクノロジーセンターに5,760枚の太陽光パネルを導入し、発電量124万kWh/年の大型設備を運用開始。また、水力発電・地熱発電により生み出された電力を利用することで、可能な限り化石燃料によって発電された電力を利用しない姿勢をとっています。
上記アプローチの3つ目にある「グリーン電力証書」は、再生可能エネルギーにより得られた電力の環境価値を証書にし、環境価値の販売・購入を可能にしたものです。同社はこれを開発し、再生可能エネルギーの普及促進の新たな方法を創出しました。
環境保全や省エネルギーに対する配慮が、長期的には企業へ利益をもたらすのだと考えられる昨今、RE100の加盟は事業活動において大きな意味合いを持ちます。
これは、巨額な投資資金を運用する機関も個人投資家もESG投資に舵を切り、一般消費者さえも「サステナビリティへの配慮」を購買の動機にしている現状を見れば明白です。 また、大規模な多国籍企業のみ参加できるRE100だけでなく、日本の中小企業を対象とするRE Actionが発足されたいま、再生可能エネルギーの普及促進に関する枠組みは多くの企業に開かれています。いまこそ、企業は環境問題に向き合い、自社の事業活動とサステナビリティの両立を考えるタイミングではないでしょうか。
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