国交省も脱炭素に本腰 新築住宅6割に太陽光導入など2,135億円 2022年度概算要求 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

国交省も脱炭素に本腰 新築住宅6割に太陽光導入など2,135億円 2022年度概算要求

国交省も脱炭素に本腰 新築住宅6割に太陽光導入など2,135億円 2022年度概算要求

2021年08月27日

国土交通省は8月26日、2022年度予算の概算要求を発表し、一般会計で2021年度当初予算比18%増となる6兆9,349億円を求めた。地球温暖化の影響により豪風雨などの災害が年々激しくなる中、防災・減災対応に1兆5,023億円を投じたほか、脱炭素に2,135億円を計上した。

2030年新築戸建ての6割に太陽光、達成に向け1,384億円

国交省の2022年度予算の概算要求がまとまった。

今回の概算要求の柱は3つだ。ひとつ目が、地球温暖化の影響を受け激しさを増す風水害や地震災害への対応、ふたつ目が2050年脱炭素、2030年46%削減に向けたグリーン化、最後がポストコロナ対策である。

なかでも重点的な予算配分をしたのが、住宅や建物の脱炭素化などだ。2,135億円を計上した。

国交省が所管する運輸、民生(家庭・業務)部門は、日本のCO2排出量の約5割を占めており、とりわけ民生部門の排出量は約3割と多く、脱炭素実現には大幅な削減が欠かせない。

国交省や経済産業省、環境省の3省は2030年までに新築住宅の6割に太陽光発電を導入する目標を掲げており、実現に向け、国交省は前年度比36%増となる1,384億円を計上した。

具体的には、建設から撤去までのライフサイクルにおけるCO2排出量がマイナスとなるLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅や、徹底した省エネと太陽光発電などの再生可能エネルギーを搭載した脱炭素住宅であるZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)などの普及拡大に向けた支援の強化。また、ビルなどの建物の脱炭素化に向け、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の支援も強化する。

さらに、新築だけでなく既存住宅の支援も拡充することで、一般家庭の省エネを加速させたい考えだ。

国交省では家庭の省エネ促進に向け、2025年度から新築住宅を対象に外壁や窓などの断熱性能を高めることで省エネ基準を満たすよう義務化する方針だ。すでに8割を超える新築住宅が省エネ基準に適合しており、義務化に対する反発も少ない。

ところが、5,000万戸を超える既存住宅で省エネ基準を満たすのはわずか11%。一般消費者にとって、費用がかかる省エネ改修は負担が重く、既存住宅における省エネ促進は長年の課題だ。国交省では既存住宅の省エネ改修への支援も強化する。一部報道では、1件あたり最大で50〜100万円の補助をする方向で調整しているという。

このほか、ZEHへの取り組みが遅れる中小工務店なども支援する。

港湾や海運の脱炭素に682億円

住宅や建物に次ぐ金額を予算計上したのが、港湾や海運分野だ。国交省は前年度比77%増となる682億円を求めた。

政府は2050年脱炭素の切り札のひとつに洋上風力をあげており、現状1.4万kW程度の設備容量を毎年100万kWずつ増やし、2040年までに3,000〜4,500万kW導入する計画だ。大量導入に向けては、港湾内での製造が欠かせないため、国交省主導で港湾基地を整備する。

このほか、海運の脱炭素に向け、船舶燃料をLNG(液化天然ガス)、水素・アンモニアに転換するための支援などにも取り組む。

また鉄道などに比べてCO2排出量が多い航空分野の脱炭素も進める。

36億円を計上し、航空燃料を化石燃料由来から食料用廃棄油など、いわゆるSAF(持続可能な航空燃料)転換に向けた対策を進める。さらに国交省は空港の脱炭素も掲げており、空港や周辺の公有地に太陽光発電の導入を加速させる方針だ。

このほか、運輸部門におけるCO2削減には、自動車からの排出量の削減が欠かせない。EVなど車の電動化やEV充電スタンドなどインフラ向けに9億円を計上した。

国交省では今回の概算要求によって、一般消費者を巻き込み、住宅や建築物、さらに自動車、航空機、船舶分野における脱炭素を実現したい考えだ。


国土交通省 令和4年度 予算概算要求概要 より

(Text:藤村朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

エネルギーの最新記事