航続距離725km 世界初、太陽光発電型EVが年内に商業化へ 専用タイヤをブリヂストンが開発 脱炭素へ前進 | EnergyShift

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航続距離725km 世界初、太陽光発電型EVが年内に商業化へ 専用タイヤをブリヂストンが開発 脱炭素へ前進

航続距離725km 世界初、太陽光発電型EVが年内に商業化へ 専用タイヤをブリヂストンが開発 脱炭素へ前進

EnergyShift編集部
2021年04月27日

充電せずに数ヶ月間も走り続けることができる電気自動車(EV)が2021年にも発売されるかもしれない。太陽光パネルを搭載したEVを開発するオランダのライトイヤー(Lightyear)社は、太陽光発電がつくる電気を充電しながら走行することで、航続距離725kmを実現したEV「ライトイヤー・ワン(Lightyear One)」の商業化を目指し開発を進めている。商業化されれば世界初の試みとなるという。

どこでも、だれにとってもクリーンなモビリティ

ライトイヤー・ワンを開発するライトイヤー社は、大手タイヤメーカーのブリヂストンがタイトルスポンサーを務める世界最高峰のソーラーカーレース「Bridgestone World Solar Challenge(ブリヂストン ワールドソーラーチャレンジ)」において、未来の自動車の創造を目指し実用性を評価する「クルーザークラス」を4連覇しているオランダ・アイントホーフェン工科大学のSolar Team Eindhoven出身のエンジニアが中心となり、2016年に設立したスタートアップだ。

ライトイヤー社は「あらゆる場所のすべての人にグリーンモビリティを提供する」という使命を掲げ、Solar Team Eindhovenやブリヂストンとともに、ソーラーカーの開発など8年以上にわたって共創を続けてきた。

こうした共創によって、ライトイヤー社が開発したのが太陽光発電を搭載したEV「ライトイヤー・ワン」だ。ライトイヤー・ワンの車体上部には5m2にわたり太陽光発電が搭載されており、発電出力は215Wp/m2を達成。この太陽光発電がつくる電気を充電することで、1日最大70kmの走行が可能になるという。

航続距離はすでに725kmを実現しており、ライトイヤー社は「充電せずに数週間あるいは数ヶ月の運転が可能」「充電インフラが整備されていなくても世界を旅できる。温室効果ガスの排出量がもっとも少ない走行で」と謳っている。

ブリヂストングループが2021年1月に欧州市場の3,000人の消費者を対象に行なった調査によると、欧州のドライバーの50%がEVの購入を検討しているが、そのうち37%のドライバーがエネルギー効率と航続距離に不安を抱いていると回答した。

航続距離を伸ばすため、EVメーカーはバッテリー性能の向上を図っているが、ライトイヤー社は「バッテリー重量が増え、急速充電インフラも必要となり、結果として車両1台あたりのCO2排出量が増えてしまう」とし、さらに「EV向け電力需要も増える」と指摘する。

そして「ライトイヤー・ワンであれば、家庭用電源コンセントと太陽光発電が充電インフラを代替するため、消費者の不安を解消できる」。「とりわけ今後10年間で自動車需要が急増する発展途上地域にとって、充電インフラの整備がEV普及の足枷となるだろう。しかし、われわれは未整備地域においても、クリーンなモビリティを提供できる」と自信をのぞかせている。

ライトイヤー社の取り組みは、機関投資家からも評価されており、2021年3月にはスイスのゼロポイントホールディングBVから4,800万ドルの資金調達を成功させている。

ブリヂストンにとっても、EV向けタイヤは次なる収益源

世界中でEVシフトが鮮明になる中、タイヤメーカーも次世代エコタイヤの開発を繰り広げている。

ブリヂストンは、環境性能と運動性能を両立するタイヤ技術「ENLITEN(エンライトン)」を開発。EVのバッテリー寿命の維持や航続距離の最大化につながるとして、「エンライトン」の技術はフォルクスワーゲンのEV「ID.3」や、日産ローグ、LEXUSのEVコンセプトカーなどに採用されている。

ブリヂストンは2020年12月期決算が、新型コロナウイルスの影響でタイヤ販売が一時的に落ち込み、最終的な損益が233億円の赤字と、1951年以来、69年ぶりの最終赤字となった。

事業再構築に向けて、今後3年間で世界におよそ160ヶ所ある生産拠点のうち、4割を削減すると表明。さらに脱炭素実現に向けクルマのEV化が加速する中、航続距離の延長につながる次世代エコタイヤを次の事業のひとつに位置づけ、稼ぐ力の再構築を目指している。

復活に挑むブリヂストンにとっても、ライトイヤー・ワンの存在価値は大きく、今回、「エンライトン」を搭載した特別仕様タイヤ「TURANZA ECO (トランザ エコ)」を開発。ライトイヤー・ワンの商業化に合わせて供給していく考えだ。

ライトイヤー・ワンの車両価格は15万ユーロ(約1,960万円)と高額だが、946人の起業家や自動車ユーザーなどが予約購入をしているという。開発が順調に進めば、2021年後半にも発売される予定だ。

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