JFEホールディングス 今度こそ、鉄鋼から脱炭素エンジニアリング会社になれるか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(7) | EnergyShift

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JFEホールディングス 今度こそ、鉄鋼から脱炭素エンジニアリング会社になれるか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(7)

JFEホールディングス 今度こそ、鉄鋼から脱炭素エンジニアリング会社になれるか? -シリーズ・脱炭素企業を分析する(7)

エナシフTVの人気コンテンツとなっている、もとさん、なおさん、やこによる「脱炭素企業分析」シリーズ、特に好評だった企業事例を中心にEnergyShiftではテキストでお届する。第7回は、エンジニアリング部門にも力を入れる製鉄会社、JFEホールディングスである。

株価と業績

2020年から2021年の5月にかけてゆるやかに上昇、全般的に見ると2020年1月以来の価格になったあと、やや下降気味で推移しているが、2015年頃の株価には及ばない。

株価上昇の背景には、世界的な鋼材の需要増と鋼材自体の価格上昇の反映と見られる。

2020年度決算はコロナの影響もあり売上は3兆2,272億円(前年比でマイナス5,000億円)、事業利益はマイナス129億円の赤字決算。

セグメント別の売上は鉄鋼が2兆2,552億円、続いて商社の9,325億円、エンジニアリングの部門で4,857億円。鉄鋼の売上が大きいが、注目すべきはエンジニアリング部門。

2020年度、エンジニアリングの受注高は881億円増。環境、社会インフラ部門が好調であり、ポテンシャルの高さがうかがわれる。

2021年度予想は売上が3兆9,000億円、事業利益2,000億円となっており、黒字に戻していく計画。

沿革

川崎製鉄と日本鋼管(NKK)が合併したのがJFEホールディングス。

川崎製鉄の創業は1878年、川崎正蔵が川崎築地造船所を設立したことから始まる。社名の由来は川崎の地名ではなく設立者から。

1896年、後の川崎重工業となる川崎造船所設立。1950年には製鉄部門を独立させ、川崎製鉄を設立。一方、川崎造船所は現在の川崎重工業として存続している。

一方、日本鋼管は、1912年に設立。

2002年にこの2社が合併してJFEホールディングスとなる。

JFEの意味は、Jが日本、Fは鉄、Eはエンジニアリング。

2003年に子会社をJFEスチール、JFEエンジニアリングなどに再編。さらに2008年には日立造船から株式を取得し、ユニバーサル造船を子会社化。同社はさらにIHIマリンユナイテッドと経営統合し、現在のジャパンマリンユナイテッドとなっている。

2012年にはJFE商社を完全子会社化。製鉄、エンジニアリング、造船、商社の4つの機能がそろうことになる。

経営計画と脱炭素戦略はどうなっているか。

第7次中期経営計画(2021年~2024年)と同時に環境経営ビジョン2050を発表。

中期経営計画では「量から質への変換」などを掲げるが、もっとも重要なものは「デジタル化」と「カーボンニュートラル」。どの会社にも欠かせないカーボンニュートラルだが、CO2を多く排出する製鉄会社にとっては特に経営を左右する最重要課題。

一方、「環境経営ビジョン2050」はどうなっているのかというと、2050年カーボンニュートラル実現を目指す、とともにTCFDの理念を経営戦略に反映していくという。

具体的なカーボンニュートラルに向けた取組みは以下のようになっている。

言うまでもなく、製鉄業にとって、どのように製鉄をカーボンニュートラルにしていくのかが最重要課題。現在、製鉄業会では水素還元製鉄が期待されているが、JFEでは、カーボンリサイクル高炉にも挑戦している。むしろこの技術を軸としてカーボンニュートラル製鉄を推し進めていく方針だ。

カーボンリサイクル高炉のしくみを示したものが、上の図である。排出したCO2を水素と反応させてメタンに変え、再び高炉で還元剤として使用するということだ。

水素製鉄の前に、カーボンリサイクルにこれだけ取り組むのはJFEの特徴でもある。

グループをあげて洋上風力に着手

積極的な脱炭素ソリューションとして期待すべきはエンジニアリング部門。中でもその一つである洋上風力への期待は大きい。

JFEはグループ会社であるJFEスチール、JFEエンジニアリング、JFE商事、そしてジャパンマリンユナイテッドという造船会社もある。グループ全体で洋上風力への体制を作っていけるのは大きな強みだ。

洋上風力の風車に鉄を使うし、基盤部分を作るのはエンジニアリング部門、洋上風力の装置を作るための船の造船技術もある。グループ全体で取り組むことができれば、洋上風力では非常に有望だろう。

一方、大規模ではないがJFEらしく、カーボンニュートラル事業として期待したいのが地域エネルギー事業だ。JFEエンジニアリングは清掃工場というプラントも扱っている。この工場で発電される電気を地元で利用するために。地域新電力を設立し、地域経済の活性化に一役買っている、という事業を全国で展開している。

この図にはないが、最近じゃ島根県で縁結び電力という地域新電力を設立している。社名の由来は、言うまでもなく出雲大社のご利益だ。

今後、新たな事業を展開していくためには、資金が必要となる。2021年7月22日の日本経済新聞朝刊で、JFEの柿木社長は、不採算部門などの事業売却で900億円捻出と語っている。さらに、2025年3月期までに土地の売却等で1,100億円を、捻出。これらを元にJFEは脱炭素していくということだ。

まとめ

洋上風力は全グループ体制で取り組めるので、JFEにとって非常に強みとなる部分。

一方、地域エネルギー事業は地味だが、地域経済活性化のためには大事な事業。

この2つを中心に攻めの脱炭素を進めるということだ。

一方、守りの脱炭素として、製鉄のカーボンニュートラル化だが、カーボンリサイクル製鉄は課題がまだまだ多く、どのようにしてそれを解決していくかには注目したい。

とりあえず、脱炭素のために2,000億円を調達したJFE。この資金をどううまく使っていけるかの手腕が問われている。

(Text:MASA)

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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