東芝は2021年3月22日、常温環境下において世界最高スピードで、二酸化炭素(CO2)を燃料や化学品の原料となる一酸化炭素に変換できるCO2資源化技術「Power to Chemicals」を開発し、年間最大1トン-CO2の処理量を達成したと発表した。
東芝が開発を進める「Power to Chemicals」は、CO2を電気化学変換によって、燃料や化学品の原料となる一酸化炭素に変換する技術である。
今回、変換する電解セルをスタック化(積積層)することで単位設置面積あたりの処理量を高め、郵便封筒(長3)サイズの設置面積で、年間最大1トンのCO2を処理することができたという。これは、常温環境下で稼働するCO2電解スタックにおいて世界最高の処理速度になる(東芝調べ)。
脱炭素社会の実現に向けて、工場などの産業部門におけるCO2排出量の削減が不可欠となっている。
特にCO2排出量が多い製鉄・化学分野における削減は喫緊の課題となっており、CO2を電気が関与する化学反応(電気化学反応)により有価物へと資源化し、有効利用する技術の開発が進められている。
東芝は、再生可能エネルギーの余剰電力を利用して電解電極表面での電気化学反応により資源化する「Power to Chemicals」技術の開発を推進してきた。
こうした技術を用いたCO2を資源化する設備は、基本的に既設の工場内に設置されることとなる。大量のCO2を限られたスペースで処理することが求められ、実用化にはCO2処理能力の向上が必須だ。
東芝は、独自の触媒電極の開発により、CO2処理能力の指標である電流密度を飛躍的に向上させることに成功*1。実用化に向けてさらなる処理量の増加には、電解セルを積層させるスタック化が有効だが、スタック化すると電解時におけるエネルギー損失から熱が発生し、CO2処理量が低下するという課題があった*2。
そこで東芝では、電解セル内部にこの熱を冷却する冷却機構を設けた独自のCO2電解スタック構造を開発。電極間に冷却流路を設けることで熱の発生を抑え、CO2変換反応の停滞を防ぐという。
冷却流路は、発熱量にあわせて設計が可能なため、用途に応じたセルの大型化や積層化に対応できるとする。この技術により、電極面積100cm2のセルを4つ積層したCO2電解スタックを試作して動作検証した結果、常温環境下での世界最高スピードとなる60NL/h*3のCO2処理速度(年間最大1トン-CO2)でのCO2変換を実現した。
今回開発したスタックは、幅23cm×奥行13cm×高さ23cmとなり、設置面積は郵便封筒(長3)程度になる。例えば、1日のCO2排出量が200tとなる清掃工場であれば、2,000m2(バスケットコート5つ分)程度の設置面積で処理ができると試算する。
東芝は今後、今回開発したCO2電解スタックのスケールアップ(電解セル積層数の増加・大型化)、およびシステムへの組み込み実証を進め、再生可能エネルギーを活用してCO2の資源化を行う「Power to Chemicals」の2020年代後半の実用化を目指すとしている。
*1:CO2から化学品原料への変換を世界最高レベルで達成
*2:電解時のエネルギー損失から発生する熱の影響により副反応である水素発生が生じ、CO2処理量が低下する。
*3:0℃、1気圧の標準状態における体積(L)
プレスリリース:常温環境下において世界最高スピードでCO2を価値ある資源に変換可能なCO2資源化技術を開発 2021.3.22
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