ソーシャルレンディングと呼ばれる金融サービスで、投資家から集めた多額の資金を返済できなくなっていた株式会社グリーンインフラレンディングが4月9日、東京地方裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は128億円にのぼるという。
破産手続きの開始決定を受けたのは、投資家から預かった資金をもとに、太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギー事業を運用していたグリーンインフラレンディングだ。
同社は、2016年7月に、親会社であるJCサービスが設立。設立とほぼ同時に、インターネット上で融資を仲介するソーシャルレンディング大手のmaneoマーケットと業務提携を結び、maneo社を通じて全国の投資家から200億円以上を集めていた。
しかし、2018年から元本の返済や配当の支払いが滞り、帝国データバンクなどによると延滞額は126億円を超えてしまう。maneo社は2018年6月、「グリーンインフラレンディングの融資先である親会社のJCサービスが、投資家への説明と異なる使途に一部資金を使用した疑いがある」とし、ファンドの新規募集を停止していた。
さらに、maneo社は2021年3月8日付けで東京地方裁判所に債権者破産を申し立て、4月9日に破産手続きの開始が決定した。なお、親会社のJCサービスは、3月24日に民事再生法の適用を申請し、31日に保全処分および包括禁止命令を受けている。
グリーンインフラレンディングの親会社であるJCサービスは、破産手続き開始決定に際し、次のようなコメントを発表した。
「maneoマーケットによる債権者破産の申し立ては、投資家利益をいっさい顧みないものであって、決して許されるものではない。maneo社の主張に対して全面的に争い、4月8日には第2回の審尋期日が開催され、当社からの反論に対してmaneo社が再反論を行う予定だった。しかし、3月12日、グリーンインフラレンディングが一部投資家による債権者破産を申し立てられ、対抗手段として民事再生の申請を検討したが、投資家情報をmaneo社が保有し、その情報をグリーンインフラレンディングが入手できる見込みがなく、民事再生法の申請に必要な資料を準備できず、申請を断念した」という。
今後について、JCサービスは、「JCサービスが民事再生手続きを適切に進め、太陽光発電やバイオマス発電などの開発案件の価値最大化が図られることで、JCサービスからの最大限の弁済が確保され、ひいては投資家の皆様に対する最大限の弁済につながるものと考えております」とコメントしている。
ソーシャルレンディングをめぐっては、今回のグリーンインフラレンディング以外にも、SBIホールディングスの子会社でも2月、「事業運営に重大な懸案事項」が発生。発生した損失を投資家に補填するという異例の事態に発展し、一部メディアから「ソーシャルレンディング事業から撤退検討」との報道まで出ている。
クラウドファンディングの一種であり、インターネット上で比較的簡単に出資できるソーシャルレンディングは投資家の中でも注目を集めてきたが、不祥事も多く報告されている。
しかし、今回の一連の騒動は再エネ事業への投資が原因ではない。再エネの普及拡大がさらに求められる今、一部事業者の不祥事によって、再エネ投資の逆風になることはあってはならない。今回の破産を機に、事業者は健全な投資環境の醸成により一層努めていくべきであろう。
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