日本ではあまり紹介されない海外のエネルギー業界最新ニュース。EnergyShift編集部が厳選してお送りする。
印BHEL、世界初の鉄道牽引を目的にした太陽光発電所を稼働へ
インドの国営企業バーラト重電機(BHEL)は、インド国有鉄道(Indian Railways)向けに、マディヤ・プラデーシュ州ビナの1.7MWの太陽光発電所の稼働を開始する。これはインドの鉄道牽引システムに直接電力を供給するものだ。太陽光発電が鉄道牽引に使用されるのは世界初であり、太陽光発電史上で画期的な偉業となる。
このプロジェクトはBHELとインド国有鉄道の共同開発で、インド国有鉄道からの情報に基づき、設計から建設、検査やO&Mに至るまでをBHELが担当した。
BHELがインド国有鉄道と共にビナを調査した日からわずか4ヶ月※で、このプロジェクトは完了および稼働される。また、屋外用の単相850kW太陽光インバーターと400V/25kV乾式変圧器の開発が初めて行われたことにも大きな意味がある。
この開発は再生可能エネルギーの利点を、今までにない方法で鉄道分野に結び付ける重要なステップを示す。今回のBHELの成功によって、広大な土地というインド国有鉄道の資産を電力会社の支援なく鉄道牽引グリッドを支える自家用太陽光発電所に変えるという目標と、2030年までに「グリーン化」するというインド国有鉄道のイニシアチブが現実のものとなるだろう。
※新型コロナウイルスの影響でロスした期間を除く
ドイツ、ロシアに共同水素プラントの建設を提案
ロシアとドイツの各企業は、低炭素エネルギー源の共同開発計画の一環として、共同の水素製造プラントを建設する計画を提案した。この提案は両国の関係省庁へと送られた。
独露商工会議所の責任者Matthias Schepp氏は、ドイツとロシアはパリ協定を批准しており、低炭素エネルギー開発のために具体的な行動を起こすべきだと述べた。
ここ数年で水素技術のパイオニアとなったドイツは、現在90億ユーロの追加投資を計画しており、うち20億ユーロが今回のような国際的なパートナーとの協力に割り当てられる。Schepp氏は、「ロシアは「多量の水を貯える原料超大国」として、水素分野協力の理想的なパートナーになるだろう」と述べた。
近年、天然ガスのパイプライン「Nord Stream2」を阻止しようとするアメリカ政府の動きに対する共闘を通じて、エネルギー分野における両国間の関係が強まっている。
ØrstedとTSMCが大規模コーポレートPPAに署名
デンマークの電力会社Ørstedと台湾の半導体メーカーTSMCは、TSMCがØrstedが持つ920MWの洋上風力発電所「大彰化2b&4」の電力全量を引き継ぐ形で、コーポレートPPAに署名した。これは再生可能エネルギー分野における過去最大のPPA契約となる。20年間の定額契約期間は、送電網の整備とØrstedの最終投資決定が行われれば、2025年または2026年の「大彰化2b&4」の商業運転開始とともにスタートとなる。
この契約下では、「大彰化2b&4」には20年間の契約期間中、T-RECs(台湾の再生可能エネルギー証書)を含む電力価格が適用される。これは元々2018年6月に行われた台湾初の洋上風力発電オークションを通じて保証されたFIT価格よりも高い。これがプロジェクトの財務的実行可能性を向上させ、Ørstedの最終決定を後押しする。
彰化県沖の台湾海峡に設置予定である「大彰化2b&4」は、2023年に最終決定がされるとすれば、Ørstedが台湾で手掛ける3つ目の洋上風力発電所となる。
Orsted and TSMC Sign Huge Corporate PPA(RENEWABLE ENERGY MAGAZINE 2020/07/10)
ポルトガルのEV市場シェアが12%に
2020年のポルトガルのEV市場シェアは、他の欧州諸国と同様に順調で、新車販売のうち12%がPHEVであり、2020年6月も同じ割合となった。
世界的に見ても高いEV市場シェア率を誇るポルトガルは、オランダやノルウェーのように特段裕福な国ではない。また、EV市場シェアが急成長したわけでもない。ポルトガルのEV市場がいかにして発展し、将来どうなるのかを把握するため、精査することが重要だ。
2020年1月から6月までのポルトガルのEV売上ランキングを見ると、見慣れないトップランナーとして日産LEAFが目に入る。そして上位常連のテスラ モデル3やルノー ZOEがそれに続く。LEAFはかつて多国のEV市場で1位を獲得したが、ほとんどの国で今日までその地位をキープしていない。
また、2020年6月のランキングは通年のランキングに著しい変化をもたらしそうだ。ボルボXC40が圧倒的である一方、テスラ モデル3は9位にとどまった。また、通年ランキングで10位であったメルセデス・ベンツA250eも、6月には3位と善戦した。
化石燃料企業の価値が世界的に下落 脱炭素しなければ生き残れないのか
オーストラリアの公共政策シンクタンクThe Australia Instituteは、新型コロナウイルスの流行によって、化石燃料企業を中心に構成されるS&P ASX300のエネルギー指数が最も大きな打撃を受けたと発表した。2020年第1四半期、化石燃料企業は市場全体と比べて2倍の価値を失った。コロナが化石燃料株の低迷をさらに悪化させたことに加えて、ロシアとサウジアラビア間で起こった原油価格対立から、石油の供給が急増したことも影響している。
ASX300エネルギー指数は、過去10年間の中で、他のどの部門よりもパフォーマンスが悪かった。
業界および政界の中心人物から、石炭がオーストラリア繁栄の基盤であることがしばしば語られる中、化石燃料企業の業績低迷のニュースは多くの人々にとって非常に驚くべきものだ。
Fossil Fuel Companies Are Losing Value Globally(CleanTechnica 2020/07/15)
(Text:鶴田 さおり)