前回まで、日立製作所(以下、日立)の脱炭素の全体戦略、スコープの削減について見てきた。最終回の今回は、サプライチェーンの炭素削減についてみていく。
日立の温室効果ガス排出量全体から見て、スコープ3の上流に当たる「購入した製品・サービス」は9.1%になる。ここを含むサプライチェーン全体の削減をどうすすめていくか。ここは、自社やユーザーの削減とはまた違う難しさがある。
日立ではグリーン調達ガイドラインを従来からつくってきた。2021年7月に発行した最新版では、最新の各種指針を盛り込んだものになる。
この中に、「エネルギー消費および温室効果ガスの排出」の項目があり、下記のように書かれている。
“貴社は、全社規模の温室効果ガス削減目標を設定しなければなりません。エネルギー消費およびすべての関連するスコープ1および2の温室効果ガスの排出を、追跡、文書化し、温室効果ガス排出削減目標との比較を外部公表しなければなりません。貴社は、エネルギー効率を改善し、エネルギー消費および温室効果ガスの排出を最小化する方法を追求しなければなりません。”
(日立サステナブル調達ガイドラインより)
こうしたガイドラインをつくり、通達するだけではもちろんなく、重視しているのはサプライヤーとの丁寧な会話による理解促進だ。
一番重視されるのは、やはりグリーン調達にかかるコストアップだ。
「説明会でもコストに関しての質問がありました。将来的には、日立として技術的な支援や、省エネ施策を協力・提案することで、双方にとっていいことを考えていきましょうと考えています。そうはいっても、いきなりCO2ゼロの電力は当然難しい。当社の目標も、サプライチェーン全体のカーボンニュートラルは2050年です」(日立サステナビリティ推進本部の久保勉氏)
サプライヤーのうち、調達額が一定以上のパートナーには別途CO2削減計画策定の依頼を別途、個別に依頼し、ひとつひとつ同意を得る作業をしている。
「再エネ電力を安く導入できるとか、省エネ診断をしたりとか、補助金の情報共有をしたり、今後さまざまなことを提案する必要があると考えます」(久保氏)。
海外のように「未達企業は契約見直し」などは、日本ではありえないと久保氏はいう。
「いっしょにやっていく、というスタンスが必要です。サプライヤーとしても競争力を高めるということで、技術的な省エネを支援するなど、状況に合わせて推進することが肝要です。サプライヤーと一口にいってもエネルギー消費はそれぞれです。それはメニューとして提供していこうと考えています」。
まずはティア1からはじめる。ティア2、3は非常に広くなっていくので把握しきれるのかという問題もでてくる。ここは国の制度整備も関連してくる。
サプライヤーがまず手を付けるべきは自社のエネルギー使用量を計測・分析をして、設備の使用効率をあげること。これが炭素削減にきくという。
ただ、それもシステムを入れるだけではなくそれを使う人材も重要だ。「どんな人がいるのか、それを日立がどうサポートするのか。売り切りはあり得ないとわたしは思っています」(久保氏)
一方、デマンドレスポンス、ネガワット取引はまだコスト的に難しいとのことだ。
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