ENEOSは再生可能エネルギー・EVへの転換を加速させる | EnergyShift

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ENEOSは再生可能エネルギー・EVへの転換を加速させる

ENEOSは再生可能エネルギー・EVへの転換を加速させる

2021年02月19日

現在、石油会社にとって、積極的な再生可能エネルギー事業への取り組みは、未来のエネルギーを担う事業者として、事業の柱の1つとなりつつある。これは海外の石油メジャーでも日本の石油会社でも、変わらない。では、日本を代表する石油会社であるENEOSは、どのような再エネ事業を展開しようとしているのか。再生可能エネルギー事業部長の業天浩二氏にお話しをうかがった。

メガソーラーから洋上風力へ事業の幅を拡大

― 最初に、ENEOSという会社について、ご紹介ください。

業天浩二氏:お客様のためにエネルギーを安定して供給するというのが我々のミッションです。原油から精製する石油製品をはじめ、天然ガスや電気を扱っていますが、何よりENEOSブランドによる安心感をお客様に届けている会社だと自負しております。

― 気候変動対策として、再生可能エネルギーへの取り組みを拡大しているときいています。どのような展開をされているのでしょうか。

業天氏:2013年に最初のメガソーラーを運開させて120MWくらいの規模になります。

2019年4月に再生可能エネルギー事業部が発足しましたが、この年の5月にENEOSグループ(当時JXTGグループ)で策定した「2040年長期ビジョン」においては、再生可能エネルギーの推進と地域のエネルギーのプラットフォームの構築が掲げられています。

2022年度には再生可能エネルギーの発電容量を1,000MW(1GW)以上にすることを目標としています。この時点では太陽光発電と陸上風力発電が中心になりますが、中長期的には、洋上風力なども入ってきます。

これまでは、自社遊休地などを活用してメガソーラーなどを開発してきましたが、長期的には、発電所の開発だけではなく、再生可能エネルギーを地域サービスに結びつけ、SS(サービスステーション)のネットワークを通じて、街づくりをしていきたいということも考えています。

ENEOS 2040年長期ビジョン
ENEOS 2040年長期ビジョン 提供:ENEOS

2040年までに再エネを事業の柱に

― 国内だけではなく、海外での展開も視野に入れているかと思います。

業天氏:国内だけではなく、当社事業と親和性のあるオーストラリアや東南アジアでの展開を視野に入れています。特にオーストラリアにおいて、当社では海外における水素サプライチェーンの構築を検討しており、将来的に同国における再生可能エネルギー電源からグリーン水素を生産することに繋げる可能性があるからです。また、2019年には台湾の洋上風力に参加しました。

―洋上風力の話が出ましたが、まず、台湾の案件に参加されたきっかけについて教えてください。

業天氏:640MWの洋上風力発電プロジェクトで、允能ウインドパワー社によるプロジェクトです。双日を中心として、中国電力、四国電力、中電工とともに参加しています。権益としては大きくはないですが、洋上風力発電事業についての経験を蓄積しているところです。

石油会社は、洋上風力発電と親和性がある

― 海外でも洋上風力に取り組む石油会社は少なくありません。石油会社にとって、洋上風力発電との親和性は高いのでしょうか。

業天氏:石油精製の拠点である製油所との親和性があると思っています。洋上風力発電の建設にあたっては、港湾などのインフラを活用しているのですが、こうした点で製油所での経験を活かすことができます。

また、再生可能エネルギーの主力電源化にあたっては、太陽光発電と洋上風力発電が両輪になってくると考えています。その意味でも、主要なエネルギーを担ってきた石油会社が取り組むべき事業の1つだといえるでしょう。

― 日本でも計画を進めているということですが。

業天氏:2020年9月に東北電力とともに、ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)が準備を進めている、秋田県八峰能代沖の洋上風力発電事業に参画することを発表しました。これに引き続き、今後も国内数ヶ所の案件に参画したいと考えています。

案件ごとに、どの事業者とパートナーとなるかは異なってくると思いますが、ENEOSの立地地域に対する強みを発揮できる案件を中心に考えていきたいと思います。

― 開発目標はどのくらいの規模になるのでしょうか。

業天氏:2030年に数GWという規模にしたいと考えています。グループ長期ビジョンにおいて2040年カーボンニュートラルを掲げておりますので、その実現に向けた道筋を踏まえた規模になってくると思います。

また、2040年には石油製品販売の需要は半減すると想定しています。それに対応するために事業構造を変革させなければなりませんが、そのなかにおいて、事業の柱となるような規模にまで成長させることを目指しています。

全国で地域に根付くENEOSブランド

― 先ほど、ENEOSの地域に対する強みということをおっしゃいました。同じ再生可能エネルギー開発でも、海外の石油メジャーとは異なる方向を目指しているように思います。

業天氏:ENEOSは地域に強い会社だと考えています。ですから、太陽光発電と同様に、洋上風力発電の開発にあたっても、地域との親和性を重視しますし、逆に地域のエネルギー供給インフラとして洋上風力発電を考えていきたいということがあります。

地域に強いということが、エネルギーの地産地消に強いということにもなってきます。

― 同じエネルギー企業として、電力会社や都市ガス会社とは異なる優位性というのはどのような点でしょうか。

業天氏:現在は、エネルギーの変革期にあります。エネルギーの供給にあたって、低炭素化、脱炭素化が必然となっています。こうした中で、エネルギーを安定的に供給していかなくてはなりません。

ENEOSの場合、全国で事業を展開しています。これは旧一般電気事業者や都市ガス事業者にはない強みです。同時に、地域に事業パートナーがいます。この点もまた、強みです。全国で地域のパートナーと培った、ENEOSブランドの安定感、信頼感に応えるように、これからも展開していきたいと考えています。

太陽光発電はバッテリーのコストダウンと土地利用がカギ

― 再生可能エネルギーの普及拡大にあたっては、技術的な課題があると思います。どういった点が、重要な課題となってくるのでしょうか。

業天氏:太陽光発電については、蓄電池のコストダウンがキーになってくると考えています。需要側に導入することで、負荷を調整することができますし、発電側に設置することは発電のピークシフトのために有効です。

また、システム全体としても、蓄電池や太陽光発電パネルの長寿命化は課題です。現在は、太陽光発電パネルの寿命は30年と言われていますが、40年から50年へ伸ばしていくことは、コストダウンとともに重要です。

また、発電量予測も市場に対応するためには不可欠です。これは洋上風力についても同様で、とりわけ入札上限価格が36円/kWhだったものが、将来は8~9円/kWhになることを考えると、コストダウンは重要な課題です。特にEPC(発電所開発)のコストダウンは重要で、その実現を目指していきます。

ENEOS うるまメガソーラー
うるまメガソーラー 発電出力は12MW 提供:ENEOS

― 再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、政策的な課題もあると思いますが、いかがでしょうか。

業天氏:太陽光発電の大量導入にあたっての政策課題のひとつは、土地利用の制約です。全国の耕作放棄地や荒廃農地には利用に制約があります。これまでは、太陽光発電のために、大規模案件では山を切り開いてきましたが、それには限界があります。農地法を改正し、ソーラーシェアリングを行いやすいしくみにしていくことが必要です。

また、電力系統については、ノンファーム接続がはじまっていますが、配電網についても同じくノンファームの措置をお願いしたい。

洋上風力発電については、国は大きな開発目標を持っていますし、系統についても事前に計画がなされることでしょう。そうであれば、国として、セントラル方式(政府が海域の選定や調査から系統連系工事まで責任を持った上で、事業者を入札によって決める方式)を進めていただきたい。

また、洋上風力発電には建設の拠点となる港湾などのインフラも必要です。開発目標にのっとったインフラの整備が必要ですが、一般論として現状は不足していると思います。

また、太陽光発電協会(JPEA)と再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)には、当社が理事として参画しており、我々は両団体のパイプ役ともなっています。こうした役割を通じて、政府に対し課題解決を働きかけていきたいと考えています。

EV時代になってもENEOSを選んでもらえるように

― 再生可能エネルギーの導入にあわせて、自動車についてもEV(電気自動車)へのシフトが予想されます。EV化となっても、お客様とENEOSとの関係は変わらないのでしょうか。

業天氏:自動車へのエネルギーの供給という点では、EVになっても、我々とお客様、そしてSSを運営する事業パートナーとの関係は持続的なものにしていきます。

例えば、SSの新たなサービスとしてEVへの充電も検討しています。EVの充電には、基礎充電や旅行先などでの目的地充電など、さまざまな形があります。どういった充電インフラの整備が消費者にとって望ましいのか、これから検討していく必要があります。

EVだけではなく、FCV(燃料電池自動車)向けの水素の製造と供給も行います。2018年にはインフラ事業者や自動車メーカー、金融投資家等とともに、日本水素ステーションネットワークという会社を設立しました。

また、SSをその立地の良さを活かして生活に便利なサービスを提供する拠点として、生活プラットフォーム化させていく方針ですし、カーシェアリング事業も展開しています。「ENEOSでんき」というブランドで小売電気事業も展開しており、EV充電向けに時間帯別料金メニューの検討なども必要だと考えています。

いずれにせよ、EVであってもENEOSだとお客様に思っていただきたいと思います。

埼玉県 岡部メガソーラー発電所
岡部メガソーラー発電所 発電出力は1.2MW 提供:ENEOS

(Interview & Text:本橋恵一)

業天 浩二
業天 浩二

1989年、日本石油株式会社 入社。2009年、新日本石油株式会社 総合企画部 第1グループマネージャー。2014年、JXエネルギー株式会社 中央技術研究所 技術戦略室長。2017年、JXTGホールディングス株式会社 経営企画部 副部長。2019年、JXTGエネルギー株式会社 再生可能エネルギー部長。2020年、ENEOS株式会社 再生可能エネルギー事業部長。

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