次世代電池の有力候補として全固体リチウムイオン電池の注目度は日ましに上がってきている。トヨタ自動車も開発を進めており、日産自動車も11月29日の戦略発表の中で全固体電池の将来活用について、言及した。海外勢もフォルクスワーゲン(VW)をはじめ多くの企業が全固体電池を将来搭載することを前提に動いている。
この全固体電池、構造をしめすと次のようになる。
全固体リチウムイオン電池の概略図
出典:産業技術総合研究所
複合正極層/隔離層/複合負極層の3層から成っており、リチウムイオンが正・負極内および隔離層内の固体電解質粒子を介して複合正・負極間を移動することで充放電する仕組みになっている。
全固体リチウムイオン電池は、上の図の吹き出しに示すように、リチウムイオンが粒子接点を介して移動するので、活物質粒子-固体電解質粒子間の接点、固体電解質粒子間の接点形成、これらがエネルギー密度に大きく影響する形となっている。
要は粒子の接点が多ければ多いほど、そこをチャネルにイオンが移動するので、粒子の接点を多く作ることができれば、EV性能を飛躍的に向上させることができるわけだ。
となると、「接点をいっぱい作ったらええやん」という話になるのだが、ここに課題がある。
一般的にいま検討が進んでいる酸化物系固体電解質粒子は硬くて、また、結晶構造が壊れると大幅に特性が低下してしまう。
一方で固体の粒子の接点を多く作るためにはどうしたらいいかというと、ボールミル、簡単にいうと強く粉砕する機械などを用いて金属素粉末や合金粉末をミリング、つまり強撹拌し、メカニカルミリングと呼ばれる粉末に対して超強加工を施す手法などの機械的なエネルギーを利用した粒子間の接触形成の手法が必要になってくる。
ただ、先述したように、いま検討されている酸化物系固体電解質粒子は硬く、結晶構造が壊れると特性が低下することから、このメカニカルミリングなどが利用できないという欠点がある。そのため、十分な反応点およびリチウムイオン伝導経路を確保することが難しい格好となっていた。
例えばこの課題を乗り越えるための一つの手法として、加熱などがある。だが、加熱をするのは効率も悪く、動作環境も選ぶ格好になるので、課題解決には至っていなかった。
以前、解説したトヨタの蓄電池でも、トヨタが全固体電池について、エネルギー密度に課題があるので、まずは段階的に使っていく、という発表をしたことに触れたが、まさにそれはこうした課題によるところだ。
そこで、一つ注目をされているのが、全固体リチウム硫黄電池だ。では、全固体リチウム硫黄電池とはどんなものなのか。解説しよう。
全固体リチウムイオン電池の課題を解消する、全固体リチウム硫黄電池とは・・・次ページ
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