製造時に大量のCO2を排出してしまうセメント。しかも、電力多消費産業とあって、脱炭素が難しい分野のひとつとされている。こうしたセメント産業にあって、国内大手の太平洋セメントは脱炭素の取り組みを加速させ、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標に挑んでいる。
建造物に広く使われるコンクリートは、セメントに砂や水を混ぜてつくられる。このとき、砂や砂利を結びつける接着剤の役割を果たすのがセメントだ。セメントの主成分は石灰石や粘土を含んだ岩石を燃やして得られる「クリンカ」と呼ばれるものだが、このクリンカ製造時に石灰石を大量に使用するため、石灰石中の炭酸カルシウムの脱炭酸によるCO2排出が避けられない。
一般社団法人セメント協会によると、産業部門の約5%がセメント産業から排出されるCO2だといい、「セメント製造はCO2排出がどうしても高くなる宿命にある」という。
しかも、セメント産業は典型的なエネルギー多消費産業だ。脱炭素が難しい分野のひとつとされてきた。
こうしたなか、国内大手の太平洋セメントは2050年までの脱炭素実現を目標に掲げ、取り組みを加速させている。5月13日に公表した中期経営計画において、2023年度までの3年間で200億円を投じると発表した。
革新的なCO2回収利用技術の開発はじめ、省エネ、低CO2セメントの開発などに取り組む。さらに燃料調達からセメント製造、輸送、コンクリート製造、そして、建築物の解体、再利用に至るサプライチェーン全体での脱炭素化を目指している。2030年度までの10年間の投資額は1,000億円を見込む。
建築物の建設は続き、今後もセメント使用量は世界的に拡大する見込みだ。大量のCO2を排出するセメントの脱炭素化を実現することができれば、世界の建設業界を変える可能性すらある。それだけに脱炭素に取り組む太平洋セメントの動向は注目されている。
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