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系統用蓄電池

系統用蓄電池、気になるのは、どんなメーカーが活躍しているの?

系統用蓄電池に必要なサイズは

 

 電気を取引する卸市場は、日本卸電力取引所(JEPX)というところにある。ここで、発電事業者や小売事業者などが電気の売買を行っている。基本的には、翌日24時間分の電気の取引が前日の朝の10時までに決まる。

 系統用蓄電池を運用する事業者も、このJEPXで売買をすることになる。とはいえ、売買の単位は基本的には1,000kW×30分(500kWh)という単位。しかも、最低でも3時間分の電気を蓄電するのが目安なので、3000kWhの電気をためることになる。すなわち、系統用蓄電池もこれに対応できる大きさが必要ということだ。

 そして、系統用蓄電池事業で最大限の収益を上げるためには、適切な蓄電容量の蓄電池を適切なコストで選ぶことが必要となる。そうした選択が、事業の成否を左右する。

 住宅用蓄電池はおよそ出力が1.5kWから3kW、蓄電できる電気の量がおよそ10kWh程度なので、系統用蓄電池は、およそ住宅用蓄電池の300倍くらいのサイズが必要(もちろん、小さい蓄電池を組み合わせて使うことも不可能ではない)。

 

 そこで気になるのが、系統用蓄電池として使用できるサイズの蓄電池にはどのようなメーカーがあるのか、ということ。そして、どのメーカーを選択すればいいのか、ということだ。

 

テスラのメガパックは品薄状態

 

 系統用蓄電池のメーカーとして世界的に最も有名なのは、おそらくテスラ。あの、イーロン・マスク率いるテスラである。確かに、EVも系統用蓄電池も蓄電する点では同じである。

 テスラの系統用蓄電池は、メガパックという名称で市場に供給される。1ユニットあたりの出力は1,500kW程度だが、パワーコンディショナーによって調整できる。一方、蓄電できる容量は3000kWhだ。

代表的な導入事例としては、オーストラリアで世界最大級の設備が設置されており、212ユニット、35万kWの設備となっている。60万kWh以上の蓄電ができる計算だ。

 もちろんテスラのメガパックは米国でも使われている。最近では、P&Gが再エネ利用を拡大するために、カリフォルニア州で256ユニットの蓄電池を設置した。実はカリフォルニア州は米国においてもっとも太陽光発電の設置が進んでおり、系統用蓄電池だけではなく、再エネ発電所併設用の蓄電池も含めて、大規模な開発が続いている。2045年までには、4,900万kWの蓄電池が必要になるとされており、こうしたこともあって、テスラはカリフォルニア州にメガパックの工場の建設を考えていると報じられている。

https://www.eia.gov/analysis/studies/electricity/batterystorage/pdf/battery_storage_2021.pdf

*米国エネルギー情報局による今年の導入量予測。CAISOがカリフォルニア州のエリア。

 

 日本でもメガパックを設置したケースがある。茨城県つくば市にある高砂熱学イノベーションセンターが2021年に自家用設備として設置したのが最初のケースだ。また、系統用蓄電池としては、ミツウロコが北海道に約3,000kW/1万2,000kWhの設置を行っている。

 とはいえ、このメガパック、品薄状態とされており、ある事業者は当初の予定を変更し、別のメーカーに切り替えたという。早期に品薄が解消されることが期待される。

 

日本市場での拡大をねらうファーウェイとCATL

 

 系統用蓄電池のメーカーのうち、日本市場に最も熱い視線を注いでいるのが、中国のファーウェイだろう。系統用としては、蓄電できる容量が2,000kWhの機種がある。系統用蓄電池の市場は日本ではまだ始まったばかりだが、再エネに併設するものとして、テス・エンジニアリングが採用を決めたほか、九州電力グループのニシム電子工業も採用している。

 ファーウェイはこれまで日本市場で太陽光発電を販売してきたが、そのネットワークを利用して、投資家に系統用蓄電池の事業の提案も行っている。

 

 一方、世界最大の蓄電池メーカーといえば、同じく中国のCATLだ。とはいえ、日本市場では、CATLとして参入するのではなく、別の会社と提携して参入している。その1つが、中国系企業の日本法人であるTAOKE ENERGYで、同社はこれまで太陽光発電の監視装置などを扱ってきたが、こうした技術を系統用蓄電池に応用し、内部にCATLの蓄電池を組み込んだ製品を開発している。1ユニットあたり、最大で出力は5,000kW、蓄電できる容量は1万1,900kWhの製品を開発している。また、水冷式の蓄電池ラックを採用していることも特長で、蓄電池コンテナに不可欠な温度調整のためのエネルギー消費を減らしている。

 実は、テスラのメガパックに組み込まれている蓄電池もCATL製。CATLは影の実力者といったところだ。

 

日本企業はTMEIC、そしてパワーXに注目

 

 日本企業も系統用蓄電池の分野では負けていない。さまざまな企業が取り組んでいるが、先行しているのは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)だろう。

 やはり日本のユーザーにとっては、日本製が安心できる、というのはよく聞く。確かに、メガパックはオーストラリアでもカリフォルニアでも火災を起こしているので、それに比べると不安は少ないと思う人もいるだろう。

 TMEICの系統用蓄電池は、カタログでは1ユニットで最大が出力3,000kW、蓄電できる容量は1,000kWhとなっている。ちょっと小型のように感じるかもしれないが、複数のユニットを組み合わせれば問題ない。

 

 日本を代表する蓄電池メーカーのGSユアサも、この分野をねらっている。産業用リチウムイオンバッテリーの生産は、以前から行っており、系統用蓄電池の納入の実績もある。とはいえ、市場においては他社よりも出遅れ感が否めない。そうした中、全固体リチウムイオン電池の開発を進めており、逆転を狙っている。

 

 日本企業で最近注目を集めているのは、スタートアップのパワーXだ。長期的には、蓄電池を搭載した電気輸送船の製造と運用を目指しているが、そこに至る前に、大型蓄電池を発売するということだ。

 1ユニットの蓄電できる容量は3,000kWhとなっており、テスラのメガパックにひけをとらないサイズだ。しかも、価格はストレージパリティが達成可能なレベルだとしています。これは、系統用蓄電池として使うのではなく、太陽光発電の電気をそのまま充電して使用しても、一般的な電気料金と遜色なく使えるということを意味する。発売開始は2024年5月とのことだが、その時点で工場の生産ラインがフル稼働しているわけではないので、数量限定でスタートするとしている。

 

 この他にも、パナソニックなど日本には蓄電池メーカーがある。こうした企業は、本格的に自社ブランドで系統用蓄電池市場に参入してくることが期待される。

 

世界第2位は韓国系メーカー

 

 アメリカの市場でテスラに対抗する系統用蓄電池の大手といえば、韓国系のLG化学の子会社であるLGエネルギーソリューションだ。シェアはほぼ互角といっていい。

 実は韓国はかつて、蓄電池を対象としたFIT(固定価格買取制度)があった。これは、LGエネルギーソリューションやサムスンSDIなど自国の蓄電池産業を育てるための政策だったが、これによってLGエネルギーソリューションズが世界市場で成長したということになる。もちろん、サムスンSDIも負けているわけではない。

 日本では、系統用蓄電池としては、あまり韓国メーカーの名前は聞かないが、住宅用蓄電池では日本のメーカーと提携して参入しており、産業用の蓄電池も日本の電機メーカーに使用されています。

 これらがあらためて自社のブランドで日本市場に入ってくるということもあるだろう。

メーカーの特徴を図にまとめると、以下のようになる。

 

 

 

系統用蓄電池でチェックすべき3つの点

 

 ここまで、系統用蓄電池のスペックとして、主に出力と蓄電できる容量を主に紹介してきた。しかし、実は系統用蓄電池でより重要な性能は、劣化のしにくさと充放電時のロスだ。リチウムイオン蓄電池は、使用しているとだんだん劣化し、蓄電できる容量が減ってくる。これは一般的に多くの人がパソコンやスマートフォンで経験していることだ。

 

また、蓄電池に充電するときや放電するときに電気の損失がある。これは電池の性能というよりも、パワコンの性能が大きく左右するが、こうしたロスも少ない方がいい。また、蓄電池の適切な運用にあたっては空調が必要だが、そのために使われる電気もロスに含まれる。なお、揚水発電における充放電時のロスは3割といわれている。蓄電池におけるロスはこれよりも小さい。

とはいえ、各メーカーの蓄電池がどれほど劣化しにくいかということは、カタログだけではわからない。というのも、実際に運用した経験が少ないからだ。また、劣化は蓄電池の性能だけで決まるわけでもない。蓄電池の状態を常に監視し、劣化を防ぐように運用していくことが重要だ。さらに、限られた充放電回数で、いかに利益を出していくのか、ということも求められる。これは充放電のロスについても同様だ。

まとめると以下のようになる。

 

系統用蓄電池の性能で重視する点

・蓄電容量あたりのコスト(価格)

・劣化のしにくさ

・充放電時のロス

 

 

afterFITでは最適な蓄電池を選択し、最高のパフォーマンスで運用

 

 系統用蓄電池は拡大する再エネを安定した電気として使うために必要な設備だ。そのため、今後も設置を拡大させていくことが求められている。

 afterFITでは、大規模な太陽光発電所の土地開発から資材調達、施工、運用管理を数多く手がけてきた。電力の取引に関しては、系統用蓄電池と同様に、安い電気を仕入れて高い時間帯に売ることができる揚水発電所の運用も手がけており、多額の収益を上げることに成功している。

 蓄電池についても、使用するエリアの系統の空き状況や期待される価格差、予想される年間の充放電回数など様々な条件を考え、最適な蓄電池を選択している。

また、需給の予測や管理などが簡単に行えるツールを使用しており、運用の最適化も実現。

 事業用の大型蓄電池のメンテナンスもこれまでの経験に基づいて、24時間監視体制のもと、安全安心の運用をサポートしている。

 

このような業務の中で培った専門的なノウハウや知識を活かし、afterFITでは「系統用蓄電池を導入したい」とお考えの法人・個人に向けて、用地の土地開発から蓄電池の設置、運用をサポートしている。

 

通常、蓄電池の設置ができても運用は自社で行う必要があるが、afterFITであれば運用も対応できる。また土地が見つかっていない場合、当社の不動産開発チームが適地探しからサポートすることも可能だ。サービス内容を他社と比較すると以下のようになる。

今後、エネルギー業界には系統用蓄電池が欠かせない。そして今は参入する企業が非常に少ないため、事業化するには非常にチャンスである。導入をご検討中の方、当社のサポート内容や導入費用などを知りたい方は「系統用蓄電池システムと市場運用委託パッケージプランのご紹介ページ」へ。

 

 

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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