Amazon、三菱商事と再エネ網というニュースの裏側を解説 | EnergyShift

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Amazon、三菱商事と再エネ網というニュースの裏側を解説

Amazon、三菱商事と再エネ網というニュースの裏側を解説

2021/09/09

アマゾンが日本で再生可能エネルギーを調達するために450ヶ所もの太陽光施設を作る、というニュースが巷を騒がせている。しかし、このニュース、450という数字ばかりが取り沙汰され、重要な部分が解説されていない。実は、そこにこそ、日本企業が知るべき真実が隠されている。その真実とは何か。ゆーだいこと前田雄大が解説する。

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隠された5つの論点

脱炭素に取り組む日本企業が増える中、多くの企業が非化石証書の購入で達成しようとしている。

こうした中、アマゾンは三菱商事と組み、再エネ網を国内につくると発表した。そこで、まずは両者の取り組み概要を説明した上で、次の5つの論点から日本企業が知るべき、アマゾンの本当の狙いを解説していきたい。

  1. アマゾンが再エネを調達する理由、そしてアマゾンが調達で使ったPPAスキームとは何か
  2. アマゾンが世界で買いあさる再エネの現状
  3. 発電所の建設によって景観などへの影響はないのか
  4. 実は、アマゾンにとってパフォーマンスに過ぎない
  5. アマゾンの行動が日本のビジネスセクターに示唆するもの

それでは、アマゾンと三菱商事が再エネ網を、というニュースの概要から紹介しよう。

2者提携の概要とは

両者は提携によって、450ヶ所以上の太陽光発電所網を国内でつくり、三菱商事がその開発を主導、ここからできた電力を、アマゾンのデータセンターなどに10年間にわたり供給するという。

今回の形態は、アマゾンが発電事業者から再エネ電力を直接購入する「コーポレートPPA」という形態をとり、日本で最大規模のPPAであるとも報じられた。

その形式だが、プロジェクト自体は三菱商事の電力小売事業子会社の「MCリテールエナジー」が主導し、太陽光発電大手のウエストホールディングス(HD)が開発を受託、建設を担当する形となっている。

このウエストHDが450ヶ所以上の太陽光発電設備を国内につくり、2022~2023年にかけて順次稼働を開始する予定だ。発電した電気は三菱商事が集約し、アマゾンのデータセンターなどに供給する。

発電容量規模としては、合計22MWの太陽光発電プロジェクトになり、すべての設備が稼働すると、プロジェクト全体で年間23,000MWhの再エネを発電できるようになり、日本の一般家庭5,600世帯分以上の電力に相当するという。

多くのメディアが、アマゾンと三菱が提携! 太陽光発電所が450ヶ所も! 日本最大規模のPPA! という形で報じた。たしかにインパクト大だ。

しかし、この提携が意味するところは別にある。ビジネスセクターの読者の理解が深まるよう、まずは、「アマゾンが再エネを調達する理由、そしてアマゾンが調達で使ったPPAというスキームとは何か」、そのメリットを解説していきたい。

なぜ、PPAというスキームで再エネを調達するのか

世界的な脱炭素の潮流から、日本も2050年カーボンニュートラルを宣言し、さまざまな企業が脱炭素を宣言し始めた。また、コーポレートガバナンス・コードが改定され、脱炭素に取り組まなければと、感じている人も多いだろう。しかし、脱炭素においては、世界は日本の何周も先行している。

一つは気候変動由来の環境的側面からだが、もう一つは、再エネが急速に安くなり、エネルギーを自給できるという安全保障的論点も組み合わさり、産業革命以後に構築されてきたモデルが、いま根底から一新されようとしている、という経済的、かつ安全保障的要素がある。非常に大きな変革になる、と世界は気づき動いているからだ。

むしろ、いまの潮流をリードしているのは国家よりも、グローバル企業だといえる。なぜなら生存競争にかかわるからだ。TCFDなどは分かりやすいが、気候変動の進展もさることながら、脱炭素の進展も企業にとっては「変化」という意味でリスクであり、この変化を先どりできるかどうかに、企業の未来がかかっている。

投資家は、企業がこうしたリスクをしっかり把握し、対応できているか、見ており、ESG投資のボリュームが増えている。その中で、脱炭素が含まれるEの要素が極めて重視される、という流れにある。

脱炭素への流れは、アメリカの世界最大の投資会社、ブラックロックが2020年、2,500兆円の運用総額を超える投資家たちにアンケートを取った結果にも如実に表れている。

企業存続的観点もさることながら、世界においては次の図のとおり再エネの値段が急速に下がっており、電力の調達という意味でも、コスト削減につながる。しかも、世界的には、炭素にはカーボンプライシングがかけられ、将来、コストが上がるのが目に見えている。


出典: IRENA

であれば、「早めに再エネを安定的に囲い込もう」となる。もう電力会社を介するよりも、直接、発電事業者から直買いした方がよくない? 出元を全部押さえた方がよくない? となるわけだ。

長期契約で金額保証をすれば、発電事業者としてもありがたい。需要家サイドは、脱炭素ブランディングもでき、出元から調達することでエネルギーの安定供給も確保できる上、化石燃料のコスト上昇などの外部要因も排除できる、とメリットが非常に多く、win-winな関係になる。

その思考様式から、発電事業者と需要家が直接買う、電力調達契約、英語の頭文字をとってPPAという形態が世界の潮流となっている。

これに気づいたが最後、世界の先進企業たちは早かった。GAFAを筆頭にPPAで再エネの直接買いつけに走った。

2007年から2020年までの世界PPA買いつけ上位企業と買いつけ量がこれだ。大手がずらりと並ぶ。


出典:qz.com

こうした行動は当然、気候変動対策にはプラスに働く。すると、新たな考え方が出てくる。例えば、PPAのような契約を増やすということは発電所が新たに作られる方向に進む。つまり、PPAという購買行動を通じて、需要家側は気候変動対策に貢献したことになる、これを価値だと見なす動きがすでに出てきている。

この論点を「追加性」という。日本では、まだ流通していない用語だが、この「追加性」があるかないかが、脱炭素において、いま、国際的に非常に重要になってきている。

つまり、同じ脱炭素をするのでも、追加性があるかないかは、全然価値が違ってくるわけだ。

PPAの場合はもちろん追加性あり、と見なされる。一方で、例えば非化石証書単体ではいまは追加性なし、となってしまうケースが多くある。

そうした背景から、例えばアップルなども、証書を使って一回はRE100を達成したものの、順次、追加性のあるものに切り替える、ということをやっている。

追加性という論点からも、なおさら、アマゾンはPPAで買いあさるわけだ。

では、「アマゾンが世界でどれだけ再エネを買いあさっているのか」、気になるところだろう。次はこの論点を解説したい。

世界でどれだけ再エネを買いあさっているのか

アマゾンのホームページには次のように書かれている。

2040年にカーボンニュートラルを達成するが、その中間地点として再エネ調達100%は、従来計画を5年前倒しして、2025年までに達成する。そして、すでに2020年段階で65%の調達を再エネに切り替えており、世界最大の再エネ調達企業である、とアピールしている。

つまり、アマゾンが電気を切り替えれば切り替えるほど、脱炭素の進展に貢献し、気候変動対策にも資するというロジックを展開している。

さらに、世界における調達の現状も書かれている。世界全体で232のプロジェクトから再エネを調達しており、その規模1万MW。原発1基が約1,000MWだ。アマゾンだけで原発10基に相当する再エネを調達している形になる。

このアマゾンの買いあさり、全く止まる気配がない。

直近のPPA状況の表がこれだ。

アマゾンの直近PPAリスト

2021年7月29日仏石油メジャーのTotal Energies社と合計474MWのPPA契約。
2021年6月23日・カナダで2番目のプロジェクトとしてアルバータ州のソーラーファームに出資。465MW。
・フィンランドで初めてのプロジェクト。風力発電52MW。
2021年4月21日・ヨーロッパで2.5GWを超える再エネプロジェクトに出資。
・米国カリフォルニア州のソーラープロジェクト、100MW。
2021年2月8日オランダEneco社とPPA契約。130MW。
2020年12月10日ブラジルのEngie社と650MWのPPA契約。
2020年12月10日デンマークのØrstedと10年間PPA契約。 900MWの洋上風力発電ファームから、250MWを供給。
2020年3月19日オーストラリアにて、Canadian Solar社とPPA契約。
Gunnedah太陽光発電所(146MWp/ 110MWac)から供給予定。

どれも非常にボリュームが大きく、400MWや600MW、小さくても100MWクラスのPPA契約になっている。

どれくらいの規模感か。日本の再エネ大手、レノバが有する運転中の発電所の合計容量が400MWだ。その全部をアマゾンが買い占める、それが1契約、という形だ。ボリュームがいかに大きいか、分かっていただけるのではないか。

今回の報道に立ち返ると、450ヶ所も作るという。メガソーラが乱立するのでは、そう思った読者も少なくないだろう。

そこで、「どのくらい発電所が建設されるのか」、解説したい。

どれだけの発電所が建設されるのか

今回注目するべきは、PPA契約全体の容量だ。容量は合計で22MW。

日本のメガソーラーにおいて、単体で22MWクラスは普通に存在する。22MWを450ヶ所に分割して、今回作る。平均すると50kWの容量になる。

相当小さいといえる。どのくらいかといえば、一般家庭が屋根に載せる量が6~8kW程度であり、屋根上7個分が一つの発電所になる。

太陽光発電所を作るなら、並べ方次第では5メートル×10メートルの土地で作れるレベルだ。

今回450ヶ所の内訳が公表されておらず、詳細は不明だが、0.4MWクラスのものを2~3個作る以外は、屋根上を借りるのではないか。

つまり、「再エネ網」と謳い「450ヶ所」と報道されたため、さもすごい再エネ供給網ができるかの印象だが、その数字が一人歩きしただけで、実態としては、関東中に太陽光発電所が乱立する類のものではない、と見ていいだろう。

したがって、「山林が切り崩されるのでは」、「家の周りがメガソーラーになるのでは」という心配は、あまりいらないのではないか。三菱商事などがもつネットワークで工場の屋根を借りるというようなケースが多いのだろう。

メガソーラーはもう厳しい?」でも解説したが、太陽光の買取価格は非常に下がっており、山林を切り開き造成をしてまで作っても、そのコストが収益に見合わないケースがかなり出てきている。そうした観点からもメガソーラーは減っていくだろう。

数字を冷静に分析し、材料もそろったところで、「実は、アマゾンにとってパフォーマンスに過ぎない」という論点を説明していきたい。

実はパフォーマンスに過ぎない

そもそも今回のPPA、先述したアマゾンによる直近のPPAに比べて、規模がかなり小さい。

400MWや600MWといった契約がある中で、今回は22MW。いかに日本の再エネが少ないとはいえ、という規模の数字だ。

ここで基本に立ち返りたい。そもそもアマゾンはなぜ、これほど電力を調達しないといけないのか。彼らのAWS、つまりデータセンター事業が非常に多くの電力を使うからだ。

どのくらい電力を使うのか。

国立研究開発法人科学技術振興機構によれば、GAFAを始めとする超大型データセンターの電力消費量は約300MW 。年間消費量にすると、300MW ×8,760時間稼働=2,628,000MW=2,628GWになる。22MWに照らすと、単純計算で、今回の太陽光発電網は、0.8%分の電力しか賄えない。

わずか0.8%。しかも、1つのデータセンター、だけである。多くの読者が微々たるものだと思うだろう。

どれだけ日本にアマゾンのデータセンターがあるのか。

アマゾンはその詳細を明らかにしておらず、WikiLeaks等からの情報によれば、東京と大阪に最低10ヶ所はあるとされている。真偽のほどは分からないが、それくらいあってもおかしくないだろう。

また、そもそも日本全体のデータセンターの消費電力は、日本の年間消費電力(994TWh、2015年)の 1%(9.9TWh)とされている。また、データセンター界隈では、いま、AWSがかなり強い状況だという。

日本全体のデータセンターの消費電力量や、AWSの日本におけるシェア、そして、最低10ヶ所はあるとされるデータセンターなどを総合すると、かなりの電力需要がアマゾンは日本においてあるわけだ。

アマゾンは2025年までに100%再エネ調達を目指している。その実現のためには、日本においても、とてつもない量の再エネを調達しなければならない。

しかし、それだけの再エネを持っている企業は日本では限られており、東京電力などの旧一電とアマゾンは交渉していると、その界隈では言われていた。

ただし、旧一電も水力がメインで、太陽光などはほとんどもっていない。だったら水力を調達すればいいじゃないかと思われるだろう。

おそらくアマゾンも、旧一電から水力プランで購入している、ないしは、いま交渉しているところではないか。

しかし、これがアマゾンにとって問題になる。なぜなら、水力由来の再エネは、追加性がない、からだ。新たに大型ダム建設などをすることは、日本において想定しづらい。

つまり、このままだとアマゾンは日本では追加性のない再エネのみの購入となってしまう。それは困る、なんとか追加性のアピールを日本でしたい、という格好になる。

今回の22MWのPPA契約。アマゾンのデータセンターの電力消費量からすれば、先述のとおり微々たる電力の供給でしかない。

つまり、今回の取り組みは、本質的な再エネ調達の色合いは薄いとなる。それでは、目的は何か。電力需要の多くは水力プランで補いながら、一方で、このような発表をすることによって、追加性のある再エネを日本でも調達している、とアピールする、そうしたパフォーマンスではないかと筆者は見ている。

もちろん、これから洋上風力や、2030年にむけては、太陽光も日本で増えていく。そうした中でアマゾンは更なるPPA契約をし、比率を上げていくことは十分考えられる。

とはいえ、今回のこのアマゾンの契約は重要な示唆をくれている。

最後に「アマゾンの行動が日本のビジネスセクターに示唆するもの」について、解説したい。

日本のビジネスセクターに示唆するもの

まず、追加性の重要性を、アマゾンが想起させてくれた。

いま、日本企業の多くがとりあえずの脱炭素の手段として、証書を購入している。しかし、その手段が国際スタンダードで評価をされたときに、ないし、ESG文脈で審査をされるようになったときに、長期的オプションではなくなる、というのを先んじて示してくれている。

なぜなら、追加性がないからだ。

追加性のない脱炭素化の価値がいつまであるか、それは分からない。だが、いずれは、感度の高い企業から、PPAでの囲い込みに走るだろう。なぜなら、日本の場合、水力を除いた再エネが少ない。そこに気づいた企業の行動はなおさら早くなる。

ただ、そうなった場合、アマゾンのような先行者がいるとただでさえ少ない生の再エネが、椅子取りゲームのように、先行者によってどんどん取られていく。しかもPPAの場合は長期契約での囲い込みであるため、そのパイを後発者が取ることができない。

その結果、何が起きるのか。

再エネ需要が供給に対して高まり、後発企業の再エネ調達費用が高まる。つまり、やはりアマゾンのように先行して、PPAで囲い込むことが、特にいま日本の太陽光などの値段が下がっている中では、長期的なコストの面でも有効な手段になる、ということをアマゾンの行動は示唆している。

もちろん、再エネを調達しないという手段は一つの選択肢ではある。しかし、その場合、ESG評価が下がる。銀行からの投融資も、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループのように投融資先のカーボンニュートラルを掲げる金融機関は今後も増えるため、受けづらくなる。カーボンプライシングが始まったら、いまよりも電力調達にコストを払わないといけなくなる。国境炭素税が広まったら、商品が国際競争力を失う。スコープ3における脱炭素に取り組む企業からはサプライチェーンから外される、などの弊害が待ち受けることになる。

そのリスクと比較考量した場合、やはり早めに生再エネをPPAで囲い込むことは、選択肢としてあり、ではないか。

一方、日本におけるPPAでの調達手法の知名度が上がったというのもまた、今回のニュースが残したものになる。しかも、調達量に比して大げさな450ヶ所という数字が出回ったことで、あたかも、すごい量を三菱商事が買い占め、アマゾンに供給した感が出た。

これまで化石燃料に重点をおいてきた財閥系商社が動いた、ということもまた、日本のビジネス界には、脱炭素推進の風がふく示唆を与えたようにも思う。

日本の再エネは少なく、そして追加性のあるものはさらに少ない。こうした現状を踏まえ、そしてグローバルサプライチェーンの潮流も見据えて、ぜひビジネスセクターの人々には動いていただきたいと思う。

今回はこの一言でまとめよう。
『アマゾンのPPAはパフォーマンス、なれど示唆多し』

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボール出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。