インドネシア政府は一時的に石炭の輸出禁止措置を講じていたが、1月12日から段階的に解除する方針だ。ルフット海事・投資担当調整相が1月10日に明らかにした。
インドネシア国内で石炭の世界的な高騰で企業が国内供給より輸出を優先する傾向が強まり、発電用石炭の需給が逼迫して電力危機に陥るのを回避するために1ヶ月間の限定措置として始めた。だが、世界最大の石炭の輸出国であるインドネシアの今回の措置をめぐっては、輸出先である中国やインド、日本などへの影響が懸念されていた。
萩生田光一経済産業相は1月10日、インドネシア政府の閣僚と会談しインドネシアの石炭の輸出を早期に正常化し、再開するよう要請した。
インドネシア政府は日本からの要請に対し、「早期の解決に向けて方向性を出したい」と回答。国営の電力会社への石炭の供給が改善してきたなどとして、1月12日からの段階的な輸出再開に向けて検討を行う方針を示した。
インドネシア政府は国内の電力を安定的に確保するため、石炭事業者に年間生産量の25%を国内の電力会社などに供給する国内優先義務を課しているが、7割近い石炭事業者がこの義務を守らず輸出に回していたという。ルフット氏は国内優先義務を守っている事業者から段階的に輸出を認める意向を示し、固定価格の見直しにも言及した。
経産省によると、2020年の一般炭の輸入量のうちオーストラリアが最も多く、インドネシアはロシアに次いで第3位の輸入先となっている。
石炭は日本国内にも在庫があるため、ただちに逼迫する事態にはならないが、日本の石炭輸入量の1割強がインドネシアであるため、事態が長引けば日本の電力供給にも影響がでる恐れがある。
日本国内においては低気温による需要増加や悪天候による太陽光出力の低下により電力需給の悪化に伴い、東京電力パワーグリッド(PG)が他社に電力融通を要請するなど、この冬の電力需給の見通しは全国的に厳しい。石炭調達や市場価格の安定は日本にとっても重要になっている。
インドネシア政府は輸出再開を最終的に決定する前に、国内向けの石炭の供給とバランスがとれるのか検討する必要があるとしており、事態の長期化を避けられるかどうか、今後の政府の判断が焦点となる。
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