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EVの進化を加速させる5つのドライバーとは:平井陽一朗のテスラに乗って 最終回

2022年02月28日

自動車にこれまでになかった機能が充実していく未来

4.  ビジネスモデルの多様化

車中体験が進化するにつれて、これまでクルマに付帯していた様々な機能が、ユーザー側に移っていくことが考えられます。カーナビを例にとると、今は車に内蔵されているものが多く、その車の活用履歴データを元に各種機能を提供していますが、今後はユーザーがサブスクリプションでナビ機能を契約し、マイカーであろうがカーシェアであろうが、どの車に乗っても、ユーザーログインをして同じナビ機能を呼び出せる、といったイメージです。さらにはユーザーがスマホの利用履歴を車に読み込ませることで、よりパーソナライズされた機能を利用できるかもしれません。いずれはクルマそのものがサブスク化され、車体もサブスク、メンテナンスもサブスク、ナビや付帯機能もユーザーが選ぶ、といった利用方法が広がる可能性もあると見ています。実際に、テスラが運転支援機能「フルセルフドライビング(FSD)」をサブスクリプションで提供し始めたり、マンションディベロッパーが入居者専用のカーシェアサービスを提供するなど、各社がビジネスモデルの多様化に向けて動き始めています。

このように、従来型の「自動車」が広義の「モビリティ」に進化する過程で、ビジネス規模も大きく広がる可能性があり、今後が非常に楽しみです。

5.  ワクワクするデザイン

とはいえ、EVに乗るなら、やはりカッコイイ車を選びたいもの。

EVの費用対効果や環境への貢献は理解できるが、残念ながらデザインが・・・と敬遠されている方も多いのではないでしょうか? しかし、最近のEVはデザイン面でも進化を続けています。国内外のモーターショーを見ると、カッコイイデザインが次々出てきており、ワクワクしますね。

また、カスタマイズできるデザインにも注目しています。人々の価値観が多様化する中、車の外観デザインそのものを個別のニーズに合わせてカスタマイズする、そんな世界観も必要になってくるかもしれません。2022年1月のCESで、BMWが色が変わるクルマを発表しましたが、これもその第一歩かと思います。外観デザインだけでなく、モビリティ手段としてのクルマそのものや、どの機能を使うかの選択も多様化すると思われます。将来的には、カスタマイズされた車のデザインやパーツ等を、NFT(非代替性トークン)を噛ませて個人や企業が所有する、といったような発展もあり得るかもしれません。

「テスラに乗って」の10年先を想像すると

私は5年前に、当時としては珍しかったテスラ「モデルS」に乗って、たくさんの感動と、そして同時に不便も体験しました。そして昨年、買い替えには相当な葛藤があり、特に外観でテスラ以上だと思える車は少なかったのですが、散々迷った挙句にハイブリッドカーの中古に買い替えたのです。

いざ買い替えてみると、やはりハイブリッドカーはとても便利だなと感じます。これまで一度も充電で困ったことはありません。電気モードがあるので、駐車場などでも静かです。燃費もガソリンだけであればリッターで4kmも走らなさそうですが、電気モードと組み合わせれば常時リッター10km以上で走れています。使ってみた実感として、やはり現状はハイブリッドカーがベストな選択なのだろうと思います。

しかし、私が化石燃料を使った車を買うのはこれが最後になるだろうな、とも感じています(そう思って「最後に悔いがないように」と、奮発したワケです…)。

次に買う車は、その時になってみなければ分かりませんが、おそらく完全電気自動車(BEV)になるでしょう。特に注目しているのはソニーのクルマで、2022年1月のCESで、ソニーがEV市場への参入を本格的に検討するために新会社を設立するという発表を聞き、大いに心が躍りました。ソニーと言えば私たち世代にとっては憧れのブランドで、「学生の頃、ソニー製のウォークマンが欲しかった。そんなソニーがまさかクルマを作るなんて!!!」と隔世の感があります。常に新しいことに挑戦し、ワクワクを作ろうとしてくれる、そんな企業を応援したくなるのは私だけではないのではないでしょうか?

このような異業種からの参入を通じて、モビリティ市場がさらに盛り上がり、既存プレイヤーを含めた日本勢が躍進する姿を見るのが本当に楽しみです。

2030年、EV・モビリティ業界はどうなっているのか? 個人的な見解も含めて、さまざまな視点からつづらせていただきました。

これまで、ご愛読ありがとうございました!

 

平井陽一朗氏の連載はこちらから

平井陽一朗
平井陽一朗

BCG Digital Ventures Managing Director & Partner, Head of Asia Pacific & Japan 三菱商事株式会社を経て2000年にBCGに入社。その後、ウォルト・ディズニー・ジャパン、オリコンCOO(最高執行責任者)、ザッパラス社長兼CEO(最高経営責任者)を経て、2012年にBCGに再入社。キャリアを通し、一貫して事業開発に関わっており、特にデジタルを活用した新規事業立ち上げを多く主導。 BCGハイテク・メディア・通信グループ、およびコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。メディア、エンターテインメント、通信業界を中心にアライアンス、成長戦略の策定・実行支援、特にデジタル系の新事業構築などのプロジェクトを手掛けている。 また、BCG Digital Ventures 東京センターの創設をリードし、2016年4月の同センター開設後は、マネージングディレクター&パートナー、およびジャパンヘッドとして、2021年からはアジア・パシフィック地区のヘッドとして、新規事業アイデアの創出、新規事業の出資を含めた立上げなどを幅広く手掛けている。同デジタルベンチャーズ出資先数社の社外取締役を兼務。

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