DXによって、火力や水力発電所などを「デジタル発電所」に変革し、保守や運転業務の効率化を図る動きが、大手電力会社を中心に本格化している。電力大手のJパワーは、水力発電所の保守業務の高度化に向けて、福島県にある下郷発電所を「デジタル集積戦略特別区域」に指定し、DXの実証試験を開始した。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、火力や水力発電所などを「デジタル発電所」に変革し、生産性の向上や、保守・運用業務の効率化を図り、コストやCO2などの削減を目指す動きが本格化している。
関西電力では2019年2月、石炭火力発電所の燃料運用最適化を目指し、DeNAと協業を開始。DeNAが持つAI技術をもとに、石炭の運用最適化に取り組んでいる。
東京電力ホールディングスと中部電力の火力発電を継承したJERAも2020年10月から、石炭火力発電所の運転や保守業務のデジタル化を本格化させた。関電、JERAいずれも、DXの推進によって、燃料費およびCO2排出の削減を狙ったものだ。
エネルギー業界にもDXの波が到来する中、Jパワーは2021年度より、全国に保有する60ヶ所の水力発電所の保守業務の高度化を目指し、福島県にある下郷発電所(出力100万kW、揚水式)におけるDXの実証試験を開始している。
Jパワーでは、下郷発電所において、「点検無人化・省力化」「設備事故最小化」「労働災害・ヒューマンエラーゼロ化」「停止作業機会最小化・作業労力最小化」「セキュリティ強化」「環境保全」などをキーワードに、実証ツールを開発し、集中的に実証試験を実施するという。
具体的には、無線LANを介してタブレット、データ記録および監視カメラを有機的につなげることによりインフラの高度化を図っていく。
さらに、ヘルメットカメラやスマートグラスによる保守員への後方支援、巡視点検や高所・水中・難点検箇所作業のロボットやドローンへの移行、ビックデータ分析やカメラ映像のAI解析による設備異常の検知や事前に通知できる取り組みなどを進めていく計画だ。
巡視点検ロボットについては、2021年度から自社開発にも取り組むという。
発電設備の運転状況を監視し、設備の異常予知を検知したり、不具合による停止を削減することは、稼働率が向上するだけではなく、点検・異常対応における省人化も図ることができ、コスト削減につながる。こうした保守業務の高度化にはDXが欠かせない。
Jパワーでは、2025年までに全60ヶ所の水力発電所構内に無線LANを整備し、ロボットの活用などDXを適用展開することを目指している。
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