新電力大手のF-Powerは2021年3月24日、東京地裁へ会社更生法の適用を申請し、同日保全管理命令および強制執行等にかかる包括的禁止命令を受けた。
F-Powerは、ファーストエスコ(現・エフオン)の電力ビジネス事業を会社分割により継承し、2009年4月に設立した大手新電力の一角だ。
特定規模電気事業者(PPS)として自社では発電設備を持たず、グループ会社の新中袖発電所や、東京都公営水力発電所、民間企業が持つ自家発電所のほか、日本卸電力取引所(JEPX)から電力を調達し、小売販売を展開。供給先は官公庁はじめ企業、工場、店舗、一般家庭まで拡大し、2018年4月には契約電力が400万kWを突破。帝国データバンクによると、新電力最大手となり2019年6月期には売上高約1,606億円を計上していたという。
しかし、近年は大手電力会社や他の新電力との競争が熾烈となり、電力供給において事業者向け、および一般家庭向け両部門での落ち込みをよぎなくされ、2020年6月期の売上高は約722億円に減少していたという。
事業環境が悪化する中、今冬の電力需給のひっ迫、それに伴う市場価格の高騰により、電力調達コスト負担が増加するなど資金繰りが悪化。自主再建を断念し、法的手続きにより再建を目指すことになった。
F-Powerによると、「当社の事業に対して複数のスポンサー候補者が支援について検討しており、今後、保全管理人の元でスポンサー選定手続きが実施されることになる」としている。
今回の事態を受け、電力・ガス取引監視等委員会は、「小売電気事業を引き続き行うこと、今後の電力供給には全く支障はないこと、電気の使用者との契約内容については変更することなく電力供給を行うことの報告を受けている」とコメントしている。
帝国データバンクによると、申請時の負債は債権者約315名に対し約464億円にのぼるという。新電力の大型倒産は、2016年4月に破産した日本ロジテック協同組合の負債約162億8,200万円を上回り、過去最大となる。
卸電力価格の急激な高騰によって、小売電気事業の休止や新規契約の受け付けの一時停止を行う新電力はあったが、破綻はF-Powerがはじめてだ。しかし、卸価格高騰は多くの新電力の財務を毀損しており、ドミノ倒産が起こるのか。市場関係者は注視している。
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