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新型コロナウイルスの騒ぎを超えて:地域エネルギー事業者は地域のステークホルダーとして何ができるか

新型コロナウイルスの騒ぎを超えて:地域エネルギー事業者は地域のステークホルダーとして何ができるか

2020年03月30日

今年に入り、新型コロナウイルスによる感染が日本を含め、世界各地で広がっている。感染拡大はできる限り防がなくてはいけないが、同時にその対策が暮らしや経済に及ぼす影響も考える必要があるだろう。こうした中、地域エネルギー事業者は、地域のステークホルダーとして何ができるのだろうか。日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也氏が提言する。

乗客がまばらな東北新幹線で感じた恐怖とは

毎月1~2回は東北に出かける。コンサルティング先や自治体との打ち合わせのためである。三月の第一週に往復した東北新幹線は、ほぼ1割程度の乗車率で驚いた。長年利用しているがこんなことははじめてである。

おわかりの通り、新型コロナウイルスの騒動が影響しているのは間違いない。中央の企業などが出張を控えていることと、もうひとつは感染を恐れた東北の人たちが東京に向かわないのが大きい。

私が乗った車両に数人しか乗客がいないまま出発した時、なにやら背中にぞくっとした感覚が走った。感染リスクがよぎるからではない。このまま活動自粛が続くと日本経済は取り返しのつかないダメージを受けるのではという恐怖がその原因である。後手後手に回った無能な為政者は焦り、後先考えない「やっている感」を作り出そうとする。そろそろ、あてにならず無責任な役人たちを含めた彼らとは一線を画して、前を向いた経済活動を始めるべきである。

自粛で受けるダメージを地域の連携で取り戻す

過去にも似たような事象があったことを覚えている人も多いだろう。

近くは東日本大震災の巨大な被害、昭和から平成に移った天皇崩御の前後も暗い影を経済に落とした。ただし、どちらもその原因となった事柄に終わりがあり、復興や自粛解除が人々を前に向かせた。今回の騒ぎが違っているのは、まだ終わりがどこかわからず、先が見えないことである。

一方、影響は常に弱いところに強く出る。母子家庭の収入が半減する例など、弱者や、もともと消費税額アップでしわ寄せを食っていた中小企業や地方は特に影響が大きい。

少し前置きが長くなったが、今回のテーマは、今こそ求められる地域の頑張りとそれを支える仕組みについて地域のエネルギービジネスの観点から考えてみる。

休業補償や中小企業への無利子融資など政府や自治体に求められる施策も多いが、待っているだけの手当てでは間に合わない。こんな時だからこそ、勢いのある再生可能エネルギーの普及を目指す地域や自治体新電力、地域の発電事業者など、地域活性化を目的として立ち上がった地域のプレーヤーの役割があるはずである。

提案は二つある。

ひとつは、地域の中での支援に率先して取り組むことである。もうひとつは、分散型である再生エネを柱とした活動を積極的に進めることで地域経済の循環を取り戻すことである。

地域の広いサポート役が担える地域新電力

ほとんど準備無しに発令された小中高校の一斉休校は、中央政府の一部による暴走行為ともいえる。学校生活最後のイベントを奪われ、涙を流した子供たちがいる。一方、感染を恐れた子ども食堂の中止が相次いでいるとも聞く。

ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが、卒業式が中止になった学生のためにWEBによる「リモート卒業式」を企画して話題となった。このコラムが載る頃にはたぶん実施された後ではないかと思う。

想像力が貧しくて申し訳ないが、同様の卒業イベントを企画したり、休校となった学校内で子ども食堂を開く手助けをしたりすることを、地域や自治体新電力がそれぞれの市や町で行えないかと考える。すでに行っている高齢者や児童の「見守りサービス」を拡大、適用し、共働きなどの家庭を助けることができるかもしれない。

また、新電力という電気を供給する会社として、学童関連の施設や休業に苦しむ家庭に対する臨時の特別料金を設定し、即時の適用も可能であろう。

いずれにせよ、もともと地域活性化を最終的なターゲットとしているならば、地域の有力なステークホルダーとしての存在感を具体的に示していかなければならない。地域の危機に際して何ができるかは、新電力に求められる基本的な資質であるといっても過言ではない。

新しいビジネスの展開のチャンス

もうひとつは、新しいビジネスモデルを考えたり、実行したりすることである。多くの出張やセミナーなどの集まりがキャンセルとなっている。そこで生まれる余裕の時間を新しい事業の検討を進める機会にするのである。

これまでも書いてきているように、地域の新電力は電気を売っているだけでは長続きしない。中でも地域での再生エネの拡大につながる様々な仕組みに取り組んで、推進することは重要なビジネスの選択肢である。

例えば、PPA(Power Purchase Agreement)は欧米を見ても、今後確実に増加するモデルである。ただし、そこには、クリアしなければならないいくつかの課題がある。複雑な契約や施工のコストダウンなど研究や交渉が欠かせず、手間がかかる。

同様に多くの再生エネ電力を使えるようにするためのいわゆる柔軟性では、VPP(Virtual Power Plant)などの調整力ビジネスがある。地域に眠る調整力に使える電源の調査はVPPのベースである。 さらに、地域で間違いなく必要になる自動運転などの交通革命では、ソフトの開発要素も含め複数の企業とのコラボが求められる。どの企業がどんな技術を持ち、どんな可能性を秘めているか今調べておいて損はない。

言うまでもなく、再生エネの利活用は今後成長が大きく期待できる分野である。企画、調査、モデル化、調整、交渉というパートに時間をかけるチャンスが今あると考えてもよい。小売りを超えた事業を検討する機会にするのである。

いつまでも黙って自粛しているままでは、『地域の不活性化』を招くだけである。いまこそ、事業フィールドの拡大を行い、地域に元気を取り戻すための地域、自治体新電力など地域エネルギービジネスの踏ん張り時である。ピンチをチャンスに変える。地域で求められる期待は大きい。

北村和也
北村和也

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表、株式会社日本再生エネリンク 代表取締役。 1979年、民間放送テレビキー局勤務。ニュース、報道でエネルギー、環境関連番組など多数制作。番組「環境パノラマ図鑑」で科学技術映像祭科学技術長官賞など受賞。1999年にドイツへ留学。環境工学を学ぶ。2001年建設会社入社。環境・再生可能エネルギー事業、海外事業、PFI事業などを行う。2009年、 再生エネ技術保有ベンチャー会社にて木質バイオマスエネルギー事業に携わる。 2011年より日本再生可能エネルギー総合研究所代表。2013年より株式会社日本再生エネリンク代表取締役。2019年4月より地域活性エネルギーリンク協議会、代表理事。 現在の主な活動は、再生エネの普及のための情報の収集と発信(特にドイツを中心とした欧州情報)。再生エネ、地域の活性化の講演、執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作。再生エネ関係の民間企業へのコンサルティング、自治体のアドバイザー。地域エネルギー会社(地域新電力、自治体新電力含む)の立ち上げ、事業支援。

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