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経済大国「中国」の脱炭素に関する本音とその奥にある動機とは

2021年11月26日

長期で脱炭素を選択する理由

ただ、中国の脱炭素の特徴は、短期と中期のところは石炭、そして、長期の時間軸で再エネという形になるというところにもある。ということで、④長期で脱炭素を選択する理由について解説していこうと思う。

2006年に再エネ法を制定して以後、中国は順調に再エネ施策を展開していく。2007年に再エネ中長期発展計画を発表、ここで再エネ比率を明記し、そして2012年には5ヶ年計画を発表した。これらの過程の途中では、大気汚染対策に取り組まなくてはならなくなる等、中国固有の事情も加わり、結果として、特に2013年くらいから加速度的に再エネの導入が進んでいくことになった。

そして、今では中国は再エネ導入量の世界のトップに君臨する。2017年時点では世界の導入量の4割弱が中国となっており、経済規模そのものの大きさを加味しても、その絶対量という点では群を抜いている状況だ。

世界の導入量の4割弱が中国

こうした中、中国は太陽光パネルの生産でも世界を引き離している。2000年代中頃までは世界の太陽光パネル生産のトップは日本だったが、今では中国のパネル生産シェアが7割を超える形となっている。

また、風力についても風力メーカーの上位は欧州と中国勢が並んでランクインする形だ。

つまり、導入絶対量も世界1なうえ、太陽光、風力も世界トップクラスのサプライチェーン支配力を持っており、オペレーションのところにもノウハウがある。

これは単に自国の自給のみならず、世界を取りに行ける。と、考えるに至ったわけだ。

しかも、いまはエネルギー供給は石炭に頼っているものの、これから増え続ける需要をどこまで自国石炭採掘で賄えるかも分からない。原油、天然ガスの外部依存度は増えてきている。

となれば、電力のところは長期で再エネにし、そして、輸送セクターは電化をする。産業育成という文脈でも、例えば車であれば、内燃機関では追いつけないけれども、EVであれば勝負になる。

しかも、再エネが増えるのであれば、鍵となるのは蓄電池。この蓄電池の部分は、中国が誇る車載電池の大手CATLが世界トップシェアを誇り、ここでも勝負になる。

こうした状況があるからこそ、中国のエネルギー政策は、長期では脱炭素を支持する。これがエネルギー自給的にも、産業発展的にも解になる。

そして、だからこそ、中国が宣言するのは2060年カーボンニュートラルなのだ。あくまで、結果的に、そのタイミングでCO2が減るという形であり、CO2を減らすために動くわけではないのだ。

もし本当にCO2を減らすべきだと思っているなら、COP26の場で反対などしない。

時間軸的に、長期が脱炭素、短中期が石炭、これが中国の解であり、そこに実に整合するように中国は動いている。なので、中国の脱炭素に目を向けるときには、ぜひこの時間軸が2軸あるということを頭に入れてほしい。そこにこそ、中国の本音があるからだ。

ということで今日はこの一言でまとめたいと思う。

『中国は短中期では脱炭素しない でも長期では脱炭素』

ヘッダー画像はWhite HouseのYoutubeより

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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