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風力発電大手、生物多様性に新基準 オーステッド、2030年までに導入

風力発電大手、生物多様性に新基準 オーステッド、2030年までに導入

2021年07月04日

2021年7月1日、デンマークに本社を置く、再生可能エネルギー大手のオーステッドは、生物多様性の保護に積極的に取り組むグローバルなサステナビリティ・リーダーとして、2030年までに操業を開始する新規再生可能エネルギー・プロジェクトにおいて、生物多様性に「ネット・ポジティブ・インパクト」(差し引きでプラスの影響)をもたらすことを発表した。この目標は、オーステッドの新しい戦略の一部となるという。

ネット・ポジティブ・インパクト(Net Positive Impact)とは、生物多様性の代償措置による効果が、生物多様性の損失を上回ることを意味する。

地球温暖化を1.5℃に抑制するために必要な再生可能エネルギーを全世界で早急に構築する際には、自然とのバランスを保つことが必要だ。自然を破壊してまで再エネを構築することは、地球環境に悪影響を与えることになる。とはいえ、それぞれのプロジェクトが地球環境に何も影響を与えないということはない。これに対し、今回のように生物多様性に関して、潜在的な損失を補完するために積極的な措置を採った結果、プロジェクトが生物多様性に対して相対的にプラスの影響を与える場合、ネット・ポジティブ・インパクトが発生する。

オーステッドの最高経営責任者マッズ・ニッパー氏は、「地球温暖化を食い止めるためには、今後、数十年にわたり、再生可能エネルギーの導入を大幅に加速する必要がありますが、グリーン・エネルギーの構築は、海洋を含む自然生息地や野生生物の保護と相反してはなりません。そのため、今後の新しいプロジェクトに、生物多様性へのネット・ポジティブ・インパクト基準を組み込むことにしました。それによって、これらの再生可能エネルギー・プロジェクトは、2030年までに生物多様性に差し引きでプラスの影響を与え始めます。生物多様性へのネット・ポジティブな貢献を今後のプロジェクトに組み込むことで、地球環境の改善に役立ち、世界最大の再生可能エネルギー開発を担う企業として競争上の優位性を強化したいと考えています」と語っている。

オーステッド・ジャパン代表取締役社長の笠松純氏は、「生物多様性を保護するために、欧米やアジアでの事業においてオーステッドは常に最適な方法を探究してきました。日本でも、現地に適した生物多様性と環境にやさしいプロジェクトの開発や運営方法を見出しており、展開する計画です。オーステッドの生物多様性保護の新基準の活用についても、国内で検討するプロジェクトにおいて、パートナー企業と共に推進して行きたいと考えています」と表明している。

オーステッドは、すでに再生可能エネルギー業界において最も経験豊富な環境専門家チームを社内に擁し、プロジェクトが生物多様性に与える潜在的な影響の回避や緩和、対処に取り組んでいるという。これまでにオランダの洋上風力発電プロジェクトでは、大西洋に生息するタラを守るための人工サンゴ礁の設置を行ない、英国では甲殻類の生息地のモニタリング、北大西洋セミクジラの保護・保全プログラムなどの取り組みを行ってきた。

今後はこの取り組みをさらに強化し、新規プロジェクトを開発する際、洋上風力発電、陸上風力発電、太陽光発電とエネルギー貯蔵、再生可能水素などの再生可能エネルギー事業とその周辺地や海域において、自然の生態系、生息地、種に対して全体的にネット・ポジティブな貢献ができるような取り組みを体系的に実施する。

また、こうした取り組みを最も持続可能な方法で行うには基準設定の強化が必要だが、生物多様性への影響を測定する方法が業界全体で標準化されていないことが課題となっていると指摘。特に、動的で変動しやすい洋上で作業する場合、基準値を決めて変化を測定することは容易ではないという。

そのため、オーステッドは、さまざまな環境問題に関する科学的な目標が広範に採用されることをめざし、気候に関する科学的な目標設定の開発に取り組んでいるScience Based Targets Networkが主催するコーポレートエンゲージメントプログラムに参画しており、自然科学に基づいて目標を開発し、生物多様性、土地、水、海洋への影響と依存関係を測定するためのツールとガイドラインの開発を、2030年までの導入をめざして進めていく。

このようなイニシアチブへの参加を通じて、最適な生物多様性へのネット・ポジティブ・インパクト基準の導入をエネルギー業界全体での取り組みにまで拡大し、グリーン・エネルギーのみで稼動する世界の構築に貢献するとしている。

EnergyShift編集部
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