富士経済は2021年9月24日、世界の自動車向け二次電池(駆動用・補機用)市場の調査結果を発表した。この調査では、自動車向けの駆動用二次電池や補機用二次電池の市場の現状を対象に調査・分析し、将来を展望した。また、各エリアにおける政策や自動車市場、EV需要の増加に伴う消費電力量規模もまとめた。
まず、駆動用二次電池市場について、2021年は2020年比54.8%増の4兆8,297億円、2035年には2020年比8.5倍の26兆4,660億円が見込まれている。
駆動用二次電池市場は2020年、環境自動車市場が拡大したことにより、大きく伸長した。
2021年には、前年に新型コロナのため中断していたEV関係のプロジェクトや工場などの設備投資が再開されることで更なる市場拡大が見込まれている。
エリア別に見ていくと、2020年時点で中国と欧州が市場の中心となっており、2035年でもこの市場構造は大きく変わらないが、北米や日本、その他地域でも順調な伸びが予想されている。
伸び幅が特に大きいのは欧州で、2020年比9.4倍の9兆5,516億円。経済成長や主要国におけるガソリン/ディーゼル車の販売規制などを背景に環境自動車の普及が進むと予想されている。
中国は、2020年比8.1倍の9兆8,641億円。2021年に「省エネ・新エネ車技術ロードマップ2.0」を発表し、2035年にHV販売比率100%を目指しているため、HV向けのニッケル水素電池(NiMH)が2025年まで堅調に推移する見込み。
また、EVの普及に伴うリチウムイオン電池(LiB)の拡大も予想されている。
北米は、2020年比8.0倍の3兆9,484億円。欧州や日本に比べて環境自動車の普及が進んでいないものの、2025年に乗用車のストック台数のうち航続距離350マイル以上のEVの普及率を5.5%にするほか、2030年にワシントン州、2035年にカリフォルニア州やマサチューセッツ州で内燃自動車(ICEV)やHV、PHVの販売を禁止にするなどの動きがあり、EV向けのLiBを中心に駆動用二次電池の市場拡大が予想されている。
日本は、2020年比9.3倍の1兆7,496億円。2030年までに東京都が都内で販売される乗用車を、2030年代半ばまでに政府が国内で販売される乗用車を全て環境自動車にする方針を掲げており、2035年に向けてPHVやEV向けのLiBの需要が増加するとみられている。
電池別にみると、LiBの割合が高く、高容量のハイニッケル系や、安価で長寿命なリン酸鉄系(LFP)の採用拡大で成長するという。
次に、補機用二次電池市場は、2021年は2020年比1.4%増の1兆8,184億円、2035年には2020年比9.5%増の1兆9,628億円が見込まれている。
2020年は、新型コロナ感染拡大の影響で新車向けは減少したものの、既存車の更新需要が好調。現在はICEVやアイドリングストップ車(ISSV)向けが市場の大半を占めるものの、今後は車両が減少するため縮小が予想されている。
一方、環境自動車向けは車両販売台数増加により需要が高まるという。
2035年には2020年比9.5%増の1兆9,628億円になると予測されている。
エリア別でみると、中国が最大の需要地で、北米や欧州が続く。この3エリアが長期的にも市場拡大をけん引すると予想されている。
電池別でみると、鉛電池は、今後も堅調な伸びが予想され、LiBは、自動車廃棄時の環境負荷低減を目的としたELV指令を背景に、2020年代後半から欧州で本格的に需要が増加するとみられている。
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