近年、異常気象が各地で頻発しており、さまざまな自然災害を引き起こしています。異常気象から身を守るために、住まいの対策だけでなく、災害から身を守るための備えについて紹介します。また、増加傾向にある異常気象は、多くの事例が温室効果ガスの増加による温暖化の影響であることを示しています。果たして、異常気象と地球温暖化はどう関係しているのでしょうか。
自然災害に対して個人でできる備えと異常気象を減らすために私たちにできることを紹介します。
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異常気象とは、数十年に1回程度しか起こらない気候現象や、人が一生の間に稀にしか経験しない気候現象のことを言います。これには、短時間に終わる大雨や強風もあれば、数カ月も続く干ばつも異常気象と呼ばれます。
気象庁では、異常気象を30年に1回以下の現象と定義していますが、近年は、この異常気象が各地で頻発しており、さまざまな自然災害を引き起こしています。このため、今日では、一般的に気象が原因で災害が起きるなどの社会的な影響が大きい現象を「異常気象」と呼んでいます。
IPCCでは「極端な気象(気候)現象(Extreme Weather (Climate) Event)」という用語を使用していて、第三次評価報告書(TAR)では、「特定地域における気象現象の確率分布からみて稀な現象」と定義しています。「稀」の定義はまちまちですが、通常、起きる確率が10%以下や起きない確率が90%以上の現象のことです。
異常気象と地球温暖化との関係について、IPPCの第5次評価報告書では、「人間活動が温暖化の支配的な要因であった可能性多能性は極めて高い(可能性95%以上)」と発表しています。わが国の気象庁や世界気象機関(WMO)でも、異常気象について温暖化の影響であるとの見方を示しています。以下に二つの例を挙げます。
気象庁では、2021年8月中旬から下旬に西日本から東日本にかけて降り続いた大雨について、「異常気象」との見解を示しています。この大雨は、西日本に8月1か月間で平年の3.3倍の降水量をもたらし、8月の月降雨量としては1946年の統計開始以降で史上1位。東日本も平年の2.1倍で史上2位です。大雨が続いた理由について、北のオホーツク海高気圧と南の太平洋高気圧との間で、真夏に梅雨後半のような大気の流れが続いたところに、中国大陸から水蒸気の流入が集中する状態が続いたためとしています。地球温暖化の進行に伴う大気中の水蒸気の長期的な増加が降水量を増加させた可能性があると指摘しています。
二つ目の例は、気象庁が世界の異常気象速報に掲載している、北半球のる顕著な高温です。ヨーロッパ東部~ロシア西部、東シベリア、カナダ西部~米国北西部では、2021年6月下旬から顕著な高温が続いていて、 カナダ西部のリットンでは、6月29日に日最高気温49.6℃を記録して、カナダにおける最高気温の記録を更新しました(カナダ気象局)。
ロシアのモスクワでは6月23日に34.8℃、ロシア東部のビリュイスクでは6月22日に36.5℃、米国のオレゴン州ポートランドでは6月28日に46.7℃の日最高気温が観測されました(ロシア水文気象センター、米国海洋大気庁)。これらの顕著な高温の背景には地球温暖化に伴う全球的な気温の上昇傾向も影響したと考えられています。
自然災害はいつ起きるかわかりません。万一の場合に備えて、今住んでいる地域が水害や土砂災害が起きやすい地域かどうかを、市町村が作成しているハザードマップで確認し、避難経路などを考えておきましょう。また、地震への備えとして、家具の転倒防止や非常用持ち出し袋、備蓄を用意しておくことをおすすめします。
地震による犠牲者の多くは、地震発生直後の建物倒壊や家具の転倒によるものです。地震が発生した時、被害を最小限におさえるには、一 人ひとりが冷静かつ適切に行動することが重要です。 地震が発生したときにあわてず行動できるように、いざというときに備えて日頃から家族と話し合っておきましょう。
家具によって、L型金具 ポール式器具(突っ張り棒)ストッパー式(くさび型)、マット式(粘着マット式)などで対策をする。
ドアや避難経路をふさがないように、避難通路や出入り口には転倒、移動する家具類を置かないようにする
災害が発生した場合に、家族が別々の場所にいる場合の互いの安否を確認できるよう、安否確認の方法や集合場所などを事前に話し合っておきましょう。
非常用持ち出し袋(リュックサックなど)を用意し、避難時に最低限必要なものを納めて、玄関の地殻や物置などに置いておく。
▼用意するもの
飲料水、食料品(カップめん、缶詰、ビスケット、チョコレートなど)
貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)
救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
ヘルメット、防災ずきん、マスク、軍手、懐中電灯、携帯ラジオ、予備電池、携帯電話の充電器、衣類、下着、毛布、タオル、など
電気やガス、水道などのライフラインが止まった場合に備えて、普段から飲料水や保存の効く食料などを備蓄しておきましょう。
▼備蓄するもの
飲料水 3日分(1人1日3リットルが目安)
非常食 3日分の食料として、ご飯(アルファ米など)、ビスケット、板チョコ、乾パンなど
トイレットペーパー、ティッシュペーパー・マッチ、ろうそく・カセットコンロ など
市町村がつくるハザードマップには洪水ハザードマップと土砂災害ハザードマップがあります。これは国土交通省及や都道府県が、河川の氾濫や土砂災害から住民の生命を守るために指定した危険な区域について、市町村が洪水ハザードマップや土砂災害ハザードマップを作成しています。
洪水ハザードマップでは、氾濫した場合に浸水が想定される区域を洪水浸水想定区域として指定、土砂災害ハザードマップでは住民の生命・身体に危害が生ずる恐れがあると認められる区域を土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域に指定して、住民の円滑な避難を確保することを求めています。このハザードマップによって、自分が住んでいる地域の危険な場所を確認して、あらかじめ避難方法や避難先を考えておくことが大切になります。
またハザードマップは現在自分が住んでいる地域の危険度を知ることができるだけでなく、これから住もうとする土地を探す場合にも役立てることができます。ハザードマップに指定されていない区域であれば、河川の氾濫や土砂災害など、災害に強い地域であることになり、安全と考えられます。
現在住んでいる地域がハザードマップに指定されている区域である場合、安全な地域に転居する方法もあります。あらかじめ災害に備えるには、まず安全な地域に住むのが一番といえるでしょう。
地震や台風などの災害に強い物件はマンションですが、同じマンションでも1981年改正の新耐震基準をクリアしていることが大事になります。建築基準法では地震に対する建物の強度を示す基準である耐震基準を定めていますが、この耐震基準は1981年に大幅に改正されました。
新耐震基準と旧耐震基準の判断基準は、建築確認申請の受理日で分かります。1981年(昭和56年)6月1日以降の場合、新耐震基準のマンションといえます。新耐震基準では震度6強に耐えられる耐震構造が採用されているので、マンションの居住を検討する場合には、新耐震基準が採用されたマンションを選ぶことが大事です。
地震で家屋が損壊するとか、洪水で住宅が流されることは、今や毎年のように起きています。そんな災害に備えて、火災保険や地震保険を確認しましょう。今加入している保険が、自然災害に対応していないものであれば、対応する保険に加入することをおすすめします。
火災保険には、住宅を取り巻くさまざまなリスクを総合的に補償する住宅総合保険と総合保険とベーシックな補償をする住宅火災保険があります。また、建物と家財の両方を契約することも大事です。高額な貴重品、美術品も保険会社に知らせないと保険金が支払われない場合があります。
地震保険は、単独では契約できないので、火災保険とセットで契約しましょう。現在、地震保険に入っていないが、火災保険に入っているという場合は、火災保険の内容を確認するとともに、地震保険にも加入することをおすすめします。
異常気象を減らすために、私たちにできることは何でしょうか。まず、エネルギー消費と地球温暖化の関係を理解することです。エネルギー消費、とくに化石燃料の使用増大によって二酸化炭素などの温室効果ガスが増え、異常気象が起きていると指摘されています。
電力も自由化され、家庭で使う電力を再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)に切り替えることも可能になっています。電力プランの見直しをはじめ、環境にやさしい、エコな生活へと転換していくことが、今私たちにできることではないでしょうか。
異常気象を減らすために今、私たちにできることの一つ目は、エネルギー消費と地球温暖化の関係性を知ることです。
地球の平均気温が14℃に保たれている理由は、大気中にある二酸化炭素やメタンなどの気体によって暖められているためで、これらの気体を温室効果ガスといいます。ところが、18世紀に始まった産業革命により、エネルギー源として石炭、石油などの化石燃料の使用が急増し、二酸化炭素の濃度は産業革命以前に比べ約40%増加しました。
この点について、IPPCの第5次評価報告書では、「人間活動が温暖化の支配的な要因であった多能性は極めて高い(可能性95%以上)」と発表しています。このことから、2081年~2100年の世界平均気温は1986年~2005年の平均気温に比べ二酸化炭素などの排出を抑えない場合、2.6~4.8°Cになると予測しています。
異常気象を減らすために今私たちにできることの二つ目は、エコな電力に切り替え、温室効果ガスの排出量を抑えることです。つまり、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーに転換していくことです。
現在、わが国では、資源エネルギー庁電力調査統計(2020年度)によれば温室効果ガスを大量に排出する火力発電が全発電電力量の82.6%を占めています。従来は、大手電力会社が各地域で独占販売していたので、私たちは火力発電による電気を購入せざるを得ないという状況でした。
2016年に電力自由化が行われ、大手電力会社だけでなく、さまざまな企業が小売電気事業を開始しました。これら企業はさまざまなプランを販売していて、「再生可能エネルギー100%」というプランもあります。私たちが、このような再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)を選択することで、温室効果ガスの排出量を抑えることができます。
エコな生活は、資源を大切にする、ごみを減らす、二酸化炭素の排出量を減らすなど、環境に配慮した生活をすることをいいます。いくつか具体例をあげてみます。
- 資源を大切にする
木を材料とするわりばしやティッシュペーパーはなるべく使わない
再生紙のトイレットペーパーを使う
ばら売り商品や無包装商品、詰め替え商品など、容器包装の少ないものを選ぶ
使い捨て商品ではなく、長く使える商品を選ぶ
食器等は余分な汚れを拭き取ってから洗うようにし、水を流しっぱなしにしない
- ごみを減らす
使用した衣類、電機器具、陶器などを捨てないでリユースする
食べ物や生活用品などは必要な分だけ買う
買い物にはマイバッグ(エコバッグ)を使い、レジ袋はもらわない
ごみを分別し、廃プラスチックをリサイクルする
冷蔵庫の食材は消費期限内に食べる
お風呂の残り湯を洗濯時に使う
- 二酸化炭素の排出量を減らす
太陽光などの再生可能エネルギーを利用する
給湯器の温度を低く設定する
自動車のアイドリングはやめる
お湯は電気ポットで保温するよりも、必要なときに随時沸かす
温水便座は設定温度を低めにする
冷蔵庫の設定温度は季節によって適切な温度にする
料理時の野菜の下ごしらえは電子レンジで行う
シャワーはこまめにスイッチを切る
出かけるときの電気機器はこまめにスイッチを切る
エアコンの冷房の温度を28℃にする
エアコンの暖房の温度は22℃にする
自動車は急な発進・加速、急ブレーキ、アイドリングを控えたエコドライブにする
移動には、なるべく自転車、交通機関を使う
自動車のエアコンをつけっぱなしにしない
30年に一度と言われていた異常気象が、今や毎年のように起きています。そんな中で、異常気象による災害から自らの命を守るために、あらかじめ準備をして、できる対策を講じておく必要があります。現在の住んでいる地域のハザードマップの確認や避難時のための備え、電気・水道などのライフラインが止まった時のための備蓄などを心掛けておきましょう
地球温暖化がこのまま進めば、今世紀末の異常気象はどうなるか、まったく想像に絶します。そうさせないために今できることから取り組む必要があります。
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