安全対策費など建設コストの上昇が指摘されてきた原子力は2030年時点でも最安の電源なのか。経済産業省は7月12日、2030年には太陽光発電がもっとも安い電源になるという新たな試算を公表した。経産省が、原発をおさえ太陽光発電が最安の電源になると将来試算を提示したのは今回がはじめて。
経産省は7月12日、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会の作業部会である発電コスト検証ワーキンググループ(第7回)を開き、2015年以来6年ぶりとなる2030年の電源別発電コストの試算を公表した。
試算によると、事業用太陽光発電が1kWhあたり8円台前半から11円台後半まで低下し、2030年にはもっとも安い電源になる。2020年時点の発電コストが12円台後半であるため、最大で4円近く安くなる。
一方、これまで最安とされた原子力は、安全対策費など建設コストの上昇を受け、1kWhあたり11円台後半になると試算した。原子力をめぐっては、2004年の試算で5.9円/kWhだったが、東京電力福島第一原発事故後の2011年には、廃炉や除染費用などが加わり、8.9円以上に上昇。2015年の前回試算では安全対策費の増加を踏まえ、10.3円以上としたものの、原発事故を経てもなお、原子力がもっとも安い電源と位置づけていたが、その前提がはじめてくつがえる結果となった。
2030年に向けては、脱炭素実現の切り札とされる太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーのコスト低減が進む。
2020年時点で17円台後半だった住宅用太陽光発電は、9円台後半〜14円台前半にまで低下する。また陸上風力は9円台後半〜17円台前半に、洋上風力は2030年時点では26円台前半になると試算した。
このほか、中水力が10円台後半、地熱16円台後半、バイオマスはもっとも安くて14円台前半とした。
一方、化石燃料でもっとも安い電源と試算されたのがLNG(液化天然ガス)火力で、10円台後半〜14円台前半となった。
出典:発電コスト検証ワーキンググループ(第7回会合)
大手電力会社や一部研究機関などは、エネルギー基本計画の改定にあたって、原子力のコスト優位性や稼働率の高さなどから、新増設を含めた原子力の最大限の活用を訴えてきたが、その根拠としたコスト優位性が今回の試算によって崩れかねない状況だ。
今回の試算結果は、エネルギー基本計画の改定議論にも影響を与える可能性がある。
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