2010年代に発生した大規模災害の被害額は約25兆円 7割の中小企業「自然災害の脅威は増している」 | EnergyShift

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2010年代に発生した大規模災害の被害額は約25兆円 7割の中小企業「自然災害の脅威は増している」

2010年代に発生した大規模災害の被害額は約25兆円 7割の中小企業「自然災害の脅威は増している」

EnergyShift編集部
2021年04月16日

毎年のように発生する大規模な気候災害は、中小企業の経営にどのような影響を及ぼしているのか。日本政策金融公庫総合研究所は4月15日、2010年代に発生した11の大規模災害が中小企業経営にどのような影響を及ぼしたのか、調査結果を発表した。

規模が小さい企業ほど自然災害の備えは十分でない

近年、豪雨や台風などの気象災害が大きな被害をもたらしている。地球温暖化の影響が指摘されるなか、大規模な気象災害の頻度は高まり、毎年のように対応を迫られている。しかし、規模が小さい企業ほど自然災害への備えが十分ではない傾向がある。

日本政策金融公庫総合研究所では、2010年代に発生し気象庁が名称を定めている11の大規模自然災害で被害や悪影響(被害)を受けた企業を対象に「自然災害の経営への影響に関するアンケート」を実施し、自然災害が中小企業経営に及ぼす影響や自然災害への備えの実態などを調査した。

調査実施期間は2020年10月であり、従業員数が299人以下で、創業年が2018年以前の事業(農林漁業を除く)を営む人を対象に自然災害の被害の有無を事前調査し、災害被害を受けたと回答した人に詳細調査を実施した。有効回答数は事前調査が1万521件、詳細調査は1,326件だった。

分析対象の自然災害は、2010年代に発生した次の11の気象災害および地震災害であり、その推計被害額は約25.7兆円にのぼる。

気象災害

2019年東日本台風:推計被害額 約1兆8,800億円
2019年房総半島台風:推計被害額 約970億円
2018年7月西日本豪雨:推計被害額 約1兆2,150億円
2017年7月九州北部豪雨:推計被害額 約1,904億円
2015年9月関東・東北豪雨:推計被害額 約2,940億円
2014年8月丹波市・広島豪雨:推計被害額 約945億円
2012年7月九州北部豪雨:推計被害額 約1,520 億円
2011年7月新潟・福島豪雨:推計被害額 約1,600 億円

地震災害

2018年北海道胆振東部地震:推計被害額 約1,648億円
2016年熊本地震:推計被害額 約2.4〜4.6兆円
2011年東日本大震災:推計被害額 約16兆9,000億円

被害を受けた中小企業は約2割

被害状況だが、「直接被害または間接被害」を受けた企業の割合は、全災害計で21.9%となった。約2割の企業が2010年代に発生した11の大規模自然災害で直接または間接の被害を受けている。

自然災害ごとにみると、東日本大震災の被害割合は14.9%と突出して多く、次いで東日本台風(4.3%)、西日本豪雨(4.1%)、熊本地震(2.3%)となった。

被害状況は、直接被害を受けた企業で最も多かったのが、「事務所・店舗・工場・倉庫など建物が破損・浸水した」であった。また、北海道内で大規模な停電が生じた北海道胆振東部地震によって、6割以上の企業が「事業が中断した」と回答した。

自然災害の備えが進まない理由は負担感

1万521件のうち、「5年前と比べて経営に対する自然災害の脅威が増している」と回答した企業は71.6%にのぼり、気候災害や地震の脅威が中小企業にも及んでいることが浮き彫りとなった。

しかしその一方で、現在の自然災害への備えについては、「備えはできている」「どちらかといえば備えはできている」の回答は合わせて40.5%にとどまっており、防災対応の遅れを示す。

防災対応が進まない最大の理由が負担だ。
「負担は大きい」と「どちらかといえば負担は大きい」との回答は合わせて77.6%にのぼり、従業者規模が大きい企業のほど負担感を訴える企業が多くなっている。

防災対応には補助金などの支援策が必要

日本政策金融公庫総合研究所は、備えの負担を軽減する方法として、融資や補助金・助成金といった支援策の拡充や、被災時の生産設備の賃借や代替供給・代替生産に関する他社との提携の促進などをあげている。

さらに融資における金利優遇や補助金申請の条件にすることで、有効な防災対応が可能になるとした。

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