イギリスは輸送でも脱炭素を目指す/トルコの熱エネルギー拡大/世界の新設電源は3/4が再エネ/Teslaのサブスクリプション問題/GEのインバータ制御技術/ドイツの蓄電技術進む | EnergyShift

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イギリスは輸送でも脱炭素を目指す/トルコの熱エネルギー拡大/世界の新設電源は3/4が再エネ/Teslaのサブスクリプション問題/GEのインバータ制御技術/ドイツの蓄電技術進む

イギリスは輸送でも脱炭素を目指す/トルコの熱エネルギー拡大/世界の新設電源は3/4が再エネ/Teslaのサブスクリプション問題/GEのインバータ制御技術/ドイツの蓄電技術進む

日本ではあまり紹介されない海外のエネルギー業界最新ニュース。EnergyShift編集部が厳選してお送りする。

ロンドンではダブルデッカーバスも電化が進んでいる。中央はサディク・カーン ロンドン市長 © Greater London Authority

英国、運輸部門の脱炭素化に向けた報告書を発表

2020年4月2日、英国は運輸部門の脱炭素化に向けた報告書を発表した。報告書は政策立案の促進を目的としてつくられ、今後、数ヶ月かけて計画を策定することになる。 運輸部門は再エネの利用が難しく、現在は電力を抜いて英国最大の温室効果ガス(GHG)の排出源となっており、総排出量の28%を占めている。
Grant Shapps運輸長官は、報告書の前書きで、すべての道路交通車両がゼロエミッションになることをはじめ、バイオ燃料や電化の促進、航空機の利用の削減、ゼロエミッション船舶の開発などの目標について述べている。
報告書では次の6つの戦略を示している。

  • 交通機関のモーダルシフトの加速
  • サプライチェーンの脱炭素化
  • 英国をグリーン輸送技術とイノベーションの拠点に
  • 道路交通車両の脱炭素化
  • 地域ごとのGHG排出削減
  • グローバル経済におけるGHG排出削減

報告書では技術開発だけではなく、自転車の利用の促進をはじめ、脱炭素化に向けたあらゆる方策に言及されたものとなっている。

UK Government publishes Transport Decarbonisation Plan(RENEWABLE ENERGY MAGAGINE 2020/4/2)

報告書:Decarbonising Transport Setting the Challenge

中国に迫るトルコの地熱エネルギー

トルコのニュースエージェンシーである「Anatolia Agency」によると、地熱発電のランキングにおいて、トルコが大きく拡大したという。「Think Geo Energy」が伝えている。
トルコの地熱発電の総発電容量は、2008年には30MWだったが、2018年末には1,526MWにまで拡大した。熱利用も進んでおり、温泉や温室の暖房にも使われている。
ただ現状では、熱の直接利用については、中国が圧倒的に多く、トルコはそれに次ぐ位置にある。
トルコ地熱協会のOrhan Mertoglu会長は、「発電のポテンシャルは4,500MW、熱利用は60GWあるという。特に暖房においては、天然ガスより70%も安く提供している」と述べている。1MWあたりの建設単価は風力発電の方が安いが、風力発電の設備利用率が35~40%であるのに対し、地熱発電は95%となっており、発電単価は低い。さらにMertoglu氏は、地熱温室についても、さらなる拡大が続くことを示唆している。
地熱エネルギーのポテンシャルについては、Mertoglu氏らは、2021年5月に開催される世界地熱会議で報告する予定で、概要はすでに公表されている。

Turkey only outranked by China in direct utilization of geothermal energy(Think Geo Energy 2020/4/4)

2019年、世界の新設電源のうち4分の3は再エネ

2020年4月6日、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、年次統計「IRENA’s annual Renewable Capacity Statistics 2020」をまとめ、公表した。これによると、2019年には世界中で176GWの再エネが新設された。これは新設された全電源のうち、およそ4分の3を占める。
年次統計によると2019年1年間で、再エネは7.6%増加。そのうち54%はアジアでの開発となっている。しかし、2018年に開発された再エネは179GWとなっており、伸びに鈍化が見られる。
全発電設備の発電容量に対する再エネの割合は、2018年末の33.3%から2019年末には34.7%へ上昇。火力など、非再エネの発電所は、アジア、中東、アフリカでは増加しているが、北米とヨーロッパでは廃止措置が上回っている。
IRENAのFrancesco La Camera事務局長は、「再エネは電力市場と消費者を(化石燃料などの)ボラティリティから守り、持続可能な成長を刺激する、費用対効果の高い電源」だと述べる一方、「持続可能な開発と気候変動の緩和にはさらに多く(の再エネ)が必要」と述べている。再エネへの投資をさらに増やしていく必要があるということだ。また、促進させていく政策も必要となる。
分野別では、太陽光発電が98GW、風力発電が60GWとなっており、この2つが新規電源の大半を占める。一方、水力、バイオマス、地熱、海洋エネルギー(波力や潮汐力など)は、それぞれ12GW、6GW、0.7GW、0.5GWとなっている。

Renewables Account for Almost Three Quarters of New Capacity in 2019(IRENA 2020/4/6)

Teslaの定額太陽光発電サービスで、撤去費用などに疑問

「Electrec」の報道では、Tesla初期の住宅用太陽光発電のサブスクリプションサービスで、懸念が指摘されているという。
初期費用ゼロで住宅用太陽光発電を設置し、毎月定額で支払うというサービスは、すでに日本で提供されているが、米国でも同様のサービスをTeslaが導入している。
いわゆるサブスクリプションモデルで、およそ1年前にサービスをスタートさせており、Teslaの太陽光発電事業の主要なサービスとなっている。最も低額のサービスの場合は、毎月の支払額は50ドルとなっている。
問題となっているのは、サービスを終了するときに支払う撤去費用だ。Teslaは当初、1,500ドルだとしてきたが、カリフォルニア州など一部地域では2,500ドルとなっているという。
実際に、撤去費用は見積もりが必要だが、価格の曖昧さが、問題だという。
太陽光発電業界の消費者レビューサイト「SolarReviews」は、こうした問題を取り上げ、現在のサービスでTeslaと契約しないように消費者によびかけている。
SolarReviewsによると、契約書においては、月額料金の変更や撤去費用に上限が示されていないことが問題だという。そのため、月額料金の引き上げに対し、撤去しようとすると、予期しない価格が請求される可能性があるということになる。

Tesla updates its solar subscription program – making cost of removing system vague(electrek 2020/4/6)

GE、送電網の柔軟性に対応したインバータ制御に取り組む

General Electric(GE)は、自社のインバータを基盤とした、送電網の安定化のための制御技術の開発に取り組む。
GEは太陽光発電に対応したインバータ「PV LV5」を提供している。このPV LV5はすでに世界で合計26GWの再エネ設備に導入されている。
火力発電所などで使われている発電機は同期発電機であり、電圧や周波数の変動に対し、元に戻そうとする能力があり、送電網の安定に寄与している。しかし、太陽光発電や風力発電の発電機そのものはそうした能力を持っていない。送配電網への安全で柔軟な連系のため、仮想同期発電機制御の技術開発が今まで進められてきた。
GEは、今回のインバータ制御技術の開発で、より大量の太陽光発電を、さらに確実にグリッド上に展開できるとしている。
すでに今回の開発で、米国エネルギー省(DOE)の太陽エネルギー技術局(SETO)から420万ドルの資金をGEは調達しており、今回の取り組みを通じて、高度な送電網制御、システムモデリングなどを含む、包括的なソリューションの開発を目指す。

General Electric works on grid-forming inverter controls(pv magazine 2020/4/6)

GE press release

ドイツで成長する蓄電池システム

蓄電池技術はドイツで大きな成長をとげているという。しかし、まだ新しい市場であるため、価格や容量の点でまだ導入は簡単ではない。このことについて、「Clean Energy Wire」が報告している。
ドイツでは2018年末までに12万5,000台の住宅用蓄電池(HSS)が導入されており、総容量は930MWhとなっている。この容量は中規模の揚水発電所に相当する。また、系統安定用蓄電池(LSS)は2018年には59台が設置され、総容量は550MWhに達している。(産業用蓄電池については、今回は調査できなかった)
いずれもリチウムイオン電池が導入されており、導入コストは住宅用で1,150ユーロ/kWh(13万8,000円・1ユーロ=120円換算)、系統安定用で約800ユーロ/kWh(9万6,000円)となっている。
再エネのシェアが急速に高まっているドイツは、蓄電池技術の実験場となっている。再エネ拡大と原子力発電および石炭火力発電の段階的な廃止には、蓄電池能力の向上は不可欠だ。

Battery storage systems see major growth in Germany – study (Clean Energy Wire 2020/4/7)

(Text:本橋 恵一)

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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