系統最適化技術を提供するベルギーのAmpacimonは2021年1月13日、地中送電線の監視技術を持つ、スペインのDIAEL社を買収したと発表した。今回の買収によって、送電線や変電所のモニタリング技術などが強化され、再生可能エネルギーの大量導入に欠かせない系統最適化運用における提供サービスが大幅に拡大するという。
再生可能エネルギーの大量導入において、系統運用者が需給を瞬時に調整して系統全体の信頼性を維持する周波数調整や、系統の不安定化を防ぐ系統のフレキシビリティが欠かせない。系統のフレキシビリティ関連マーケットは、すでに欧州を中心に拡大中だ。
2010年設立のベルギーに拠点を置くAmpacimonは、系統運用者に系統混雑情報を管理・予測するAmpacimon Dynamic Rating(ADR)を提供している。
ADRは、送電線に設置したスタンドアローンセンサーで振動、温度、たるみ、風速などを測定。系統の最大容量を測定するとともに、最大2日前までに最適な送電容量を予測することが可能だという。系統運用者は、系統容量をリアルタイムないし、予測情報をもとに、送配電網の安定化と需給調整を実施していく。
Ampacimonによれば、最適な送電容量を算出することで、再エネをうまく系統に流し、さらに系統混雑コストを削減することができるという。また既存系統の最大限の活用が可能なため、系統や変電所などの増設回避にも寄与するとしている。
最適な系統運用に向けたスマートグリッド技術は、今後、急成長が見込まれている。
送電線や変電所のモニタリング技術の強化に向けて、Ampacimonは2021年1月13日、スペインの地中ケーブルモニタリング企業であるDIAEL社を買収したと発表した。今回の買収によって、DIAEL社が持つ地中ケーブル監視技術ならびに、地中ケーブル製品を組み合わせることが可能となり、急成長するスマートグリッド市場でさらなる拡大を目指していく。
マドリードの工科大学からスピンオフしたDIAEL社は、部分放電を検出することで、地中ケーブルの状態と変電設備のモニタリングに強みを持つ。さらに欠陥を検出するだけでなく、高度なソフトウェアを用いて、欠陥の位置を正確に特定し、その原因を明らかにすることができるのが特徴だ。これにより電力会社は、設備の不具合を早期に発見し、効果的な予防メンテナンス対策を行うことができるという。
AmpacimonのCEOであるFrederic Vassort氏は次のように述べている。
「Ampacimon初の買収を完了し、私たちの成長の第一歩を踏み出せたことを誇りに思います。そして電力供給網へさらなる革新をもたらすこの新たな共通の挑戦に向け、DIAELチームとビジネスパートナーが参入してくれたことを大変喜ばしく思います。当社の架空線サービスに地中ケーブルモニタリング技術が追加されることは、Ampacimonにとって最も理にかなった戦略的なステップであり、送電線における地中ケーブルのシェアは増加の一途をたどっています。この新たなAmpacimonとDIAELの組み合わせは、送電網事業者に向け、インフラ利用の安全な最適化ができる幅広い範囲の商品とサービスを提供し、より環境に優しいエネルギー移行を可能にするでしょう」。
DIAELのゼネラルマネージャーであるJavier Ortego氏は次のように述べている。
「進化、拡大、強化がDIAELを売却した主な理由です。私たちは当初から異なるアプリケーションで、しかし未来のスマートグリッドモニタリングを見据えた同じ環境において、Ampacimonと協力をしてきました。10年以上の経験を積んだ研究・開発チームからなる2社の技術と知見を融合することで、私たちは前進し、共同で新たなアプリケーションの開発を可能にします。DIAELチームはとても熱心であり、Ampacimonと統合後の成長が楽しみです」。
日本でも再エネ大量導入に向けて、既存系統の最大限の活用を目指す「コネクト&マネージ」が実施されている。2021年1月には、系統混雑時における出力抑制を前提とするノンファーム接続の受付が全国で始まった。
再エネの大量導入、実現に向けたコネクト&マネージが進展すれば、日本でも系統容量のリアルタイム計測など、系統のフレキシビリティ技術がますます重要になってくる。
今回の買収によって、Ampacimonが日本市場に参入するという一部報道もあったが、日本においても、系統最適化技術は拡大していくだろう。
参照
Microsoft Word - Communiqu Presse Ampacimon DIAEL - EN - 13-01-21.docx
ENG-Press-Release-Ampacimon-Korys-DEF.pdf
(Text:藤村朋弘・紺野真冬芽)
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