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京都大学、古河電気工業 高温超伝導の交流損失を20分の1に低減 脱炭素への貢献に期待

京都大学、古河電気工業 高温超伝導の交流損失を20分の1に低減 脱炭素への貢献に期待

2021年11月17日

11月16日、京都大学と古河電気工業は、高温超伝導線の交流損失を標準的な薄膜高温超伝導線に比べて約20分の1に低減することに成功したと発表した。

超伝導とは、電気抵抗がゼロになる現象をいう。超伝導になる温度が絶対温度25K(−248.15℃)以上の物質は高温超伝導体、それ未満のものは低温超伝導体と呼ばれる。送電時のロスがなくなるため、夢の技術として世界中で研究開発が行われている。

高温超伝導は、液体水素の温度(20K)や液体窒素の温度(77K)環境下では電気抵抗がゼロになり、非常にロスが少なく電流を流せる。このことから、モーターなど電気機器の高効率化・軽量化・コンパクト化に役立ち、脱炭素への貢献が期待されている。しかし、交流の磁界の下で使ったときに発生する「交流損失」が、高温超伝導線を電気機器へ応用する上で障害となっていた。

交流損失とは、磁束が細い線となって超伝導体の中に侵入し移動するときに発生する摩擦発熱のようなもので、交流損失が大きいと、超伝導線の温度が上昇して超伝導状態を保てなくなる可能性があるほか、除熱のために必要な電力により、電気機器の効率が低下してしまう。また、超伝導線は、超伝導状態が破れにくい「安定性」と、超伝導状態が破れても線自体の損傷に至らない「保護性」を備えている必要があるが、これまで交流損失を小さくすることと安定性・保護性の両立は難しかったという。

今回の研究では、高温超伝導線の薄膜状の超伝導体を細いフィラメントに分割し、その上に銅をめっきしたマルチフィラメント薄膜高温超伝導線を細いコア(芯材)のまわりに、スパイラル状に巻くことで、超伝導体の中に侵入した細い磁束の線(磁束量子線)の移動距離を抑えた。

これにより同研究チームは、安定性・保護性を備えつつ、標準的な薄膜高温超伝導線に比べて交流損失を約20分の1に低減させることに成功した。

2社はこの技術を適用したSCSCケーブル(ダブルSCケーブル)と名づけられた新開発の導体の開発を進めており、高温超電導を使った電気機器の実用化をめざす。今後は、航空機や船舶などへの利用が期待されるほか、風力発電機の軽量化への貢献も期待されている。

EnergyShift編集部
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