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世界の蓄電池市場をひっくり返す、日本発の全固体リチウム硫黄電池とはなんだ

2021年12月10日

気になる今後の展開とは

産総研は、今後は高変形性酸化物系固体電解質材料の充放電サイクル安定性およびイオン伝導率の改善と、活物質比率を現行の30%から50%に増加できる電極合材の複合化法を検討し、エネルギー密度の向上を図るとしている。理論上はもっといけるはず、というわけだから、その理論値に近づくところまで性能を上げていくということだ。これが実現できれば、現行の液系リチウムイオン電池すら性能で超えていくかもしれない。全固体なのに。

また、今回のフルセル試験の隔離層には硫化物系固体電解質材料(Li3PS4-LiI )を用いているが、これを酸化物系固体電解質材料に置き換えるため、酸化物系固体電解質材料のイオン伝導率改善および薄膜化も検討するとのこと。特に、酸化物系固体電解質材料を用いた隔離層では、その薄膜化が重要となる。

正・負極を組み合わせたフルセル試験構成およびその25℃充放電特性


出典:産業技術総合研究所

今後は、こうした課題で連携できる産業界のパートナーを探し、研究加速することで、全固体リチウム硫黄電池の早期実現を目指したい、というのが産総研の考えだ。

本当に、これは、世界で勝負できる技術だと思う。パートナー企業も早く名乗り出てきてほしい。これを軸に、日本の車産業にこの全固体リチウム硫黄電池を入れていく、そういう流れが起こってもいいのではないか。

もうオールジャパンで行くべきときだ。こうしたところから連携が生まれることを願ってやまない。

今日はこの一言でまとめたいと思う。
『全固体リチウム硫黄電池には夢がある』

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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