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今次電力需給逼迫を考える 根は制度不備、主因は電源トラブル(第2回)

今次電力需給逼迫を考える 根は制度不備、主因は電源トラブル(第2回)

2021/03/23

2020年12月中旬から2021年1月下旬にかけて(以下当期)、電力需給は逼迫(ひっ迫)し、卸市場価格は超高値に張り付いた。政府・審議会や民間シンクタンクなどで、今回の事件についての検証が行われている。エネルギー戦略研究所 取締役研究所長の山家公雄氏にも、この事件を検証し、原因を考察していただいた。(第2回)

第1回はこちら

2. 異常事態だった卸取引市場 1ヶ月も売り不足

以上のように、電源トラブルを最大の契機として、供給不足が1ヶ月続いた。マクロの動きは第1回の通りであるが、個々の場面や現場では、懸命な努力により、何とか予備率3%を維持し、強制的な需要節減は辛うじて免れた。一方、卸取引市場は輪をかけた混乱に陥り、市場参加者は五里霧中のなかで調達ができず、市場価格は超高値で張り付き(図2)、インバランスが積み上がり、市場からの調達者は巨額の損失を強いられた(図2)。以下で、卸市場に焦点を当てて検証していく。

図2 スポット市場 システムプライスの推移(2020/12/15~2021/2/5)コマ毎価格

スポット市場 システムプライスの推移(2020/12/15~2021/2/5)コマ毎価格
(出所)電力・ガス取引監視等委員会「スポット市場価格の動向等について(2/5/2021) 色字は筆者追加

2.1 「旧一電市場」は主役 「卸取引市場」は脇役

関西電力など旧一般電気事業者(旧一電)は電力取引において圧倒的な存在感がある。電源の8割、販売量の8割を占め、市場支配力があることは周知の事実であり、前提となっている。2020年4月より送配電部門は法的に分離されたが、発電と小売りは一体となっており(発販一体)、取引は内部取引と相対契約が主となっている。

相対取引自体は海外でも多いが、リスクヘッジを理由とする金融取引が主である。一方、日本は現物取引が主であるが、この背景として「先着優先ルール」により送電線利用の制約を意識する必要がないことを挙げることができる。

その結果、卸取引市場は、「原則あらゆる取引が通過する場」とはなっておらず、「旧一電の供給力の余りが売られる場」となっている。すなわち、旧一電取引が「電力市場の主役」であり、「卸市場取引は脇役」に甘んじるという歪んだ形である。

今回、卸市場の売り札が長期にわたり不足する(完売する)という異常事態が生じたが、その説明として繰り返し登場しているのが図3である。ミクロの活動としてはその通りであるが、9社で8割を占めることを考えると、この図は非常に違和感がある。日本の特異な市場構造が当然の前提として登場し、刷り込まれる懸念がある。

図3.旧一電 卸市場入札可能量の全体像

旧一電 卸市場入札可能量の全体像
(出所)電取委「スポット市場価格の動向等について(2021/2/5)に加筆

さて、図3であるが、旧一電の供給力から① 社内小売り・相対卸、② 一送電への調整力(予備力)供給、③ 停止・出力低下を引いた残りが卸市場への主要な供給元となる構図となっている。

今回は、①~③全て増えている。① は気温低下に伴う需要増、② は調整力不足によるTSO向け割り振り増し(TSO供給指示)、③ は石炭を主とする計画外停止および燃料制約によるLNG火力の出力低下である。

主因としてトラブルに伴う発電停止が挙げられることは、前述の通り。加えて旧一電および一送電自らが卸市場で直接・間接の買い手となり、旧一電は一ヶ月にわたり買い越しとなった。

こうして卸市場は、売り札が減り(干上がり)、機能は大きく低下した。「旧一電市場」が逼迫し、調整力不足で逼迫が加速し、「卸取引市場」に増幅して伝播し、小規模の卸市場は大混乱に陥った。図3は日本の構造を理解するのに分り易いが、構造的な課題を抱えていたことを裏付けてもいる。

卸取引市場経由の取引は3~4割まで上がってきたと説明される。しかし、約2分の1は旧一電の「売り買い両建て」であり、旧一電の余剰分が売り札の太宗となり、旧一電が逼迫・不足すると余剰は出てこない

今回、旧一電は供給不足となり、買い越しとなった。また、なけなしの余力は一送電(TSO)に回った(召し上げられた)。

2.2 旧一電の協力で存在感を発揮した「一送電市場」

今回の特徴は、早い時点でTSOの調整力が不足し、「ラストリゾート」としてなりふり構わず「調整力」をかき集めに走ったことである。「禁じ手」も見られるが、「致し方ない」として事後承諾されようとしている

TSOは、卸市場で売られるはずの電力を先取りした。すなわち燃料制約により卸市場に出ない電源から、電源Ⅱとして市場閉場後に購入した。また、卸市場から直接調達した。

すなわち「再エネ予想乖離用として認められた電源Ⅱ予約」を純粋調整力不足に準用したり、「電源Ⅰ(揚水)を動かす電源」を提供者に卸市場から調達させたりした(図4、5)。

図4.調整力確保量と市場供出量の関係(イメージ)

調整力確保量と市場供出量の関係(イメージ)
(出所)資エ庁「今冬の電力スポット市場価格高騰に係る検証について」(2/17/2021)

図5.今冬の需給ひっ迫状況(関西エリア)

今冬の需給ひっ迫状況(関西エリア)
(出所)関西電力送配電㈱「今冬の需給ひっ迫時における対応」(3/2/2021)を加工

事後的に一応辻褄をつけているが、「旧一電の協力」の下に、動かしうる電源を手当たりしだい調達したというのが実態と思われる。この旧一電の協力は、大規模災害発生時等の緊急事態において容認される「行為」であるが、今回のような数年ぶりの低温にも準用されようとしている。

2.3 卸市場と調整力市場の分離 弱かった12月15日の調整力不足シグナル

TSOの調整力不足という異常事態は初期の時点で発生していた

12月15日に関西が広域機関に要請しTSO間融通が実施された。関西TSOは自身でも追加調達を図ったが全く及ばなかったということである

同日は、関西が受電側で東京以西の全てのTSOが送電側となる。広域機関をはじめ関係するTSOはこの情報をHPにアップしてはいるが、警報を鳴らしてはいない。このときより広く危機感を共有していれば、その後の混乱と負担を軽減できた可能性がある。

また、同日の卸価格はさほど上がっていない(上図2)。本来は、電力量不足がありそして調整力不足となる。卸価格が上がりそして調整力価格(アンシラリー価格すなわちインバランス単価)が上がることになる訳であるが、非常事態に相応しいシグナルが出ていない。これは、卸市場と需給調整市場が分離している、相関性が高くないことを意味する。

2.4 卸価格≠調整力買取価格≠インバランス単価

需給調整市場は創設されておらず、その暫定制度ともいえる「調整力公募」により1年前に契約が済んでおり、実際に稼働する際のkWh当り価格は実需給時の情勢を反映したものではない。

追加で卸閉場後に調達する調整力(電源Ⅱ)は直近の需要を反映すると考えられるが、TSOとの相対取引であり水準は不透明である。

一方、現状のインバランス単価は、卸市場価格を変数とする一定のフォーミュラで決まる「暫定価格」である。この人為的に決められるフォーミュラは、現実と齟齬が生じるたびに変更され、分り難いものとなっていた。

要するに、調整力の市場価格は不透明だったのであり、しかも当期は調整力(ΔkW)と電力量(kWh)の区別が曖昧だった。

この指標不在ともいえる「暫定需給調整市場」が主役となってしまい、卸市場の混乱に拍車をかけた

(明日に続く)

 

全体目次

1. 今回の需給逼迫要因は、気温の低さでも燃料不足でもない
 1.1 主因は電源トラブル
 1.2 調整力不足から始まる奇異
 1.3 どうして西日本が不足したか
2. 異常事態だった卸取引市場 1ヶ月も売り不足
 2.1「旧一電市場」は主役 「卸取引市場」は脇役
 2.2 旧一電の協力で存在感を発揮した「一送電市場」
 2.3 卸市場と調整力市場の分離 弱かった12月15日の調整力不足シグナル
 2.4 卸価格≠調整力買取価格≠インバランス単価
3. まとめと考察「平時の一ヶ月逼迫」の根本原因は市場支配力放置 (3月24日公開予定)

山家公雄
山家公雄

エネルギー戦略研究所㈱取締役研究所長、京都大学特任教授、豊田合成㈱取締役、山形県総合エネルギーアドバイザ- 1956年山形県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。電力、物流、食品業界等の担当を経て、2004年環境・エネルギー部次長、調査部審議役等を歴任。2009年より現職。融資、調査、海外業務などの経験から、政策的、国際的およびプロジェクト的な視点から総合的に環境・エネルギー政策を注視し続けてきた。 著書は、「日本の電力ネットワーク改革」2020年、「日本の電力改革・再エネ主力化をどう実現する」2020年、「テキサスに学ぶ驚異の電力システム」2019年、「第5次エネルギー基本計画を読み解く」2018年、「アメリカの電力革命」2017年編著、「再生可能エネルギー政策の国際比較」2017年編著、「ドイツエネルギー変革の真実」2015年、「再生可能エネルギーの真実」2013年、など多数。

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