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JPモルガン・チェース、パリ協定に基づく融資についての炭素削減目標を発表 脱炭素へ前進

JPモルガン・チェース、パリ協定に基づく融資についての炭素削減目標を発表 脱炭素へ前進

EnergyShift編集部
2021年05月21日

2021年5月13日、米国の金融会社で、全世界で3.7兆ドルの資産を有するJPモルガン・チェースは、融資活動をパリ協定の気候目標に合わせるための取り組みとして、包括的なステップを発表した。2020年秋には、パリ協定に沿った融資コミットメントの一環として、石油・ガス、電力、自動車製造部門の2030年炭素強度目標を発表しており、これをさらに進めたことになる。また、あわせて目標設定の方法と今後の進捗状況を確認するための新しい手法「Carbon CompassSM」を発表した。

JPモルガン・チェースの会長兼CEOであるJamie Dimon氏は、「気候変動に取り組むためには、企業と政府が一丸となって野心と協力をしなければなりません。パリ協定に沿った目標を設定することは、低炭素経済への移行を加速し、パリ協定の目標を達成するための重要なステップです。JPモルガン・チェースは、世界中のお客様と協力して排出量を削減するとともに、自社の事業をカーボンニュートラルに保つことで、自らの役割を果たすことを約束します」と述べている。

JPモルガン・チェースは、2020年10月にパリ協定に沿った融資コミットメントを初めて発表した。これは、2050年までに排出量を正味ゼロにするための道筋をつけるために、顧客と協力して短期的な行動を推進することを目的としたものだ。この取り組みの一環として、JPモルガン・チェースは、カーボン・トランジション・センターを設立し、サステナビリティに焦点を当てたファイナンス、リサーチ、アドバイザリー・ソリューションを顧客に提供している。

さらに最近では、JPモルガン・チェースの商業銀行部門が、再生可能エネルギー、効率化技術、持続可能な金融、農業・食品技術などの企業の発展と成長を支援するために、グリーン・エコノミー専門の産業チームを立ち上げた。顧客がイノベーションに必要な資本にアクセスできるよう、JPモルガン・チェースは2021年4月に、気候変動に対処し、持続可能な開発に貢献する長期的なソリューションを推進するため、グリーン活動への1兆ドルを含む10年間で2.5兆ドル以上の融資と促進を行うという目標を発表した。

新しい手法であるCarbon CompassSMは、パリ協定に沿った目標設定、顧客の炭素強度の測定、継続的な進捗の評価、炭素パフォーマンスの考慮をビジネス上の意思決定に組み込むためのアプローチを示す方法論だ。目標は、国際エネルギー機関(IEA)の「持続可能な開発シナリオ」など、信頼できる第三者機関のエネルギーおよび排出シナリオに基づくものとなっている。

目標値は以下の通り

自動車製造業

2030年目標:新車の製造に伴うCO2排出原単位と、その自動車からの走行時の排出量を41%削減する。

発電事業

2030年目標:このセクターの気候変動への影響の大部分を占める発電のCO2排出原単位を69%削減する。

石油・ガス

2030年目標:石油・天然ガスの下流での燃焼による排出量の減少と再生可能エネルギーによる発電量の増加を反映し、事業活動におけるCO2排出原単位を35%削減、最終用途におけるCO2排出原単位を15%削減する。

今後、JPモルガン・チェースは、パリ協定に沿った融資のコミットメントに、さらに多くのセクターを統合していく予定。次のステップとして、2022年末までに航空部門と紙パルプ部門の目標設定を分析する予定。

JPモルガン・チェースのチーフ・リスク・オフィサーであるAshley Bacon氏は、「当社は、お客様が低炭素社会に移行するのを支援するために、目標を慎重に選択し、リソースを投入してきました。当社のCarbon CompassSM手法は、炭素効率を向上させる目的で、グローバルな顧客に資本とアドバイスを提供するインセンティブを生み出し、当社をネット・ゼロへの道へと導くものです」と述べている。

また、この日は2020年版ESGレポートも発表した。レポートでは、JPモルガン・チェースが事業を運営する上で、環境・社会・ガバナンスに関する事項をどのように考慮しているか、また、ステークホルダーのために事業をどのように活用しているかについての最新情報を提供している。また、気候関連のリスクと機会を管理するためのアプローチに関する情報も含まれており、これは気候関連財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)の勧告に基づいたものとなっている。

具体的な内容としては、2020年に事業全体でカーボンニュートラルを達成し、維持していくものとなっている。目標達成の状況は以下の通り。

エネルギー効率の向上

  • 約4,300の支店と50の商業施設にLED照明システムを導入し、各ビルの照明関連の電力消費量を約50%削減。
  • 3,400以上の支店にエネルギー効率の高いビル管理システムを導入し、各拠点のエネルギー使用量をより適切に管理・監視。

再生可能エネルギーの導入

  • 900の支店に約30MWの太陽光発電設備を設置し、各支店の電力需要の約35%を賄うことが可能。
  • 米国および英国の本社ビルに40MWの太陽光発電設備を設置する予定。
  • 108MW、22基のタービンを備えた風力発電所の開発に協力。この風力発電所は、世界で必要とするエネルギーの約14%に相当する量を供給。

さらに今後の目標としては、以下の通り。

  • 2017年比で、2030年までに自社のビル、支店、データセンターの運営に伴う温室効果ガスの排出量を40%削減する。
  • 2025年までに、再生可能エネルギーの目標の70%以上を満たす。
  • 2025年までに自社で保有する全車両を電気自動車に移行する。
  • 2017年比で、2030年までに全世界の水使用量を20%削減する。
  • 2017年比で、2025年までにオフィスでの紙の使用量を90%削減し、2021年末までに認証された供給源からの紙を100%購入する。
  • 責任ある第三者機関を通じて、E-waste(電子機器廃棄物)を100%埋立てから回収する。

この他、JPモルガン・チェースは2021年4月、技術と市場の革新を支援するコミットメントの一環として、Sustainable Aviation Buyers Alliance(SABA)の創設メンバーに加わった。SABAは、高品質の持続可能な航空燃料(SAF)への投資を促進し、SAFの新たな生産と技術革新を触媒し、メンバーの政策決定への関与を支援することで、航空燃料のネット・ゼロへの道を加速することを使命とする団体である。

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