テスラの自動運転は、バックアップですらレーダーを使わない、とイーロン・マスクが断言。開発競争の勝者になったのか。 | EnergyShift

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テスラの自動運転は、バックアップですらレーダーを使わない、とイーロン・マスクが断言。開発競争の勝者になったのか。

テスラの自動運転は、バックアップですらレーダーを使わない、とイーロン・マスクが断言。開発競争の勝者になったのか。

2021/04/17

テスラはEVだけではなく、自動運転技術の開発にも注目が集まってる。イーロン・マスクは、テスラの自動運転は「バックアップ用ですらレーダーを使わない」と断言した。GoogleのWaymoと正反対のアプローチであるこの発言は何を意味するのか。日本サスティナブル・エナジー代表取締役の大野嘉久氏によると、テスラは他社の追随を許さないレベルにまできているという。

完全自動運転はほぼ実用化の段階に

米電気自動車大手テスラは完全自動運転(Full Self-Driving/FSD)のベータ版(正式版をリリースする前の試作品)を2020年10月に発表しており、一部のユーザーと社員に限定して利用されている。その最新版はFSD Beta Version 8.2だ。

2021年4月9日に、ユーザーが「自らスピードを調節することなく、アクセルを踏むことさえなくFSDだけで外出先の駐車場から家に帰ってくることができた」と、その一部始終を記録したサマリー動画(全長2分20秒)とともにツイッターで報告している。

このビデオをごらんいただきたい。

確かに、駐車場から出る時は通行車両がなくなるまで待ち(0:07)、走り出してT字路を正しく曲がり(0:21)、一時停止が必要な "STOP" 標識でも正しく停まり(0:36)、信号のない交差点でも交差道路の車がなくなってから右折し(0:49)、最終目的地の家に着いたら自動的に車庫に入っている(1:59)。

信号とも混同しかねない赤や青に点滅するネオンもあったが(0:50)、惑わされることなく通過している。こうした点も、AIが正しく判断している証拠の一つと言えよう。

もはやテスラの自動運転技術は実用化レベルにかなり近づいてきた

次期バージョンではレーダーを使わず、人間と同じシステム(カメラのみ)に イーロンマスクが断言

テスラのイーロン・マスクCEOは、上記ツイートが投稿された翌日10日に返信。

大幅に改良されたFSD Beta Version 9.0のリリースが既に準備段階に入っている。とりわけ曲がりにくい角や悪天候における運転が改善されているが、そのうえレーダーを廃止してカメラからの情報だけで運用することにした」とリツイートし、これが大きな注目を集めている。

なぜなら、一般的な自動運転システムでは周囲の情報を正しく取得するために、レーザー光線で周囲の物体との距離を測定する「LiDAR(Light detection and ranging)」や、高周波の電磁波で距離を測る「ミリ派レーダー」、あるいは超音波など数種類のセンサーを用いている。

テスラは以前からLiDARを使わないと明言してきたが、新しくリリースされるFSDバージョン9.0ではレーダーさえも使わず、カメラの情報だけをAIで解析する方式になる。つまり人間と同じシステム(視覚情報を頭脳で判断)となるが、それがひいては安全性を高めるだけでなく、大幅なコストダウンにもなるとイーロンマスクはいう。

https://twitter.com/elonmusk/status/1380599694154362882

カメラとレーダーから異なるデータが出てきた場合、どっちが正しいと判断するのか?

というのも、多くの自動運転システムでは安全性を高めるために可能な限り多くのデータを判断材料として使おうとする。

これに対して、イーロン・マスクは「カメラとレーダーから異なるデータが出てきた場合、どっちが正しいと判断するのか? カメラの方がずっと正確なので、その情報に集中した方がよい」という考え方を述べている。

さらに、別のユーザーからの「バックアップ用にもレーダーは使わないのか?」という質問に対しても「使わない(Remove)」と断言した。

GoogleのWaymoとは正反対のアプローチだが、テスラのデータは1,000倍ある

これは、テスラと対抗する米ウェイモ(グーグル系の自動運転開発会社)の陣営と正反対のアプローチである。

センサーを満載したウェイモの自動運転車が一台あたり約25万ドル(およそ2,700万円)するため法人にしか売れないのに対し、FSDつきのテスラ車は約3万7,000ドル(およそ400万円)にて買えるので一般人でも手が届く価格に収まっている。しかし、この大きな価格差(約7倍)が両陣営の安全性にも大きな影響を及ぼしている。

なぜなら、テスラは既に販売しているFSD機能つきの車両から膨大なデータを集積してAIの開発に用いているのに対し、高額なウェイモは実車両の数が少なく、したがって運行データもテスラよりずっと少なくなってしまう

ある専門家は両社のデータ量を比較した場合、「テスラはウェイモの千倍以上の運行データを集めている」と解説しているが、それが事実ならウェイモはテスラより「7倍」も高価でありながら、運行データはわずか「千分の1」にとどまっていることになる。

したがってテスラは試作段階でウェイモを大きく引き離しており、もはや自動運転技術の勝者になってしまったのではなかろうか。


Waymo

FSD Ver 9.0はサブスクリプションも可能に

ベータ版を特別な訓練を受けた人ではなく一般のユーザーに使用させるというテスラの方針に対しては、安全性の観点から多くの批判が寄せられたが、今のところ事故の報告例は一件もない*というので、すでに驚異的な技術レベルにまで高まっている事は間違いない。

そして、この技術が「ベータ」から本格運用に移行した暁には、移動に困難が伴う多くの人々を助けることになるであろう。

とりわけ車椅子をご利用の方々、車椅子のご利用も難しい方々、そして視覚に障害をお持ちの方々などは、移動における安全性と費用の両面で大きく改善されることが考えられるうえ、精神的にも助けられるであろう。

その価格は現状(Ver 8.2)だと1万ドル(約109万円)をテスラ車購入時に追加で注文する方法しか用意されていないが、2021年5月からはサブスクリプション方式でも利用が可能となる模様。その場合は月額100ドル(約1万900円)の支払いとなる。

なおVer 9.0のリリースは2021年4月下旬と見られていたが、最新情報では5月あるいは6月へと先送りされた。テスラのスケジュール見直しは日常茶飯事なので、大きな期待を抱きつつ気長に待った方がよいだろう。

テスラの自動運転技術の紹介動画(2019年)

*注:テスラ車の自動運転で事故が発生したのは「ベータ」以前の時代。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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