2030年の脱炭素化での数値目標、それを企業が中心でブーストするとすれば、官民挙げて次世代の産業構造への転換が必然ってことは、たとえ小泉前環境相に言われなくてもあたりまえ体操なのだ。今回もDX(デジタルトランスフォーメーション)を語らせたら、彼の右に並ぶ人はそうそういないだろうという平井氏が、予測し俯瞰で視た、脱炭素の課題と実現可能性をエナシフ読者諸氏にお届けしていく。
前回記事の通り、海外ではテスラが仕掛け人となってEV化の流れが急速に進み、従来型の自動車会社だけでなく、新興系EVメーカー、エネルギー会社や運送会社、ひいては小売業などの商業施設までもが一気に参入してきています。
一方で日本はどうかというと、国内の主要メーカーは長年の間ハイブリッド技術に多大な投資をしてきたこともあり、化石燃料動力の車両生産の禁止が発表されている欧州のようなスピード感でEVシフトが進むかどうかはまだ微妙かもしれません。また、都市部では既に多数の欧州車が走っている一方で、郊外では国産車が中心であることから、エリアによって状況も少し異なるのではないかと思われます。
とはいえ、一消費者としては、EVの車種の選択肢が増えるだけでなく、利用方法もさまざまに広がることが見込まれます。また、需要の増大とともに製造コストも一段と下がり、よりEVを利用しやすくなるでしょうし、インフラ面も急速に追いついていくことでしょう。そういった近未来がもう目前にあるわけですから、これからが楽しみですね。
さて、日本政府が「2030年度に温暖化ガス排出を2013年度比で46%減らす」という方針を発表したのはご存知の通りかと思います。従来の目標は「2030年に26%減、2050年に80%減」でしたが、これを「2030年に46%減、2050年に脱炭素化」と大幅に引き上げました。地球温暖化への対応は待ったなしだ、というメッセージを強く印象付けた、非常に象徴的なアナウンスだったと思います。
そして、2021年7月には、46%削減目標の内訳も発表されました。必要な削減量の3~4割は再生可能エネルギーによる代替で捻出し、残りは企業や家庭の省エネを通じてエネルギー消費自体を抑えるという、なかなかざっくりとした内容です。部門別の削減目標は、産業部門で37%、家庭部門は66%、運輸部門で38%、業務その他部門で50%。これを8年強で実現するということなので、ちょっと本当にできるのかな・・・と懸念してしまう部分もありますが、これは国が各産業へ明確に「期限」を突きつけた、と言えるでしょう。
私は政治や政策分野のエキスパートではないため、あくまで一市民としての感覚ですが、人口減や少子高齢化を背景に、国の財政に明るい兆しがなかなか見えない中、このような地球規模かつ国際協調面でも重要な環境政策は、税収という観点とも密接に絡んでいくのではないかと感じています。
温暖化ガスの削減目標は、当然のことながら、モビリティ文脈ではかなり重要なお話です。
国土交通省によると、国内のCO2排出量のうち、自動車は全体の約16%を占めています。このうち、自家用乗用車がざっくり6割弱、営業用貨物車と自家用貨物車を合わせてざっくり4割強となっており、これらの排出量をこれから8年強で38%減らさないといけない、というわけです。
ちなみに、2020年の日本国内の新車販売シェアは、純粋なガソリン車が約7割弱、残りの大半がハイブリッドカーと言われていますが、2030年には、このガソリン車のシェアは現在の約半分になると言われています。ガソリン車だけで約50%のCO2排出量の削減が実現できるわけで、数字だけで見ると、確かに「運輸部門全体で38%削減」というのは実現可能にも思われます。
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