EU議会の屋根上PVプログラム / 世界の主要電力会社は脱炭素の目標設定をしていない / イギリスの250億ポンドグリーン投資計画 / カナダとオーストラリアで水素燃料電池のMOU / フィリピンで地熱開発投資が進む / 2020年上半期、洋上風力への融資が過去最高に | EnergyShift

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EnergyShift(エナジーシフト)
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EU議会の屋根上PVプログラム / 世界の主要電力会社は脱炭素の目標設定をしていない / イギリスの250億ポンドグリーン投資計画 / カナダとオーストラリアで水素燃料電池のMOU / フィリピンで地熱開発投資が進む / 2020年上半期、洋上風力への融資が過去最高に

EU議会の屋根上PVプログラム / 世界の主要電力会社は脱炭素の目標設定をしていない / イギリスの250億ポンドグリーン投資計画 / カナダとオーストラリアで水素燃料電池のMOU / フィリピンで地熱開発投資が進む / 2020年上半期、洋上風力への融資が過去最高に

日本ではあまり紹介されない海外のエネルギー業界最新ニュース。EnergyShift編集部が厳選してお送りする。

フィリピン・ドゥマゲテの岩盤からでている火山の蒸気

欧州議会が、全ヨーロッパの屋根上太陽光プログラムを採択

欧州議会の委員会において、EU全体を対象とした、屋根上型太陽光発電に関するプログラムが採択された。9月の欧州議会で報告される予定。
プログラムでは、EUの屋根上太陽光のポテンシャルを満たすことを目的にしており、年間680TWhの発電量を生み出す。建物一体型太陽光発電(BIPV)と、分散型蓄電池、両方の促進が見込まれている。プログラムは欧州グリーンディールにそったものであり、2050年までにエネルギー効率の高い建物を手ごろな価格で提供する機会でもあるという。

Pan-European solar rooftop programme proposed by European Parliament Committee(Pv-Tech:2020/07/08)

世界の主要電力会社、明確な脱炭素の目標設定が遅れる傾向

SDGsに取り組むステークホルダーの団体World Benchmarking Alliance(WBA)は、7月6日に、電力会社にフォーカスしたレポート「Climate and Energy Benchmark」を公表した。これによると、全世界の主要な電力会社50社のうち、脱炭素に向けた目標設定が行われているのは4社しかないという。その4社とは、デンマークのØrsted社、イタリアのEnel社、米国のAES社、ポルトガルのEDP社。一方、脱炭素が進まない上位10社だけで、50社分の温室効果ガス排出量の半分強を占めている。
2050年までに全世界の電力需要は80%増が予測されており、脱炭素化の圧力は高まる一方だが、同時に電力業界が小さな削減の成果で満足してきた傾向があるという。
また、石炭火力の段階的廃止を計画している電力会社は50社中11社しかない。中国のCHN EnergyとChina Huaneng、インドのNTPCだけで、削減目標から超過する温室効果ガス排出量の97%になるという。
電力各社が火力発電所の建設中止と廃止を進めない限り、パリ協定の目標達成は不可能ということだ。

Report: Decarbonization of World’s 50 Most Influential Power Companies Bleak(Power Magazine:2020/07/09)

英国で2026年まで、250億ポンドのグリーン投資計画

英国の電力・ガス規制庁(Ofgem)は、2021年から2026年にかけて、250億ポンド(約3兆3,500億円)のグリーン投資計画を発表した。これは、電力とガスの供給ネットワークの改善により、温室効果ガス排出削減を目指すというもの。計画では、導管・送電会社の収益率を半減させる一方で、更なる効率化を促し、支出計画から80億ポンドの削減を提案している。これにより、消費者のガス・電気料金の負担が軽減される見込みとなる。

UK Ofgem unveils a €28bn green investment plan for 2021-2026(Enerdata:2020/07/10)

カナダとオーストラリアが水素と燃料電池技術について提携を強める

The Canadian Hydrogen and Fuel Cell Association (CHFCA) と Australian Hydrogen Council (AHC)は、ゼロエミッション水素と燃料電池の技術協力に関する覚書(MOU)に署名した。
覚書は、鉱業や運輸の分野における共同プロジェクト、市場や規格などのベストプラクティス、水素と燃料電池の利点を認識させるための広報活動、ビジネスや研究協力の促進など、カナダとオーストラリアのセクター間の協力の様々な分野を概説したものとなっている。
カナダは燃料電池の分野で世界的なリーダーシップをとる立場。一方オーストラリアは2019年に水素戦略を発表し、2030年まで低利子で3億オーストラリアドル(約225億円)の資金提供を行うとしており、持続可能な両国の雇用とエネルギーの開発につながるものになるという。

Canada and Australia to increase collaboration in hydrogen and fuel cell technologies(H2View:2020/07/10)

フィリピン、今後10年は地熱開発投資のホットスポット

Fitch Solutions Country Risk & Industry Researchによると、フィリピンでは今後10年間が地熱発電投資のホットスポットになるという。
Fitchによると、今年末フィリピンには1,928MWの地熱発電所が開発され、今後10年間でさらに2,098MWの地熱発電所が開発されるという。
ただし、石炭火力と水力への依存の高まりが、地熱発電の開発増加予測を制限しているという。
フィリピンのAlfonso Cusiエネルギー長官によると、エネルギー安全保障と再エネ拡大のために地熱発電の推進を支援しており、これはベトナムにおける水力開発支援のように最善の策だとしている。
フィリピンの一次エネルギーにおける再エネ比率は2018年は約33.2%で、ASEANの2025年目標の23%を上回っていたが、昨年は21%にまで下落している。

Philippines seen as geothermal power investment hotspot in 10 years(Philstar Global:2020/07/10)

2020年上半期、洋上風力への融資が過去最高を記録

Bloomberg NEF(BNEF)によると、2020年上半期は、コロナ危機にもかかわらず、洋上風力への投資が進み、350億ドルとなった。これは2019年1年間の投資319億ドルをすでに上回っている。
350億ドルには、オランダ沖における推定39億ドル、英国沖推定38億ドル、台湾沖推定36億ドル、フランス海域での推定54億ドル、中国での18億ドルの投資が含まれる。
洋上風力拡大の背景には、2012年以降67%に及ぶコストダウンとタービンの大型化の影響があるという。
ただし、BNEFの風力担当責任者であるHarries氏によると、下半期は減速し、来年上半期に急増するという予測だ。
大型水力発電を除く再生可能エネルギー発電への投資は、2020年上半期は1,324億ドルで、2019年上半期より5%増。陸上風力は375億ドル、太陽光発電は547億ドルとなっている。
地域別にみると、中国が最大で416億ドル、次いでヨーロッパが365億ドルとなり、米国は30%減少して178億ドルとなった。

Colossal six months for offshore wind investment in first half of 2020(Renewable Energy Magazine:2020/07/13)

(Text:本橋恵一)

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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