電気自動車(EV)といえば日産リーフやテスラなど乗用車が一般に注目を浴びやすい。しかし国の経済を支えるトラックにも電動化の大きなメリットがあり、世界中で様々なメーカーが開発に乗り出している。現在、注目されているEVトラックにはどのようなものがあるのか、日本サスティナブル・エナジー株式会社の大野嘉久氏が紹介する。
電気自動車(EV)といえば日産リーフやテスラなど乗用車が一般に注目を浴びやすい。しかし国の経済を支えるトラックにも電動化の大きなメリットがあり、世界中で様々なメーカーが開発に乗り出している。現在、注目されているEVトラックにはどのようなものがあるのか、日本サスティナブル・エナジー株式会社の大野嘉久氏が紹介する。
キャビン内の快適さや高い安全性が「いつかはボルボ」と日本の大型トラック運転手からも強い支持を受けているスウェーデンのトラック大手ボルボ・トラック*は、EVトラックの優位点について次のように紹介している。
このようにボルボは従来のディーゼル・トラックでは実現できない多くのメリットを挙げており、EVトラックの更なる開発に強くコミットしている。
*ボルボ・グループの乗用車部門「ボルボ・カーズ」は1999年に米フォードへ売却されたのち、2010年には中国の浙江吉利控股集団(ジーリー・ホールディングス、Geely HD)に買収されたが、トラック部門「ボルボ・トラック」やバス部門「ボルボ・バス」は現在もグループ内の会社である。
トラックは貨物輸送のほかにも様々な用途があり、例えば中国BYDのEVゴミ収集車は2017年から米国カリフォルニア州で運用されている。日本では一台の清掃車に何人ものスタッフが乗りこみ、集積スポットに停まるたびに人力で荷箱に投入してゆくが、BYDが開発したゴミ収集車は車体からアームが伸びてゴミ箱を高く持ち上げてゴミを荷箱に入れ、そしてゴミ箱をもとの場所に戻す。その間わずか12秒、ドライバー以外に必要なスタッフはゼロである。地方の財源不足や労働力不足が大きな問題となる日本においても、非常に求められている技術と言えよう。
GreenWaste of Palo Alto's All-Electric Refuse Truckこのほか密閉された鉱山内で資源や土砂などを運搬する車両や、温度管理の電力が必要な牛乳配達車などEVトラックが活躍の場を広げている。
非常に斬新なデザインで有名なEVトラックと言えば米テスラ社のトレーラーヘッド「セミ」であり、2017年11月に開催されたプレゼンテーションの席上でイーロン・マスクCEOはその卓越した特長を発表した。
テスラ「セミ」発表会(2017年11月16日)既にセミはテスラ車の運搬に利用されているが、2020年6月10日にはイーロン・マスクCDOが社員に充てたメールで「セミの電池とパワートレインの生産はネバダ州のギガファクトリーで始まるだろう」と書かれていたことが明らかになった。したがって遠くないうちに納入が始まると期待されている。
ただし残念ながら日本では大型貨物自動車にスピードリミッターの装着が義務化されていて時速90キロまでしか出せないため、仮にセミが輸入されたとしても、その真価を発揮することは難しいかもしれない。
一方、テスラのトラックに対して大きく注目される技術が自動パーキングである。というのも大型トラック(とりわけフルトレーラー)の駐車は非常に高い技術が必要であり、上級者でも神経をすり減らす。しかしテスラは乗用車で既に自動パーキング技術を完成させており、そしてこのセミでは後部の四輪すべてが独立したモーターによって駆動されるため、トラックの全自動駐車が実現されれば運転手の負荷軽減になるであろう。
日本では「セミトラクター」「セミトレーラー」などの用語が運輸業界で浸透しているが、英語圏では「セマイ」と発音するのが一般的であり、テスラ・モーターズのイーロン・マスクCEOも発表記者会見において「セマイ」と発音していた。テスラには「セミ」のほか、2019年11月に発表されて全世界に大いなる衝撃を与えた「サイバートラック」という電動ピックアップ・トラックもある。現状では「先鋭的なデザイン」や「卓越した安全性(頑丈性)」そして「普通車の価格なのにスーパーカー級の性能」などの点に話題が集中しているが、EVならではのメリットは以下の通りだ。
しかしサイバートラックは今のところ不明な点も多く、今後は専用トレーラーが発売されたり、あるいはトレーラーも含めた全自動パーキング機能が実現するのではないかと見られている。
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