二酸化炭素のネットゼロに向け、電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の世界市場は確実な成長が期待されている。航続距離が長いBEVの生産には、容量密度の高い三元系リチウムイオン電池(LIB)の搭載が必要だが、そのことが希少金属(レアメタル)であるコバルト需要を押し上げている。採掘可能なコバルト資源は車載LIB とBEV・PHVの急拡大を支えられるのか? 週刊「レアメタルニュース」編集長の吉竹豊氏が、自動車会社はコバルトの資源問題にどう対応しているかを追ってみた。
先進諸国が2050年までに二酸化炭素のネットゼロ(排出と吸収の均衡)を達成し、中国も2060年までにネットゼロを達成すると表明する中、電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といったいわゆる新エネルギー車の成長が確実視されている。2050年までに世界の二酸化炭素の排出を事実上ゼロにするシナリオ(例えば、国際エネルギー機関=IEAによるNZE)を達成するには、劇的な排出削減策が求められる。
BEV・PHVなどの世界市場(図1)は2020年に298万台で前年比41%増えるなど、2015年からの5年間で5.4倍に急増。自動車販売に占める割合は4.6%に拡大。2021年から年率31%成長し、2025年には1,143万台と2020年の3.8倍増が予測されている。2026年からさらに年率14%成長し、2030年には2,243万台と5年間で倍増し、2020年にくらべると7.5倍と急増する。自動車販売に占めるシェアは2025年に10%、2030%には15%に達するという。
図1:EV・PHVの世界市場(万台、IEA)
出所:IEA
2021年の新エネルギー車の販売台数は、EUが1〜9月時点で158万台と前年同期の2倍。中国も1〜11月時点で299万台と前年同期の2.7倍と急増(図2)。EU・中国だけで500万台超えの見込みで、2025年に1,143万台というIEA予測を前倒しで達成できる可能性もある。自動車販売に占めるシェアは、EUが7〜9月に21%に達し、中国が8〜11月に16〜17%台に達するなど、一部の地域では普及のペースが早まっている。
図2:中国のNEV市場(中国汽車工業協会)
出所:中国汽車工業協会
LIBの生産量を左右するコバルト資源の状況は・・・次ページ
モビリティの最新記事