昨今、多くの企業が紙から製造した紙ストローを採用しています。紙ストローは一定数「まずい」という意見が挙がっており、さらにコストや耐久性はプラスチックストローに劣ります。にもかかわらず、どうして紙ストローを導入する流れが強まっているのでしょうか。
ここでは紙ストローの導入が進められる理由や実用性についてご説明します。
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昨今、多くの企業が紙ストローを導入する背景には、環境問題が関係しています。従来はストローといえばプラスチック製が一般的でしたが、プラスチックは耐久性が高く腐敗しないため「プラスチックごみ」としていつまでも残り、自然環境を汚染する原因になってしまっていたのです。
一方、紙ストローは紙から生成されているため生分解(微生物により分子レベルにまで分解)する特性があり、たとえ自然のなかに投棄されたとしてもやがて完全に分解されます。この性質により、これまでプラスチック製品により引き起こされていた「海洋プラスチックごみ問題」を解決できると期待されています。
自然環境に投棄されたプラスチックごみの多くは、河川をたどってやがて海に流れつきます。また、洗顔料・歯磨き粉の使用時や合成繊維の衣服を洗濯したときなど、私たちの日常生活のなかでもマイクロプラスチックと呼ばれるごく小さなプラスチックが放出され、これらが下水処理施設を通って海に流れ込んでいるのです。
海に流れ込むプラスチックの量は全世界で年間400万~1,200万トンと推定されており、急速に海洋環境を汚染しています。さらに、これらのごく小さなマイクロプラスチックですら自然分解されることはなく、海洋生物の体内に入り込んでいる事例が確認されています。
また、よくテレビやネットメディアで取り上げられる「ごみが打ち上げられた海岸」からも想像できるように、海中にはペットボトルやビニール袋など原型をとどめたままのプラスチックも多くあり、2019年11月には100キロものごみを誤飲したと思われるマッコウクジラの死体が見つけられています。
現状、実際の影響は未知数とされていますが、化学物質が付着したマイクロプラスチックが人体に混入することで健康状態を脅かす可能性が指摘されています。
また経済面ではすでに損害を被っており、2018年に発表された経済協力開発機構(OECD)の資料によれば、観光業・漁業に年間130億ドル(約1兆4,000億円)の損害をもたらしているとのことです。
このような背景からプラスチックごみ削減は急務と考えられ、プラスチックストローから紙ストローへの移行はその一環として進められているのです。日本では2022年4月導入を目途に、プラスチックの使用量削減・リサイクルを促す制度の策定が進められています。
日本の大手企業も続々と紙ストローへの移行を発表しています。
企業名 | 対応 |
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン | セブンカフェ用のストローを紙製、または生分解性バイオポリマー製のストローに変更 |
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 | 国内店舗のプラスチックストローを紙ストローに変更 |
ANAホールディングス株式会社 | ラウンジや機内で使用するストローを紙製に変更 |
成田国際空港会社 | 直営飲食店やラウンジで使用するストローを紙製に変更 |
株式会社ヨックモック | 全飲食店舗の提供ストローを紙製に変更 |
株式会社リンガーハット | プラスチックストローの廃止、および要望者に対する紙ストローの提供を開始 |
日本マクドナルド株式会社 | 2022年2月から、ストローを紙製にカトラリーを木製に順次切り替えると発表 |
プラスチックストローを廃止する企業は必ずしも紙ストローに移行しているわけではなく、株式会社すかいらーくホールディングスは植物由来のバイオマスプラスチック製ストロー、ワタミ株式会社は竹ストローに変更するなどそれぞれ独自のストローを提供するケースも見られます。
プラスチックストローの大量消費により生じる問題と、それに対処する紙ストローへの移行は理解できるものの、実際に紙ストローを使っている消費者はどのような感想を抱いているのでしょうか。株式会社ネオマーケティングが実施した「紙ストロー導入に関する調査」の結果によると、おおむね以下のような傾向が見られるようです。
出典:PR TIMES「紙ストロー導入、年代間で意見に差が出る結果に!「紙ストロー導入に関する調査」」
アンケート回答者1,000名のうち、64%がプラスチックストローと比較して紙ストローの使用感を「変わらない」と回答。次点で24%が「飲みにくい」、12%が「飲みやすい」と回答しています。
一方、紙ストローの耐久性に関しては明確な平均値がないものの、ネット上には「20分ほどで使えなくなるものもある」といった意見も見られます。
より本音に近い意見を見つけるため、SNSを活用してEnergyShift編集部が生の声を集めてみました。アンケート調査では、プラスチックストローと紙ストローの使用感は変わらないと回答する割合が半数を超えていたものの、SNS上では以下のようにネガティブな意見が目立っています。
“紙ストローの舌触りやっぱり嫌すぎるなぁ”
“レジ袋は我慢できるけど紙ストローはマジで許せねえから撲滅してほしい”
“紙ストロー……なんというか、スイーツの下の敷き紙食べてる気分になるな……”
“やっぱり紙ストローは紙の味がしてだめだなー”
“紙ストローで飲むくらいやったら直飲みした方がマシ”
“紙ストローやめてほしい派。どうしたって紙の味感じるし、ふやけやすい。”
“ハンバーガー食べる時にさ…うっかり包装紙かじっちゃうじゃん?で、「うわっ紙食っちゃった!ペッペッ!」って紙を吐くじゃん?紙ストローはそれを強制されてるわけだから、永遠に口の中で紙の味が踊ってるってわけよ。全て台無しなの。”
“会社の喫茶が紙ストローになって、ほんま嫌…”
“どーーーしても口に当たる感覚が紙ストロー無理なの。妊娠中は更ににおいとか味で気分悪くなったりするし、言っても貰えなくなったらホットしか飲めなくなる”
“エコなのはわかったから紙ストローはやめてほしいな。。使わないけど。まず紙の味が邪魔で飲み物が不味い、紙がふやけて気持ち悪い、口紅のあとを拭えないし目立ちすぎる”
味についての言及に比べ、使い心地や耐久性に対する意見は少ないものの、時間が経つほどふやけることに対する不満がいくつか見られます。
紙ストローは自然環境に優しい一方、飲料を飲むときに紙の味がしてしまったり、独特の口当たりを苦手に感じてしまったりする人も珍しくありません。また味や口当たりが悪いだけでなく、時間経過によりふやけてしまう問題もあり「紙製」であるために生じる不満はいくつかあります。
このような問題を解決するための方法をご紹介します。
ステンレスやアルミなどの金属、シリコンや竹などにより製造されたストローは長く使えるため、マイストローとして持ち歩けば環境保全に配慮しつつ紙ストローを避けられます。さまざまな材質・サイズ・機能性のストローが登場しており、安いものであれば100円均一でも入手できます。素材ごとに受ける「使い心地」の印象は以下の通りです。
種類 | 使用感 |
金属ストロー(ステンレス・アルミ・チタン) | 口当たりはひんやりとしており、とくにチタンは金属特有のにおいが少ない |
シリコンストロー | 口当たりは柔らかく、ストロー自体が冷えることはないため金属のひんやり感が苦手でも使いやすい |
竹ストロー(バンブーストロー) | 口当たりは自然であり、金属やシリコンよりも違和感が少ない |
使用感のみを見れば竹ストローが優れているように見えますが、竹ストローは竹の特性により炭酸飲料に差し込んだ際に吹きこぼれるケースがあるため、それぞれに一長一短があります。また製品によって手入れ方法が異なるため、購入時には「煮沸消毒が可能なのか」や「専用の洗浄機器が用意されているのか」といった、手入れのしやすさも考慮することをおすすめします。
紙ストローがささっているものの、ストローを使わなくても飲めるドリンクはあります。そのような場合には紙ストローを抜いてしまい、いっそのこと直接口をつけて飲んでも良いでしょう。
紙ストローがふやける現象に対して不快感を覚える場合には、飲むとき以外はストローを飲料に浸さないよう意識すると軟化を防げます。飲料に浸らない程度に紙ストローを引き上げ、傾けることでカップのなかに引っかけられます。また、飲むとき以外は完全にカップから抜いてしまい、紙ナプキンのうえに置いても良いでしょう。
昨今の紙ストロー導入の背景には、海洋プラスチックごみ問題に代表されるプラスチックごみの環境汚染が関係しています。
一定数、紙ストローの使用に不快感を覚えるといった意見が見られますが、環境保全を第一に考えるとやはりプラスチックストローの使用は控えたいところ。今後、紙ストローの使用感が改善される可能性はありますが、しばらくのあいだはマイストローを準備したりストローを使わず飲んだりといった工夫が求められそうです。
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