住友電気工業 EV用ワイヤーハーネスと洋上風力用海底ケーブルで脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(17) | EnergyShift

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住友電気工業 EV用ワイヤーハーネスと洋上風力用海底ケーブルで脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(17)

住友電気工業 EV用ワイヤーハーネスと洋上風力用海底ケーブルで脱炭素 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(17)

エナシフTV「脱炭素企業分析」シリーズ、第17回は、自動車用ワイヤハーネスが好調である一方、将来は洋上風力用の海底ケーブルの受注獲得をねらう、住友電気工業を紹介する。

エナシフTV「脱炭素企業分析」シリーズ

半導体不足が痛手で下降傾向 株価と業績

株価は2020年の秋からは上昇基調だったが、2021年6月頃から下降傾向となっている。ピークは2017年11月で、以後はピーク時を超える株価にはなっていない。株価が上昇しそうで上昇していないのが現状だ。2020年度の売上高は2兆9,186億円で、営業利益は1,139億円となっている。

昨年度と比較すると、2019年度の売上高は3兆1,070億円、営業利益は1,272億円だったので、減収減益となっている。

株価からもわかるように、2017年度をピークに業績は下降傾向が続いている。

2020年度の減収の原因として、コロナ危機の影響もあるが、半導体の不足が何より大きな痛手となっている。他には、コンテナ不足による影響も要因だろう。物流は盛んになってきたものの、運搬船のコンテナが少なくなり、物流が滞っている。さらに船舶の運賃値上げなども売上に大きく影響している。

セグメント別の売上を見ていこう。

自動車、自動車関連比率が売上の53%で、売上高が1兆6,020億円、営業利益は482億円となっている。現状では、自動車部門の売上こそが、住友電工を支える柱と言っても過言ではないだろう。

一方、電線も扱う環境エネルギー関連が、売上の5分の1を占める21%で、売上高は6,342億円、営業利益は250億円となっている。

業績はやや下降しているが、環境エネルギー関連は今後の大きな成長が見込める分野なので期待したい。

他のセグメントについても紹介しておく。情報通信比率が売上の8%で売上高は2,246億円、営業利益は243億円の増収増益となっている。エレクロトニクス関連は売上の8%で売上高は2,526億円、営業利益は100億円で、こちらも増益となっている。他に産業素材関連が売上の10%あり、売上高は3,025億円で営業利益67億円の減収減益となっている。

産業素材関連のなかに興味深いものがあるので、そちらは後述する。

中期経営計画(2018年)

現行の中期経営計画は、2018年作成のもので、少し古いが、これによると、2022年度目標では売上高3兆6,000億円、営業利益は2,300億円を見込んでいる。

直近の業績が下降傾向にあるなか、一見すると達成困難な目標を掲げているようにも見える。しかし、事業ポートフォリオでは自動車分野が半分以上をしめる上、エネルギー分野と情報通信分野も保有している。

自動車ということに限れば、CASE(「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリングとサービス)」「Electric(電動化)」の頭文字をつなげたもの)にも対応できるよう、自動車の情報化を推進していくことになる。さらに、再エネ導入を支える送電線や蓄電池の需要増を織り込み、これらの事業の拡大性を見据えて、前述の目標が設定されたのだろう。

一方、脱炭素については、すでに2050年カーボンニュートラルを見据えている。

住友電気工業は送電線からはじまった

住友電気工業(以下、住友電工)の創業は、1897年、住友伸銅場の開設までさかのぼる。会社創立は、1911年の住友電線製造所の開設となる。

1922年に当時世界最長の海底ケーブル敷設に成功、1941年には古河電工とともに、国内初の250kV送電線も成功させた。こうして電線の会社として成熟した技術を、自動車の分野にも応用していき、1949年にはワイヤーハーネスの事業を開始。

ユニークな事業としては、1982年には素材作成にも着手し、1.2カラットの人工ダイヤ製造に成功。現在もダイヤの製造は続いている。

1998年には当時世界最大級の直流送電プロジェクトである橘湾の海底ケーブル敷設に成功。これはJパワーと四国電力が徳島県橘湾に建設した石炭火力発電所の電気を、関西電力エリアに供給するため、徳島県と和歌山県の間にある海底に敷設したものだ。

この事業には住友電工以外に古河電工、フジクラ、日立電線も参加、4社共同での事業となっている。しかし、フジクラと日立電線は後に海底ケーブル部門から撤退している。したがって、海底ケーブルの製造が可能な会社は、現在国内に住友電工と古河電工しか存在しない。

残存する2社が、来たるべき洋上風力の時代に向けて、洋上風力用の海底ケーブルを準備していることは、非常に興味深い。

未来をどう考えるか

モビリティに関しては、ワイヤーハーネスだけにとどまるつもりはないようだ。ゼロエミッションカーが当然となっていき、自動運転の技術が進歩した時代においては、次世代交通ネットワークの技術などが必須になる。モビリティにおけるネットワーク分野などにもビジネスチャンスを見出しているということだ。安心安全な使いやすいモビリティ、脱炭素可能なモビリティが必要とされたとき、住友電工の有する技術が大いに力を発揮すると見込んでいる。

エネルギーでも同様に洋上風力、海底ケーブル、自家消費における太陽光パネルのケーブル、レジリエンスなどの技術を積極的に導入、進化させながらカーボンニュートラルを目指す。脱炭素時代に向けては、自分達が保有する技術を他の分野や他の事業に提供していく事も戦略の1つととらえている。

住友電気工業、注目の製品

注目商品を紹介していこう。

まずはレドックスフロー電池がある。蓄電池といえばリチウムイオン電池だが、住友電工はレドックスフロー電池という全く異なる電池を所有している。リチウムではなくバナジウムイオンなどからなる蓄電池で、劣化が少なく長寿命、火災の危険性も少なく、安全性が高いことなどが特徴だ。電池自体が非常に大型な為、小さな場所には適さない。まさに送配電網の定置用に適した電池で、うまく軌道に乗れば期待できる技術だ。

まとめ

住友電工のワイヤーハーネスは世界トップクラスの性能だという。また、EVでも利用可能な部品でもあり、非常に将来性のある製品だ。EVに留まらず、全社横断的にCASEなどへ多種多様な自分達の技術を発揮できるポジションにいる。すなわち、エネルギー、情報関連などにも住友電工の技術を活用できるということだ。

エネルギー関連では直流ケーブルとレドックスフロー電池だ。これらがどれだけ改良されていくか、どれだけ高性能になっていくかに注目したい。技術は油断するとすぐに陳腐になり、古くなってしまう恐れがあるものだ。先述の当時最大級の海底ケーブルの例一つをとっても、技術革新の手を緩めることなく、様々な技術を成長させていくことが重要だ。

TCFDに対応し、2050カーボンゼロも視野に入れているが、直近では、中期経営計画を、どう見直し、どのように深堀りすることができるかに注目していきたい。

(Text=MASA)

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もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798059020.html