使用する電力の再エネ100%を目標とするグローバル企業の1つでもあるFacebookは、シンガポールに拠点を置き、アジアを中心に太陽光発電事業や小売電気事業を展開するSunseapと、VPPA契約(仮想電力購入契約)を締結した。Facebookとしてはアジアで最初のオフィス・データセンター向け再エネ供給となる。
シンガポールにおけるFacebook事業のすべてが再エネに
シンガポールに本拠を置き、太陽光発電事業や小売電気事業、グリーンモビリティ事業などを展開するSunseapグループは、Facebook社のオフィスやアジア初となるデータセンターなどに再生可能エネルギーを供給する契約を結んだ。
Facebookは世界的に再生可能エネルギーを導入しているが、この契約によりシンガポールでの事業をすべて再生可能エネルギーで運営し、温室効果ガスの排出量を75%削減することとなる。
集合住宅などの太陽光発電による環境価値(RECs)を利用
今回の契約は、SunseapグループとFacebookの間で締結された初のVPPA契約であり、VPPAの下での太陽光発電容量としてはシンガポール最大規模となる。
VPPAとは、通常のPPAとは異なり、再エネ発電事業者は発電した電気を市場に供給した上で、再エネクレジット(RECs)を顧客に販売する。顧客が使う電気は市場を通じて供給され、RECsと組み合わせることで、再生可能エネルギーとみなされる。顧客は電気と環境価値の代金を再エネ発電事業者に支払う。こうしたしくみによって、顧客は再エネの発電量の変動に関係なく、再エネの電気を使うことができる。
今回の場合、Facebookが受け取るRECsは、シンガポール全土にある1,200棟のHDBフラット(公営住宅)と49棟の政府ビルの屋上に設置されているSunseapのソーラーパネルで発電された電力から得られ、すべて完成する2022年には発電容量は合計で100MWとなる。
VPPAは太陽光発電が設置できない企業にとって重要なツール
Sunseapグループのローレンス・ウー社長は「Facebookと提携し、シンガポールとその他の地域にVPPAを導入できることを大変うれしく思っています。各企業がエネルギーミックスとして自然エネルギーを加える取り組みを加速させている中で、VPPAは企業にとっての重要なツールになります。これは、気候変動との戦いと脱炭素化に向けたアジアの動きに大きな変化をもたらします。ソーラーパネルを設置するスペースがないなどの制約を受けている企業にとって、VPPAは大きな効果をもたらすでしょう」と語っている。
Facebookは、効率的なデータセンター施設の設計、構築、運営を行う目的で、世界中で5.4GW以上の再生可能エネルギーを契約している。
Sunseapは、アジア太平洋地域全体で1.7GWの発電量を持つ地域最大級の再生可能エネルギーデベロッパーで、オーストラリア、中国、台湾、日本、その他の東南アジア地域で事業を運営しており、ベトナムのニントゥアン省で168MWの太陽光発電所の試運転に成功した。また、2040年にはガソリン車を段階的に廃止するシンガポールで、2030年までに1万ヶ所の充電設備の設置を進めることも計画している。
シンガポールは1995年に電力を民営化、国策として原子力発電をせず、ほぼ100%を輸入の天然ガスによる火力発電に依存していたが、世界的な流れを受けて2013年ごろから再生可能エネルギーの導入を進め、地理的条件から太陽光発電の発電量が急速に伸びている。
シンガポール政府によると2018年の太陽光発電量は203MWであったが、2020年内に350MW、2030年までに2GW以上とする目標を立てている。
(Text:高森徹夫)
参照