1月4日、機運の高まる電気自動車(EV)業界に新風が吹いた。この日、米国ラスベガスで開催されていたテクノロジー展「CES」において、ソニーグループの吉田憲一郎社長が、EV事業のための新会社「ソニーモビリティ株式会社」を設立し、販売を含む事業の本格化に取り組むことを明かした。
実は、こうした異業種からのEV参戦はソニーだけにとどまらない。米国Apple、中国ファーウェイなど、世界の一大企業が続々と参戦を表明している。
この異業種からのEV参戦状況とその背景について、本記事ではまとめていきたいと思う。
実は、20年以上前から自動車開発に携わってきたソニーだが、EV参戦の動きを最初に見せたのは2020年のCESで、その際に「VISION-S」という名称の試作車を公開している。
この時点では、EV開発は車用センサー技術の開発の一環として行われたことが報じられており、それだけに今回の本格的な事業化発表が衝撃となった経緯がある。
今回、ソニーが新会社の設立と共に発表したのは、VISION-Sの新型車両となる多目的スポーツ車(SUV)の「VISION-S 02」。前作VISION-S 01と共通のEV/クラウドプラットフォームを採用しながら、7人乗りの広さも確保したモデルとなる。また、移動空間をエンタメ空間にすることを目標に掲げるソニーなだけあって、「Safety Cocoon」コンセプトと名付けられた内部空間には人間の視覚以上のセンシング技術が施されており、安心・快適空間をもたらすという。
出所:ソニーHP
さらに5Gを含めたデータ通信によって車両とクラウドシステムを連携し、車両設定やキー施錠を行えるばかりか、リモート運転も視野に入れている。
こうした内部構造やIoT技術においては、まさにソニーの培ってきた技術が反映されている一方、車体製造に関しては多くの部品会社との協業が必要だ。例えば、車体はオーストリアの大手自動車部品メーカーであるマグナ・シュタイアなどとの協業によって製造された。異業種からのEV参入が増えれば、「車作り」のノウハウを積んできた既存の部品メーカーの事業構造にも影響を及ぼす場面も出てくるだろう。
そうした、大きな波紋を広げている異業種からのEV参入。米国のApple、中国のファーウェイ、台湾の鴻海(ホンハイ)などが、その動きを見せていることはすでに多くの場で報道されている。
中でも飛び切りの知名度とブランド力を誇るのはAppleだが、EV参入の話題が持ち上がると共に注目されているのが、自動運転機能の実現だ。Bloombergが報じたところによれば、ハンドル操作や加速を補助する限定的な自動運転機能と、人間の手による作業を一切必要としない完全自立運転モデルの二方向で進んでいるとのこと。それゆえ、後者においてはハンドルやペダルもない車内設計というのがAppleの理想だという。そのうえで、同社は2025年の発表を目指しており、単なるEV参入とは異なるハードルを、本当に超えられるのかという点も注目されている。
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