デロイト トーマツ グループは4月7日、デロイトが2021年1月~2月に13ヶ国、750人のビジネスリーダーを対象に実施した世界調査「気候変動に関する企業経営者の意識調査2021」を発表した。すでに経営者の30%以上が、気候関連の災害によって自社の業務に影響が出始めていると回答し、4分の1以上は資源不足に直面しているという調査結果が出た。
今回の調査によって、気候変動はもはや漠然とした脅威ではなく、さまざまな分野ですでに影響を及ぼしており、世界の経営者の80%以上が気候変動を懸念していることが浮き彫りとなった。とりわけ気候変動について最も高い懸念を示したのは米国、英国、中国、オーストラリアの経営者だった。
経営者の27%以上が、施設の損壊や労働力の途絶など、気候変動がすでに自社の業務に影響を与えていると回答し、ビジネスモデルやサプライチェーンにもたらす混乱が増加している現状を明確にした。
また、経営者の26%が食糧や水、エネルギーなどの資源不足、資源コストの上昇に直面しているという。
さらに、ビジネスリーダーたちは、オーストラリアでの壊滅的な森林火災や、テキサス州で大混乱を引き起こした冬の嵐などの気候関連事象が、世界中のコミュニティに影響を与え、保険コストの大幅な増加にもつながるとの認識も示した。
気候変動の最悪の影響を軽減できるのか。経営者の多くが懸念を示すその一方で、「世界が気候変動への対応の転換点にある」と考えている経営者は60%近くになったという。そして、63%の経営者が「すぐにアクションを起こせば、気候変動の最悪の影響を抑え込むことができる」という見解に同意した。
「すでに取り返しがつかない状況に陥っている」と考える経営者は34%にとどまり、手遅れになる前に気候変動に社会として立ち向かうことができる、という期待感の広がりを示すとしている。
COVID-19や景気低迷により、気候変動に対する取り組みは一時的な失速を余儀なくされている。
経営者の65%がコロナ禍の影響で、「気候変動に関する取り組みをなんらかの形で縮小する必要が出てくる」と回答した。ただし、25%の経営者は今後数ヶ月以内に「気候変動に関するアクションを加速させる計画である」と答えており、コロナ禍による一時的な後退はあるものの、気候変動は依然として企業のアジェンダに入っていることを指し示した。
気候変動に対して企業が注力するアクションの上位3つは以下のとおりである。
このように、自社を超え、サプライヤーや取引先などにも行動変化を働きかける動きが活発化している。
経営者が、今後、気候変動の取り組みを加速させていく動機を見ると、「投資家や株主」(38%)が最多の回答となった。気候変動への取り組みは、主にステークホルダーからの圧力によって動かされていることがわかる。しかし、それだけでなく、「従業員や社外の活動家からの要求」(35%)も動機の2位となっており、アクティビズムの役割も存在感を増してきている。
さらに、「業務や財務への直接的なマイナスの影響」(31%)も主要な動機の1つであり、「気候変動が自社の中核業務にどのように影響を与えるのか」について企業は認識を深めているという。
調査では、気候変動への取り組みを最も前進させるアクションについても言及している。
最多回答(35%)が、「より良い他者教育、気候変動に関する研究の強化」であり、次に「アドボカシーや公益に関する取り組みへの関与」(24%)を挙げた。「関連組織やプログラムへの金銭的支援」(16%)や、「個人の行動変容の奨励と優先付け」(3%)を大きく上回る結果となった。
変化を起こしていくのは、金銭的支援や個人行動の変容よりも、共同のアクションと関与が最も重要であると経営者が考えていることが明らかとなった。
また、2021年11月に開催予定の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)へ、過半数を超える企業が参加を計画しており、各企業の個別のアクションという枠を超えて、公益に資する共同アクションとして社会変革を起こしていく重要性を世界中の経営者が感じているとまとめている。
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